表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/61

第2章 第15話 同じ

少しグロ注意です!

「史郎! 馬鹿なことはやめて!」

「ほっとけよ杜松。こいつに人を刺すような度胸があるわけないだろ。女寝取られても殴り返せないような情けない男だぜ? 馬鹿みてぇ」



 巫子が叫び、猿原が笑う。まぁそう思うのはわかる。俺だって自分で自分を信じられない。たぶん無意識的に、俺は右手に握ったサバイバルナイフを。



「しろ……!?」



 左肩に突き刺していた。



「馬鹿! 何やってんの!?」



 巫子が近づいてくるが、俺は猿原から視線を逸らせない。呆然と恐怖が入り混じった猿原を見ていると、痛いのか悲しいのか。涙が溢れてきた。



「史郎……早く病院に……!」

「あぁー……いてぇ……」



 そんなに深く刺していない。全然左肩だって動く。それでも痛い。泣き叫びたいくらいに、痛い。



「母さんたちも……こんなに痛かったのかなぁ……」



 そして思うことはそれだけだった。



「もっと痛かったんだよなぁ……。楽に……死ねてたらいいなぁ……」



 ほとんど記憶にない母さんと父さんに思いを馳せながら、俺はただ何の思考もなく言葉を吐く。



「猿原にいつものようにいじめられ、度を超えた猿原はナイフで俺の肩を刺してきた。命の危機を感じ揉み合っている内に、刺し殺してしまった。何か問題あるか? 巫子」



 巫子の返事を聞くこともせず、猿原へと一歩前に進む。それに連動するかのように、猿原は一歩後ろに下がった。



「おい……冷静になれよ。人を殺したってなったらお前の姉ちゃんは悲しむぞ? 妹は進学もできなくなるかもしれない」

「だから言ってんだろ。これは事故だって」


「馬鹿野郎! 警察舐めんなよ!? そんなのすぐばれるに決まってんだろっ!」

「大丈夫だよ。街中の殺人だってまだ犯人見つかってないんだから」


「わ、悪かったよ! 謝る! さっきのは冗談だ! お前の家族に何かするつもりはねぇよ!」

「信用できると思うか? できないに決まってんだろ。だったらお前を殺した方が安心できる」


「し……死ねぇぇぇぇっ!」

「あ」



 言葉とは裏腹に逃げ出す猿原。だが足の速さは俺の方が上だとわかっている。それによほど焦っているのか根っこに引っかかり、転んで走ってを繰り返している。



「逃げんのか? 普段偉そうにいじめてるくせに」



 歩いて追いかけるが、返事は返ってこない。だが歩いている俺の方が速いようで、それでも距離はだんだん詰まってくる。



「もっと早くこうしてればよかったなぁ……。そうすれば子犬と……」

「史郎っ!」



 後ろから誰かに羽交い絞めにされた。と言っても後ろにいるのは巫子だけなんだが。



「確かに殺したところで犯人にはならないかもしれないっ! でも君は……人を、殺すんだよ!? 殺人! 君の両親を殺した人と同じになるの! だから落ち着いてっ!」



 落ち着いて、か。落ち着いてると思うんだけどな……。冷静に考えて、こいつはもう殺すしかないだろ。そうしないと安心して暮らせないんだけどな……。



「うあああああっ!」



 巫子を傷つけないようにどう振りほどこうかと考えていると、俺が動けないからか猿原が悲鳴のような声を上げ突進してきた。



「馬鹿だろ、お前」

「がっ」



 自由な右脚を突き出すと、それに当たった猿原が後ろに吹き飛んだ。



「あああっ! ああああああっ!」



 倒れた猿原がまた叫びながら立ち上がる。その時だった。



「……ぅえ?」



 小さな疑問のような声がしたかと思うと、目の前から猿原が消えた。



「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



 そんな悲鳴が下へ下へと落ちていき、どんどん遠ざかっていく。そして次の瞬間、その悲鳴が掻き消えた。



「う……そでしょ……?」



 後ろの巫子が弱々しくそう口にし、ぺたんとへたり込んだ。俺を抑える手がなくなったのでさっき猿原がいた位置に行き、下を覗き込む。



「あー……大丈夫だよ巫子。まだ生きてる」



 俺は緩やかな坂を滑り、猿原のところまで降りる。



「ぁ……ぁぁ……」



 すぐ傍まで行くと、ようやく猿原の声が聞こえてきた。さっきまで力強く叫んでいたのに、たった数秒でこうなるんだな。



「た……すけて……」



 そう弱々しく聞こえた猿原は一見普通の姿に見える。でもその背中には、太い木の枝が突き刺さっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、少なくともこれから生き延びても幸せにする人間よりも不幸にする人間の方が多そうだからなぁ…
[一言] nice kick☆ まあ死なないと反省できないレベルの馬鹿だから良かったんじゃないかな?事故だしな 偶然にも証人の巫子もいるしな笑 果たしてこれでも巫子は今後も主人公に協力してくれるのかっ…
[良い点] やっとそれっぽくなってきた、イイネ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ