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第3章 第2話 酉の悲鳴

「詰んだーーーー!」



 夏休み明けのホームルームの時間中。断末魔のような悲鳴が教室中に木霊した。



「え!? どうすんのこれ! 絶対無理じゃん! 詰んだじゃん!」



 そう喚いているのはこのクラスの委員長、丹羽鳥乃(にわとりの)。クラス内カーストはそこまで高くないが、10月に行われる文化祭のクラス発表のリーダーも務めている女子生徒だ。そして彼女が発狂している理由は一つ。



「人数! 減りすぎっ!」



 キャンプでの卯月の暴行未遂でうちのクラスの男子生徒3人が退学。そして子犬は不登校になり、卯月も人気が出てしまい今日も学校に来ていない。つまり単純計算5人が減ったことになる。しかもクラスの出し物が演劇ということでその被害は計り知れない。



「ねぇ杜松さん! やっぱヒロインできないわけ!?」

「事務所的にアウトかな。それに文化祭の日、ドラマの公開日と被ってるんだよね。それで急遽生配信することになったから文化祭出れないかも。卯月と一緒だから2人ともね」



 卯月と一緒ということは『復讐の刃』だろう。まだ撮影も終わってないのにそんな予定が決まってるなんてどんなスケジュールしてるんだ。まぁ卯月が急に人気になったから仕方ない部分もあるんだろうが。



「まぁそれなら仕方ないか……。で、猪野くんも怪我しちゃったんだっけ?」

「ああ。左肩が痛くてあんまり役に立たないかも」


「まぁ小道具担当だし初めからあんま期待してないからいいけどさ。しっかりしてよね」

「はいすみません」



 巫子との対応の違いを感じたがそれに腹を立てられるほど自尊心は高くない。適当に流して謝罪する。



「あーもうどうすればいいんだーーーー!」



 結局答えは出ないままホームルームは終了する。そして夏休み明け初日ということで授業はなく、そのまま解散となったが俺は巫子を呼び止め、いつもの階段裏に移動した。



「なーんかクラス大変そうだね。まぁ私ほとんど関係ないけど」



 階段に座った巫子が来る途中で買ったイチゴオレを飲みながら他人事のように言う。最後に巫子に会ったのはキャンプの日。あの日のような戸惑いは今日は見られない。



「史郎も肩大丈夫?」

「ああ半分嘘だからな。面倒な仕事やりたくないだけだよ」


「ははっ、案外やるね。いやーにしても……」

「俺の両親を殺したのはお前か?」



 巫子の分厚い仮面を剥ぐにはこれしかなかった。唐突に油断を突くしかない。それでも俺に見破れるかは賭けだったが……。



「……どうしてそう思ったわけ?」



 巫子は笑顔を崩し、冷ややかな目で俺を見つめてきた。



「史郎の気持ちはわかるけどさ、ちょっと失礼すぎるよ。人殺しだって疑われた人の気持ち、もうちょっと考えた方がいいと思う」



 その指摘はもっともだと思う。でも普段の巫子なら、そんなことは言わないと思う。もっと上手くはぐらかし、ミステリアスに微笑むはずだ。でもそれをしなかった。できなかった。それはつまり……。



「……馬場さんから聞いた。事件当日、俺の家から逃げるのを見たって。どういうことだよ」

「見間違いでしょ。私と君が出会ったのは高校からだよ? 家も歩いて30分くらい離れてるよね。小学生にその距離はちょっとした大冒険だよ。そう、それに小学生だしね。2人の大人を殺すなんて、ありえない」


「……信じていいんだな」

「私と馬場さん、どっちを信用するのって話。なんかめんどくさい彼女みたいだね。私から言えるのは、犯人は私じゃないってことだよ」



 話していく内に巫子の表情に笑みが現れていく。くだらない冗談もいつも通りだ。



「それだけなら私、もう帰るね。これから仕事なんだよ。あーあ、卯月に負けてるよ。私もがんばらないとー」



 紙パックを握りつぶし、巫子は立ち上がる。その背中に、俺は声をかける。



「猿原は捕まった。子犬は理由は知らないけど引きこもってる。これは2人への復讐が済んだと言ってもいいんじゃないか?」



 この言葉はつまり、知っていることを全て話せということ。しかし巫子は。



「犬養さんはまだでしょ。勝手に引きこもっただけなんだから。復讐するなら最後までしっかりやらないとね」



 そう笑い、俺から逃げるように去っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石に巫女が犯人だとは思わないけどあまりにも態度が悪すぎるので擁護できない。とりあえず共犯者にしよう
[一言] 現実世界に近い世界観の作品のNTRざまぁとハーレムって別々だと面白いのに1つに合わさったとたん断罪したくせに主人公も間男に文句言えない行動をし始める作品が多いからこの作品の主人公のハーレムが…
[一言] 今のところ、家族と卯月さんしか信用出来ませんね。
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