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家業オブ爺様  作者: 鼻息
1/6

大分前の作品ですが、楽しんでいただけると幸いです。サイトから転載。

藍太は、そろそろ自分の家業を引退し、そのまま閉めてしまおうと考えている。

こんな商売、昔のSF小説が闊歩しだした現在に沿わないのだ。

そう思いながら、人生後半の日々を過ごしていたある日のことである。






バランスを保つのが難しい。

藍太はくっと歯を食いしばった。

藍太の前には渦を巻いて人を物を全てを飲み込まんとする



掃除機がある。

銀のフォルムは艶やかで、それが購入したばかりで有ることを連想させた。

実際、大型メーカー社のその掃除機は2カ月前買ったばかりだ。

ゴウゴウ唸る掃除機に、唸り返してあたりたいが、そんな場合でも無い。

藍太は、クナイを片手に床蹴り跳躍。銀の胴体…では無く黒いうねるコードに突き立てた。

断末魔のように凄まじい吸引音を上げて、掃除機は吸い込み口をくたり、と床に伏せた。


「紙パック方式にすりゃあ良かった」

財布事情的悲しさに脱力する。藍太の薄くなった年相応の髪の上、つまりいつの間にか背後に立っていた孫の瑠輝ルキがそんな場合じゃ無いです、と突っ込んで来た。

今でも、なぜルキなどと外国被れの名前を娘等が付けたのかが疑問だ。もっと男らしい名を付けてやりたかったと藍太はルキを見る度に後悔する。


その線の細い顔に、藍太は暗い声音で返した。

「だって保証書が無いアウトレット商品なんだ、これ」

「命があれば良いんですよ!だからじいちゃん、一緒に住もうって言ってるじゃないか」

「中学生なんかに世話されたかない!」

瑠輝の身体に厚みが無いのは発展途上、つまり、彼は中学に上がったばかりの少年なのだ。

そんな12、3の年端もいかない子供に身を心配されるほど老いぼれていないつもりだ。

クナイを抜くと、少し腰が痛みを発したが無視した。


藍太は、現代に残る古い一族の末裔である。といっても、家系図が有るとか立派な屋敷に住んでるとか確たる証拠は無い。

ただし、藍太は一族特有の職を受け継ぎまた、口伝によりその伝統を聞かされ育った。


だが、とぼんやり天井を見上げる。木の古い顔があった。

(陰陽師と忍びの名家の駆け落ちによる技術の混合、及び使命は重複。公務で給与って)

絶対付き合いで、ずっと支払われているだけだ。寧ろあんまりに昔から、払い続けているので藍太の家に税金で給与を与える不自然さにお上は気付いていないのだろう。



藍太は何故か21世紀の科学世界で妖退治を仕事としていた。

また、流刑に流れた罪人家族の監視もしていたこともあるが、それは既に藍太より前の世代の話だ。某貴族の落胤で、某暗殺容疑者でなど言ったところで、何百年も前のことだ。普通に、向こうは一般人と化してて、此方がストーカー紛いをしている気さえする。

藍太は、二十の一族監視を受け継いでいたが、先代が老衰で死んだと同時に監視を止めた。

どうせ、この家業?も藍太の代で終わりである。

娘が嫁いで肩の荷が降りたとほっとしていた所に、

瑠輝である。

何故かこの孫、藍太の仕事場にくっついてきてはちょっかいを出してくる。


まあ、今回は藍太の家であったのだが。

「さて、お前。どこから入った」

勿論、曲がりなりにも藍太は今でいう公安のような職を受け継いで来た男だ。それにしては多少きなくさかったりするが。まあ、それは置いておいて。

玄関の植木鉢だとか、ポストの中だとか。絶対そんな場所に鍵は置かない訳で。

むしろ、鍵なんて付けてない。

特殊な【仕掛け】で藍太以外は開けれないのである。

孫は、首をすくめて言った。

「じいちゃんが開けるのこないだみてたから」

態度こそ愁傷じみているが、かおは「てへ」っとでも言いそうなほどに反省が無い。

娘からは散々、「あの子に父さんの変な技教えないで!」と言われているが。

見て盗めと、誰が言った言葉か。言った先駆者に、余計なことをと怒鳴りたい気分だった。



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