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第14話 人材確保の取り組み


「その浜辺の周辺にお店をたくさん出す計画なのよ。お店が出来たらぜひ寄ってみてちょうだいね」


私は早速宣伝してみた。

まだ一店も出店できてないけど、もうすぐだから!


「あら、それは楽しみです」


「そうだわ。ノーラの知り合いで、仕事をしたいと言う人がいたら紹介してくれないかしら? どこもかしこも人手不足で困っているのよ」


「私が働きに出られたらいいんですけどねえ……」


ノーラはそう言って、子ども達を見下ろした。

ほんと、大ベテランのノーラがまたうちで働いてくれたらどんなに心強いか……。


でも、目が離せない年齢の子どもを3人も連れての職場復帰は実質不可能だ。


「そうよね……。ーーあ、そうだっ!」


いいこと思い付いた!


「どうした?」


「クリス様、保育所を作るんですよ!」


そうすれば、子どもの面倒を見るのに手一杯で働けない人が働きに出ることができる。

これが上手く行けば、人手不足が一気に解消するかもしれない!


「保育所ってなんだ?」


「小さな子ども達をまとめて預る施設のことです。少人数の大人で大勢の子どもの面倒を見るので、預けている間他の大人が働きに出られるんです。保育所に預けられる対象を働く人に限定して、保育料と子どもの昼食代を無料にすれば、預けて働きに出たいと思う人が大勢いると思います!」


「なるほど、いいじゃないか。教会あたりに場所の提供を頼めないかな? この後、代官に話をしてみよう」


おお、私の案が早くも採用された!

教会の一部を使わせてもらえるなら、後は先生を探すだけだ。


「まあっ、子ども達を預ってもらえるなら、私も働きに出たいです。ぜひお願いします」


気が付くと、ノーラが目を輝かせて私たちの話を聞いていた。


「ノーラ、それ本当?」


「ええ、私は侍女の仕事が好きでしたから、できることなら復帰したいと思っていたんです。私にとっては願ってもないお話です」


「それは助かる。代官の屋敷で働いていた使用人を何人かこちらに回してはもらったが、それでも足りなくて困っていたんだ。ぜひうちで働いてくれ」


代官が手配してくれた料理人1人と、掃除や洗濯などをする下働き2人に加え、私たちが連れてきた侍女がカーラ1人しかいない。

これでは休みのローテーションすらままならないのが現状だ。


使用人の仕事は細かく分業化されているので、誰かが休みだからといって職務が違う人の仕事を代わりにやってあげることはないからね。

掃除も洗濯も料理もしてくれる家政婦さん的な働き方は、貴族家の使用人としては一般的ではないのだ。


「まあまあ! どうぞよろしくお願いいたします。私の方は子ども達の預け先さえ決まれば、いつでも始められます」


ノーラは両側から腕を引っ張る双子たちのせいでよろめきながらも、満面の笑みを浮かべている。


「それなら早く預け先をどうにかしなくてはな。決まったら連絡するよ」


「はい。お待ちしております」


「嬉しいわ! ノーラ、またよろしくね!」


そして私たちは、ノーラと子ども達に手を振って、意気揚々と代官の屋敷へ向かった。





新しい街とラルゴの町は、近いとは言っても歩くと20分くらいはかかる。

なので、もちろん私たちはトブーンを使って移動しているところだ。


「あっ、クリス様! 教会ってあそこのことですか?」


「どこだ?」


「ほら、あそこの白い建物です」


私が指さした先には、普通の家よりも二周りほど大きな建物があった。

広さはそこそこあるものの、簡素なつくりの建物だ。


「ああ、たぶんあそこだろう……。子ども達が大勢いるようだが……」


「本当ですね。何してるのかしら? ちょっと下りてみますか?」


「そうだな。ちょっと寄ってみよう」


私たちが乗っているトブーンに気が付いた子ども達が、ぽかんと口を開けてこちらを見上げている。

そんなに口を開けてたら虫が飛び込んじゃうよ?


「こんにちは!」


「こ、こんにちは……」


とりあえず近くにいた子どもに声をかけてみると、まん丸に目を見開きながら挨拶を返してくれた。


「みんな、ここで何をしているの?」


「いまは休み時間だから……、あそんでる……」


「休み時間……? もしかしてここは学校なの?」


てっきり教会だと思い込んでいたけど、学校に乗り付けてしまったのかもしれない。


「教会だけど……、でもべんきょうもやる」


「そうか。礼拝堂を教室としても利用しているんだな」


小さな町だから、独立した学校がないのか……。


「神父さまがおしえてくれる」


そして神父様が教師役もしていると……。

すでにオーバーワークなのに、この上ここに保育所作りたいなんてとても言えなくない!?


「あらっ、マルチェリーナ様! クリスティアーノ様も。何かご用でしょうか?」


「えっ?」


聞き覚えのある声に話しかけられ、そちらに顔を向けて見るとラヴィエータの姿があった。


「ラヴィエータ! ここで何をしているの?」


「はい。私にも何か出来ることはないかと思って、1週間程前からこちらの孤児院でお手伝いをしているんです」


「孤児院?」


えええええ!?

この教会、学校を兼ねているだけじゃなくて孤児院まで兼ねているの?


なんてことだ。

そんなに働いたら神父様が過労で死んじゃうよ!


「ラヴィエータさん、お客様ですか?」


教会の戸口から、優しそうな目をした白髪頭の神父様が顔を出した。

1人の子どもが神父様の袖を引っ張っているところを見ると、この子が呼んで来てくれたようだ。


「神父様、アメティースタ公爵様ご夫妻が慰問にいらしてくださいました。公爵様、奥様、こちらはミリエール神父様です」


「おお、これはこれは公爵様と奥様でいらっしゃいますか! お初にお目にかかります、私はミリエールと申します。公爵様からいただきました寄付金には、子ども達も私も、みんなが救われております。格別なお心遣いをいただきまして、本当にありがたいことでございます」


寄付金?

クリス様、いつの間に?


「役に立っているならよかったよ。困ったことはないか? 見たところ、ずいぶん忙しいようだが……」


「はい……。例の件がありまして、孤児がたくさん残されましたから……。この町には孤児院がありませんので、教会で引き取ることにしたのです」


そうだったんだ……。

私が魔法学院に通っている間にも、領民たちはずいぶん苦労したんだろうな……。


この優しい神父様のおかげで、路頭に迷う子どもが出なかったことを思うと、本当に感謝してもし切れない。


「そうか……。ミリエール神父、なるべく早く現状を改善すると約束しよう」


「改善とは……? どういったことでございましょう?」


神父様が首を傾げる。


「例えば、孤児院か学校を別の建物に移管するとか。実はいま、小さい子どもを昼間だけ預る保育所を作ろうと考えているんだ。そうすれば、働き手を増やすことが出来るからな」


「なるほど。それなら、孤児院とその保育所を一緒にした方が効率がいいのではないでしょうか。孤児達の中には大きい子もいますから、いまも小さい子の面倒をよく見てくれていますよ」


確かにその分け方のほうがいいかもしれない。

学校と保育所を一緒にしたら勉強どころじゃなくなっちゃうもんね。


「あの、クリスティアーノ様、マルチェリーナ様。もしよかったら私にもお手伝いさせてください」


「ありがとう、ラヴィエータ! とても助かるわ!」


ラヴィエータが手伝ってくれるなら、教会と学校は今までどおり神父様に任せて、孤児院と保育所はラヴィエータに責任者になってもらえばちょうどいいかも?


うん、凄くいいと思う!

絶対上手く行く気がするな!





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