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第42話 宣伝の効果


私は、全身からサーッと血の気が引いていくのを感じた。


「そ、そんな! 急に言われても何の準備も出来てません!」


まずは心の準備が必要だよ!


「分かってるよ、だから焦ってるんだろ!」


「なんで急に遊びに来たいって言いだしたんですか? 領地経営が落ち着いたら、私たちの方から招待するって話は!?」


あの話どうなったの!?

まったくもって何一つ落ち着いてないよ?


「宣伝用の映画を……」


「え、映画?」


そういえば、宣伝用VTRを作ったっていう話は聞いたけど。

この短い間になんで国王陛下の目に留まることになったの!?


「実験的に魔法学院で上映してもらうつもりが……、一度上映したら噂が噂を呼んで、王宮でも上映することになったらしい。それを父上たちも見たそうだ。ーーあれは見る者が興味を持つようにと考えて作ったものだからな……。ラーゴ湖や丘の上の牧場、新しい街や劇場、それにエスタンゴロ砦と魔の森なんかを撮影して、パヴァロとマリアにセリフと歌を担当してもらったんだよな」


はっ!?


パヴァロ君とマリアに?

ナレーションとBGMを担当してもらったですと!?


私の出番は……!


「クリス様、ひどい! 私も出たかったのに!」


「お前はビビの子守りで手一杯だったから、時間的に無理だと思ったんだよ。そんなことより、今は父上と母上が来るってことの方が大事だろ」


そうでした!


クリス様の実の両親とはいえ、この国の国王陛下と王妃様だからね!?

そんじょそこらの義理親が訪ねてくる程度の緊張感とは訳が違うよ!


「どどどど、どうしましょうか、クリス様……! いまからお断りするわけには……?」


「お前な。国王が来るって言ってるんだから、こっちの都合より向こうの意向の方が優先されるって分かれよ」


ですよね……!


分かってたけど、一応聞いてみたんです……。

やっぱりどうしても避けられないか。


せめてビビの父親の行方が分かってから来てくれれば、私たちも出迎え準備に集中できたのにー!


「と、とりあえず、お泊りいただくのは私たちと同型のコテージで大丈夫でしょうか?」


「ああ。あのコテージは綺麗だし設備も充実しているし、泊まるところはあれで問題ないよ。だけど、騎士や侍女も何人か同行するだろうから、1つじゃ足りないかもしれないな。何人で来るのか聞いてみるか」


ハヤメールで細かい確認作業をしていくとなると、ちょっとやり取りに時間がかかりそうだな。


実は、国王陛下や王妃様には通信機の存在をあえて知らせていないのだ。

やんごとなき方々から直で連絡が来るなんて、連絡を受ける側の人間の心労が凄いことになるからね!


「コテージを出す場所は小島にしますか? それとも劇場の近くに?」


観光目的なら新しい街の方が便利そうだけど。


「小島の方が安全を確保できるから、小島に泊まってもらおう」


それもそうか。

防犯面のことも考えないといけないもんね。


お供の騎士たちも、小島の方が警備が楽だろう。


「わかりました。泊まるところはいいとして、食事はどうしましょう? 王都一の料理店から来た、ナントカさんに作ってもらいますか?」


誰だったっけ?

アイスクリーム作りたいって言ってた人。


「カルロークな。そうだなあ、あの店はもう営業が始まってるから、料理長を呼びつけるのは無理だと思うぞ。うーん……、うちの料理人も腕はいいが、1人じゃ手が足りないよな」


そうそう、カルロークって名前だった。


え、新しい料理店ってもう開店してたの?

いつの間に。


私がビビのことでてんてこ舞いしている間に、いろんなことが一気に動き出した気がします……。


「王宮から料理人も一緒に来てもらえるように頼んでみますか?」


「そうするか。おそらく、バルーン一つには乗り切れないな。俺とアルフォンソで迎えに行くとしよう」


「なんならお兄様に手伝ってもらっても」


何かあったら連絡しろって言ってたし。

風魔法使いが2人いれば、2つに分乗しても加速することが出来る。


「いや。うちの騎士たちも操縦は出来るし、送迎くらいは自分たちでやらないと。それに、あまり妻の実家に頼りっぱなしと思われたくないしな」


ふうん?

そういうものなんですか?


息子としては、両親に自立したところをみせたいということなのかな?





そうして私たちは、国王陛下への返事を書くために慌ただしく孤児院を後にした。

ラヴィエータがビビを預かると申し出てくれたので、お言葉に甘えて夕方まで預かってもらっている。


家が静かなうちにいろいろ決めておかないと!


「カーラ、ノーラ!」


私はコテージの扉を開けるなり二人を呼んだ。


「まあ、どうかなさいましたか?」


私の慌てように目を丸くした二人が出迎えてくれる。


「どうしよう! 国王陛下と王妃様がうちに遊びにいらっしゃるって言うのよ! お泊りいただく屋敷もまだ出来上がっていないのに!」


「えッ!」

「まあッ!」


二人は予想もしていなかった事態に、揃って驚愕の表情を浮かべている。

……うん、やっぱり親子なだけあって驚いた顔も似てるな。


「……なんだか周りの慌てようを見てたら、逆に落ち着いて来たな。俺は父上に手紙を書くから、お前は二人と打ち合わせをしていてくれ。それから、父上はエスタンゴロ砦や魔の森も見たいと言い出すに決まってるから、今のうちにお前の実家にも連絡しておく方がいいだろう」


え、クリス様、打ち合わせって具体的に何をすればいいんですかっ?

よく分からないけど、クリス様はさっさと書斎に行ってしまったので質問するタイミングを失ってしまった。


「ええと、ええと……」


「奥様、まずはチェーザレ様に連絡してご相談なさっては?」


それだ!

ノーラ、さすが亀の甲より年の劫だよ!


「そうするわ! ーーおとうさまー、おとうさまー! こちらチェリーナ隊員です、どーぞー! おとーさまー!」


『ーーああ、チェリーナか。今日はどうした?』


「お父様! たいへんなんですー!」


『またかよ。何があったか、とにかく話してみろ』


ハア……ってため息吐かないでください!

ため息吐きたいのは私の方です!


「国王陛下と王妃様がうちに遊びに来るってーーー! どうしたらいいんですかー!」


『は!? チェリーナ、ちょっと落ち着いてみろ? 何がどうしたって?』


ううっ……、ちょっと深呼吸して心を落ち着かせよう……。


「スー……、ハー……。お父様、国王陛下と王妃様がクラリッサ姫を連れてアメティースタ公爵領へいらっしゃるそうなんです。先ほどクリス様に来訪を知らせるお手紙が届きました」


分かってもらえましたか?


『ななな! 本当に国王陛下と王妃様がおいでになるのか! こんな辺境の地に! なんということだ!』


ええ、本当に。

ガチの辺境伯領よりもさらに辺境、いや秘境と言った方がいいくらいのアメティースタ公爵領に……、王族をお迎えすることになるそうですよ……。


私、思うんだけどさ。


宣伝用VTRって、誇大広告してないでしょうね!?

たとえば、山を掘ると金が出るとか、ラーゴ湖は若返りの湖だとかさ。


お客さんを呼び込もうとするあまり、あることない事言ってたりして……。

じゃなかったら、なんでそんなに興味持つのよ?


しょっぱなからクレーム処理とか、絶対嫌だからね!?





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