友情
友情は、ワイングラスに注がれた泥水のように、素晴らしいものである。
桐原観念斎 (1702~1822)より
友情
「お前『スカイツリーが折れた』というツイートしてたけど全然折れてないじゃん嘘つくなよタコが」と、謂れのない誹謗中傷メッセージをアウトルックのメールボックスで受け取ったキプロス共和国出身の日系アメリカ人、李好好は、杏仁豆腐のように脆いメンタルを持っているがゆえに酷く心を痛め、「オーマイガー、ハンバーガー、スーパーカー...はカウンタックがいい」と涙目になって嘆く日々を送るようになった。最近になると、本気で気を病み、存在しない友達の存在しない誕生日を祝福して、「おめでとうおめでとうハッピーチューズデートゥーユー」と朗らかに歌いながら、ティッシュ箱から一枚ずつティッシュを引き抜いて、宛ら花咲か爺さんのごとくにばら撒くようになった。竹馬の友であるロベスピエールは彼の様子を見かねて、なんとかして元気を出させようとあれこれ画策したが、何も思いつかなかった。なぜ思いつかなかったについて考えてみたが、やはり何も思いつかなかった。なぜ思いつかなかったについて考えても思いつかなかったかについても考えてみたが、また何も思いつかなかった。どう足掻いても、何も思いつかなかったのである。悩むロベスピエールは、何となく靴下を二重に履くと、忽如、ある素晴らしいアイデアを思い浮かんだ。「そうだ!小学生だった頃になぜか蒐集していたあのとんでもない量の消しカスを材料にした土偶とかを作って李好好にプレゼントすれば、憔悴しきった李好好も発情期の犬のように元気を取り戻し、スキップ、時々誤ってホップ・ステップ・ジャンプして喜ぶに違いない。ロベスピエールは満足のゆくアイデアの出現に思わず綻びた。だが待て、それよりももっといい案があるかもしれない。まだ早まるなロベスピエール、自分の人並み外れのイマジネーションを信じるんだ。ロベスピエールは自身を鼓舞した直後、庭の外に飛び出して、そこで咲いている紫陽花の花を糸切りバサミで切り取り、パクパクと食べてみた。紫陽花が食道を通り、ちょうど胃袋の中に収まったその時、古傷の痛みがなくなったが同時に、もう一つの素晴らしいアイデアが浮かんだのだ。そういえば、あと二日で李好好の誕生日ではないか!なぜ忘れていたのだ友の誕生日を。ロベスピエールは激しく自嘲した。なら、誕生日プレゼントを考えねば。ロベスピエールは次に、タバスコを脇にかけて、豆腐(しかも絹)を自分の顔にぶつけて、脳漿を絞った。
よし!わかったぞ!
紫電奔驰ったかの如くに閃いたロベスピエールは、早速プレゼントを準備した。
「よしっ、このスコッティのティッシュを彼の家に持っていき、花咲か爺さんのようにばら撒きながら『おめでとうおめでとう!ハッピーパノプティコン」と絶叫すれば、李好好も跳ねるほど歓喜するのではなかろうか!よし、いざ彼の家へ!」
そしてロベスピエールは李好好の家に足を運んだ、高笑いしながら。
......って、まだ誕生日になってないがな!(ツッコミ)