第3章 第11話 子供と親
「……巫子?」
その姿を見つけたのは、講堂を出た時だった。そこでは複数の警官に取り押さえられていた子犬と。
「巫子ーーーーーーーーっ!」
腹に包丁が突き刺さり、倒れていた巫子がいた。
「巫子! 巫子っ! あぁっ、あぁぁぁぁ……!」
そしてその巫子の傍らには蛇ノ道さんがいて。倒れている巫子を揺すろうとしているのをまた別の警官に取り押さえられている。
「巫子……!」
俺もふらつきながら巫子に駆け寄ったが、大丈夫……。刺さっている位置は猿原の時の場所よりも、さらに外。脇腹に刃の半分ほどが刺さっている。血もあまり出ていないし……医者じゃない俺でもわかる。おそらく死ぬことはないだろう。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
それでも巫子は荒い息を吐きながら苦しそうにしている。念のため救急車も呼ぶよう卯月に言っておいたからきっともうすぐ来るはずだ。卯月も捕まっているしこれで……。
「あぁっ」
安心しかけたところに巫子の絞り出すような苦悶の声が漏れた。
「よくも……巫子をぉぉおぉぉおぉぉぉおぉぉおぉぉっ!」
警官を振りほどいた蛇ノ道さんが巫子の腹に刺さった包丁を抜き取り、動けない子犬に向かっていったのだ。
「待って!」
包丁を持っている方の右腕に慌てて飛びついたが、怒り狂う父親を止めるには俺では無力過ぎた。
「離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
引きずられかけるが、警官も取り押さえるのに加わってくれたので何とか子犬のところに行くのを阻止することができた。
「ごめんなさいやめてください! 俺も責任とるから! 子犬と一緒に罪を償うからごめんなさいっ!」
もう自分でもわけがわからなかった。何を言っているのか。なぜ謝罪しているのか。あんなに恨んでいた子犬をなぜかばうのか。自分でも何もわからない。それでも子犬が殺されると思うと叫ばずにはいられなかった。だがそれでも止まらない。止まってくれない。
それを止めてくれたのは、巫子だった。
「おと……うさ……ん……」
吹けば消えてしまいそうなか細い声と共に巫子が何かに手を伸ばす。俺も蛇ノ道さんも息をすることすら忘れ、その姿を目に焼き付けることしかできなかった。そしてその手がゆっくりと落ちていく。それが視界に入った途端蛇ノ道さんは俺たちを振り払い、巫子の元へと駆けていく。
「み……こ……」
俺も走り始めたその時、脚から力が完全に抜けた。見えるのは固いコンクリートだけ。そしてその視界も、徐々に闇に呑まれていった。
とりあえず巫子ちゃんと史郎くんは生きています。そして完全に構成を間違えて1話余ってしまいました。とりあえず今日もう1話更新して明日からは最終章に突入します。




