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第九話 沖田兄弟の再会

 宇野蔵之介が案内した山道は本当に近道だったようでおれは沖田さんと共に何とか日が暮れる前の本庄宿へと辿り着いた。


 古い時代劇のイメージで幕末の宿場町は寂れている印象があったが、旅籠屋に酒屋、和菓子や小物などを売る小売店などが軒を連ねていた。


「結構な賑いですね」


「武蔵最大の宿場と言われていますからね。旅籠屋だけで70軒ほどあるとか。ただ黒船以前はもっと賑わっていたようですよ」


「そうなんですねぇ…」


 先程の鴻巣宿では混乱状態だったし、早朝でもあったので江戸時代の日常を垣間見た感じはしなかった。しかし、こうして市井の人々が慌ただしく往来するに佇むと時代劇のワンシーンに入り混んだ気持ちになる。


 …いやいや、感慨に耽っている場合ではない。まずは近藤勇を見つけなければ。おれは当然近藤勇の顔は有名なモノクロ写真でしか知らない。


「あ、義兄さん!なんでここに⁈」


 若干所在なく立っていると後ろから声がした。振り向くとそこには一人の青年が驚きの表情をしていた。


「おお!総司!やはりお前もここにいたか。ちゃんと若先生の役には立てているのか?」


「どうでしょうかね。こういうのは山南さんくらいしか我々の中で得意な人はいないと思いますがね」


 沖田総司。その知名度にも関わらず写真は残されていない。実は写真自体は存在していて、かつて沖田家の棚の引き出しに写真があるなどと言われていたがそれも見つかっていない。


 その容姿は新選組の当時を知る人や、その子孫が家中に残された話として伝えるところによると猫背で背が高く、色黒の肌、痩せ型、そしてヒラメ顔。

 ヒラメ顔というのはどういう顔を言うのだろうか。凹凸がなく、のっぺりしていて、目と目が離れた魚顔みたいなものの形容しているのだろうか。

 夭折の美青年として描かれることが多かった沖田総司だが、近年の新選組を題材にした創作ではこの"ヒラメ顔"をある意味でネタにしたような容姿とされることも多い。


 だが実際目の当たりにした沖田総司といえば背が高く、猫背というところは合っていた。しかし新見錦の顔中に刻まれている切り傷などは顔にも身体にも見当たらず、絹のような白い肌、そして艶やかな総髪をした中性な美貌の青年であった。


「どうしたんです?なぜここに?そうだ、せっかくだし、手が空いてるなら宿の手配を手伝ってくださいよ」


「「そうだ!私たちはお前とおしゃべりをしにきたのではない。若先生のお手伝いにきたのだ。お前では若先生も心細いであろう」


「あれ?一緒にいるお方は?」


「そして感謝するんだな、これはこの新見さんの発案だ」


「おお!それはありがたい。新見さん、貴方がそんな殊勝な心がけをしてくれる人だなんて想像もしてなかったな!」


 軽口を叩く沖田総司。おしゃべりで愛嬌があったという証言も残されているがまさにそんな感じだった。


「これ、総司!新見さんになんてことを!それにここまで来るのに大変な目にもあったんだぞ!」


「まぁまぁ、それは沖田さん、内密に。お、沖田総司さん…、それで、せ、拙者は何をすればいいでござるかな」


 これまで会話をしてきた人たちももちろん尊敬すべき日本の先人たちである。だが単純な知名度から言うと沖田総司は抜きん出ている。そのためおれは緊張して声がうわずった。


「新見先生、ありがとうございます。それではお言葉に甘えて遠慮なくお力お借りいたします。あと100人分ほどの宿を確保しないといけないのです。ぜひご協力をお願いいたします」


「は、はい!わかりましたでござる」


 おれは思い出したように昔の漫画のような武士口調を繰り返す。

 そんなおれに対して沖田総司は不思議そうな表情で見つめる。


「んー。えらく素直ですねぇ。新見先生、何か企んでは居ませんか?」


「これ、総司!」


 林太郎さんは沖田総司を叱ったがおれの挙動不審さはこの転生してからの数時間で今が最悪であろう。沖田総司の違和感はしょうがあるまい。

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