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第5章 第1話 『復讐者』

 この学校には噂があった。



 『復讐者(リベンジャー)』と呼ばれる、全てが謎に満ちた存在がいるという噂が。



 なんでもその人物は復讐を請け負い、望む結末を届けてくれるという。だから私はこの江藤高校(えとうこうこう)に入学した。私の復讐を手助けしてもらうために。



 でも入学してから約2ヶ月。6月になっても私が手に入れたのは無数の噂だけ。その人物には辿り着くことができなかった。でもついに見つけた。『復讐者』に繋がる可能性がある人物に。



「話を聞かせてもらいますよ、犬養子犬さん」

「え……ええと……」



 ツインテールのかわいらしい女子、犬養子犬先輩。なんとこの人、本来は3年生なのに留年して2年生のままらしい。そうなった原因はただ一つ。



「『復讐者』に敗れたんですよね!?」

「いや……別にそういうわけじゃ……」



 犬養先輩は困ったように笑っているが、私の目はごまかせない。絶対に『復讐者』の存在を知っている。まずは噂を確かめさせてもらおう。



「『復讐者』。その人物は間違いなくこの学校にいますね?」

「ま……まぁそんな噂になっている人はいるけど……」


「やはり! ではあの10人もの人物を殺害し、薬物を売り捌いていた杜松道彦を捕まえたという話は本当ですか!?」

「そうだね……ほんとだよ」



 本当にいるんだ……! 10年もの間未解決だった事件を解決に導いた、神のような存在が!



「つい1ヶ月前に起きた事件……。学校を1ヶ月間休校に追い込み、上層部を丸ごと入れ替え、3年生の約半数を退学にまで追い込んだあの騒動を巻き起こしたのも!?」

「それについてはくわしくないけど……すごいことしちゃったよね……」

「わぁ……うわぁ……!」



 すごいすごい! じゃあこの噂もほんと!?



「芸能界に太いパイプを持ち、あの杜松巫子と宇佐美卯月と同時に付き合っていたというのも!?」

「そ……そうだね……ほんとだよ……」


「学校の平穏を乱す不良を何人も退学に追い込み、主犯格はそのあまりの恐怖から精神病院に入院することになったというのも本当ですか!?」

「うん……そうだね……」


「ということは自分を裏切った元カノを少年院にぶちこんだのもですよね!?」

「ほんとほんと……はは……」



 や……やばい……すごすぎて逆に怪しくなってきた……。さすがにこれは本当じゃないよね……?



「宇佐美卯月をプロデュースし、襲われていたのを助け、その出世作にもなった『復讐の刃』をヒットさせたのも『復讐者』のおかげって話は……?」

「まぁ間違ってはないよね……」


「誰も立ち入らない山の奥深くで不良を半殺しにしたのは事実ですか……?」

「どうなんだろ……たぶんそうだと思うけど……」


「包丁を持った薬物中毒者と戦ったというのも……?」

「ははは……本当……」


「激しく燃え盛る火の中から傷一つなく生還したというのもですか……!?」

「そうだね……本当だね……」


「凶器を持ち人質をとっていた杜松道彦をその身一つで止めたというのはさすがに嘘ですよね……!?」

「わたしもそれは見てないけど……やりかねないよね……」


「あの1ヶ月休校になった理由が、浮気された女子生徒の復讐に協力したからというのは……」

「事実だと思うなぁ……」



 思わずノートを落としてしまった。そんな……そんなすごい人がいるだなんて……。



「なのになんで誰もその正体を知らないの……?」

「友だちいないからね……」


「何か言いました?」

「ううん、何でもない」



 しまった。すごすぎて呆然としてしまった。そしておそらく犬養先輩は、『復讐者』とコンタクトが取れる。なぜなら彼女は『復讐者』の被害者なのだから。



「お願いします! 『復讐者』と私を会わせてください!」

「それはできないよ……。わたしはもう、彼とは会わないって決めたから」


「それはなぜですか!? 脅されたからですか!? 怖いからですか!?」

「ううん、これはけじめ。わたしが自分で決めたからだよ」


「なら『復讐者』の正体を教えてください!」

「それは……できない。彼に迷惑をかけるわけにはいかないから」


「だったらせめて『復讐者』がどういう人物かだけでもっ!」

「えーとね……。かっこよくて……優しくて……。大好きで大好きでたまらなくて……きゃー!」



 嘘でしょ……!? 『復讐者』に負けたはずなのにこの照れた感じ……どう見ても惚れている! そんな呪いまで残すなんて……なんて人なの……『復讐者』……!



「うわぁっ!?」

「?」



 そんな犬養先輩が突然顔を手で覆った。すぐ隣の自販機で男子生徒がイチゴオレを買っている。まさかこの人が『復讐者』……? まさかね。なんかいかにも普通って感じの冴えない人だし。私が集めた情報と、さっきの犬養先輩の惚気にも合わない。どうせストーカーかなんかでしょ。



「もう行きましたよ」

「そ……そっか……」



 男子がこっちを軽く一瞥してさっさと遠くに行くのを見届け、改めて犬養先輩に向き直る。



「お願いします。私、どうしても復讐したい人がいるんです。だから『復讐者』を見つけ出す必要があるんです!」

「そう言われてもこればっかりはね……。……わたしならその復讐に手伝ってあげることもできるけど……」

「……お気持ちだけ受け取っておきます。これは素人が踏み入っていい領域ではありませんから」



 犬養先輩に頭を下げ、私は捜索を続ける。



「待って! 名前だけ……聞かせて。もしかしたら役に立てることもあるかもしれないから」



 その言葉に振り返り、答える。



「1年A組木矢戸(きやと)こねこ。復讐に生き復讐に死ぬと決めた者です」

ひとまず続編のプロローグを這っておきます。まだ本格開始はしませんが、ここから続編が始まります。それとすぐに史郎くん主役に戻るのでご安心ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一旦は完結したしちゃんとしたレビューをしようと思ったけど、名作の予感しかない新たなプロローグに半端なものなど書けなくなってしまったじゃないか。 これは作者さんに責任を取ってもらい時間を掛けて…
2022/10/08 06:44 退会済み
管理
[良い点] あ、まだ続くんだ。今度はもしかしてもう少しラブコメ寄りかな?
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