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第6話 確定

過去転生ガチャ、こちらで確定です。次回より幕末に転生します!

 渾天儀(こんてんぎ) は再び回転を始め、惑星の一つを空中へと飛ばす。前回は金色に輝いていた惑星が、今回は鉛色の冷たい色を纏っている。


「あれ、さっきはピカーっと光ってて、もっと華やかだったような…」


 そのまま特に演出らしいものもなく、鉛色の惑星の中からカードが出現した。

 カードは前回と同様、赤地であるが図柄もなく、簡素にRという文字だけがひっそりと浮かび上がる。


「あああ!やばい!これはまずった!」


 誰に向かってでもなく一人叫ぶおれ。普段、家でゲームをしているときも恐らくこんな感じなんだろうな。


 カードはくるっと表を向く。

 すると先程の陸奥陽之助とは違って写真ではなく、写実的な絵が出てきた。

 ただその絵の男はちょっと不気味な表情を浮かべ、刀を左手に持ち、片膝を立てている。


「ん?これは誰だ?見たこともない気が…」


 カードには〈世良修蔵(せらしゅうぞう)〉とある。その名前を見ても一瞬ピンとは来なかった。

 カードのフレーバーテキストには「奥州皆敵!」とあり、プロフィールには"長州藩士。傍若無人な振る舞いで仙台藩士を嘲り、新政府軍と奥羽越列藩同盟の開戦のきっかけを作った"と記載されている。


 これは功績と言えるのだろうか…。そういえばこの世良という人物はわかりやすい敵役として幕末が題材のドラマで登場したのを見たことがあった。


「Rとなる人物の範囲が広過ぎじゃない⁈」


 もしかして最初の陸奥陽之助は当たり中の当たり、大勝利だったのでは…。

 それに陸奥陽之助の奥様は現代にも通じる美貌で、"昔の美しい日本人女性"みたいな特集で必ず取り上げられる女性だったのを思い出す。転生先で会えるかどうかは知らないが…。


「どうかな?これで確定するかい?」


 引き直しボタンの吹き出しはあと1回となっている。


「いやいやいや!ごめん!引き直させて!次こそSSR、いや、せめてSRを引いてみせる!」


 おれは"レアリティはSSR"、"坂本龍馬と近しい人物"などの当初のガチャ目標を即座に下方修正した。つい射幸心を煽られてしまっていたが、おれは本来分不相応な高望みをせず生きてきたのだ。


「やってやるぞ…」


 目を瞑り、祈るように引き直しボタンを押す。画面の渾天儀(こんてんぎ) は三度目の回転を始めた。


 しかしその瞬間、部屋は大きく揺れ始めた。


「わ、しまった!予想よりも早い!!早くガチャの結果を確認して過去へと転生してッ!」


 この"魂の座"にも地震ってあるんだなぁ、くらいに思っただけのおれとは違い、ラーズくんは動揺し、おれを急かす。


 だが肝心の最後のガチャといえば今度も簡素そのもので、演出はない。


「うそうそ!なんでだよ、またかよ!くそッ!」


 鉛色の冷え冷えたした惑星からカードが吐き出された。すると今までの赤地であったカードが今回は白地である。


「なんで、なんで!SRすら出ないのかよ!!」


 おれは全力で自分のくじ運の無さを嘆いた。


「うわわあああああ!」


 部屋の揺れは一層激しくなってラーズくんの悲鳴がおれの嘆きとシンクロするように上がった。ここにきておれもこの地震が恐ろしくなり、何度も画面をタップするが、通常のゲームのように演出スキップはなくてもどかしい。


「早くカードは買った向けよお!どうせRなんだからよおー」


 そして登場したカードには危惧していた通りRの文字が現れた。


「うわあああああああああ!やっぱりーーーー!」


 Rのカードはゆっくりと回転をして表を向く。そこにはこれまであった写真も肖像画もなく、ただ真っ白であった。

 だがカード下部の名前欄には"新見錦"とある。


新見錦(しんみきん)⁈え、誰だっけ?読み方が…、いや、この名前、確か…」


 そうだ!新選組だ!近藤勇が新選組を掌握するため、芹沢鴨と一緒に排除した新選組の局長のうちの一人、新見錦(にいみにしき)だ!


 新選組を題材にした創作作品で比較的頻繁に登場するが、その存在は特に目立つことはなく、芹沢鴨誅戮の前哨戦としてあっさりフェードアウトする人物、というのがおれの新見錦のイメージだった。


 だが、そうなると合点がいかない。新見錦は壬生浪士組が新選組と名称を改める前後に近藤勇たちによって粛清されていたはず。そうなると転移先の1867年には生存していないのではないか⁈


「引き直しは出来ない、その人物で確定だ!僕からの注文(オーダー)は繰り返さなくていいよね。そのガチャの人物となり、使命を必ず果たしてくれ!」


「待って、ラーズくん!この人、坂本龍馬よりも早くに死んで…」


 目の前の景色がぐにゃりと歪み、耳にはテレビ放送が休止しているときに流れるような甲高い、キーンという音が鳴り響き、そのまま意識が遠のいていった。

面白い、続きが気になる、応援したいなどと感じてくださいましたら、是非画面下の「☆☆☆☆☆」による評価をお願いいたします。

【毎日更新】しますのでブックマークも頂けると大変励みになります。


厳しいご意見や率直な星評価でも構いません。少しでも本編に反映し、皆様に楽しんでいただけるような内容にしてまいります。よろしくお願いいたします。

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