私が愛する街、私が愛する牧師!
みんながこの突飛な文章を読んでどう思うか、それを考えるだけで
ぼくはにやけちゃうのだよ!
好評不評は全く考えてないです()
ネオンが妖しく光りゆらめく繁華街。私は、裸にバーガンディー色の褌を締めてそこに出かけた。
なかなかいい街だ。ご覧。前方にある商社ビルとか結構面妖であることで有名だ。なんと、そのビルの三階の窓のあちらこちらにヴァスコ・ダ・ガマの肖像画(A4サイズ)が張られているんだ。聞くところによれば、商社の社長は大航海時代にすこぶる興味があるらしくてね、ヴァスコ・ダ・ガマのことが特に大好きでついつい窓に張りつけて、業務中いつでも見られるようにしたのだとか。かくいう私も実は大航海時代に造詣が深い。だけど私だったらヴァスコ・ダ・ガマじゃなくて、エドワード・ニューゲートの方が好きだな。なぜかって?うむ、言わないでおこう。なんてことのない理由だけれど......読者諸君の想像に委ねよう。
ビルの屋上には五・六羽のコンドルが自由に飛び回っている。すると、そこで神酒をがぶ飲みしている不惑の老人が、手頃な石礫を幾つか拾い上げて、コンドルにぶつけたのだ。その場面は結構笑いを誘うものであり、腹がよじれそうになった私は、即座に頭の中に小学生の頃にやった小難しい漸化式の解法を思い浮かべて、笑いを我慢しようとしたが、やはり我慢できなくて、疳高い笑声を街中に響かせた。街ゆく人の悉くの鼓膜は、その笑声が原因で突き破り、使いものにならなくなった。故に私は傷害罪に問われた。私は当然不服だった。無実を必死に訴えた。だけど徒労だった。私を逮捕した警察官も鼓膜が破れていたのだ。だから私の訴えなど露も聞こえない。何を言っているかはわからないが、人々の聴力を無情に奪ったやつであるというのは確かであるからと、とりあえず私を連行しようとして、警察官は私の腕を乱暴に掴んだ。急に掴んできたものだから、私は反射的に「あいんしゅっ!」と叫び声をあげた。もちろん、ドイツ語で”1”という意味のeinsであるわけがない。自然に出てきた言葉だ。その言葉がなんの意味を為すのか、発した本人である私ですらも見当がつかない。
警察官は、顰めっ面で、「保健所...じゃない、署にきてもらうぞ!」と強く怒鳴った。
私は激怒した。必ず、この邪智暴虐の邏卒(警察官)を除かなければならぬと決意した。私には法律がわからぬ。私は、矢崎克彦の友人である。矢崎をからかい、クラムボンと遊んで暮らしてきた。けれども不条理に対しては、人一倍敏感であった。頭に血が上った私は、その警察官を巴投げしたのち、横隔膜にチョップを食らわした。怯んだ警察官の隙をつき、私はプロ顔負けのスピードで、その場から走り去った。除かなければならぬと豪語したくせに、私はそいつに引導を渡さなかった。私はチキンだったのだ。殺したらまずい!殺したら私は禁錮三時間の刑に処されるのはほぼ確実!それだけは避けなければ!三時間など苦痛の限りだ!そう思って私は、そいつを殺すことを諦めて、逃げたのだ。
逃げるのに疲れた私は、街の外の荒涼の砂漠に立ち止まった。吐き出される息が宙で舞踊している。心臓は鐘打つようにばくばくと動いていて落ち着きがなかった。
そんな私の前に、一人の牧師が立ちはだかった。彼は流暢なヒッタイト語を話していて、右手には柘榴柄の女性用の下着、左手にはワカメ柄の男性用の下着。なにやらこの牧師は、徳はなさそうだが、欲は誰よりも深いバイセクシュアルの御仁であるようだ。
How many chopsticks do you have?彼はなぜか、突然英語でこう尋ねてきた。
無視はし辛い。私は殊勝に答えを述べてやった。
f......five?
その牧師は答えに概ね満足したのか、私を目一杯抱擁した。
私の襟は彼の温かい涙で濡れた。
Oh,thanks......My honey......
私は、何も言わず、ただ彼の背中を優しく撫でてあげた。
めでたしめでたし。
おわり!