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閑話・兄と王子(兄視点)

「それで?昨日の結果はどうだった」


朝の生徒会室で書類をチェックしているアルに俺は声をかける。


「マーケットにいたとの報告だ。だが、例の店は問題なしだった」


「昨日は俺達がアメリアを外に出さなかったしな。

 このまま何事もなくゲーム期間が終わればいいが・・・」


「ゲーム期間が終わったら安心と言う保証はないぞ?」


「そうなんだけどな。

 とりあえずゲームと同じ展開でやつらを捕まえれば平和かなと思うが・・・。

 そんなに甘くないよなぁ」


溜息をつきながら言う俺にアルも同じように溜息をつきながら頷く。」


俺が記憶を思い出したのは7歳の時だ。

正直死後の世界がギャルゲーとかありえないとしかいいようがなかった。

しかも俺の役所はディック・エヴェルス。

メインヒロインであるアメリアの兄だ。

ゲームでは高飛車な妹と主人公に協力するのに必要な情報を提供するの役割。

しかも仲が良くなかった兄妹が主人公のおかげで仲のいい兄妹になると言うイベントまである。

正直、ゲームについてはどうでもいいと思ってた俺は死後の世界を楽しむことにした。

しかしディック・エヴェルスは跡取りだけあって子供の頃からやることが多かった。

たまに自由な時間に絵を気晴らしに描いていたが、気が付くと何故かデザイン画になっていた。

最初は景色とか書いていたのに気が付くとデザイン画になっている。

生前の自分の事は規定によりあまり覚えてないが、生前の仕事が関係しているのかもしれない。

だが、公爵家の跡取りと言う立場でデザイン画はまずい。

俺は完成した絵は見つからない場所に隠すことにした。


俺が9歳のある日、アメリアが何故か俺の絵を発見して父親に見せているのだ。

当時は我儘な妹の面倒が嫌であまり近づかないようにしていたので仲は最悪。

だから”告げ口か!?”と焦って絵を奪おうとしたのだが、アメリアは満面の笑みで父親におねだりをしていた。

予想外の展開に俺が固まっていると父親は以外にも絵の道具を一式そろえてくれてやることをすれば好きなだけ絵を描いていいと言ってくれた。

これには正直驚いた。

気兼ねなく絵が描けるようになった俺はあの時、父親に告げ口をしてるのではないかと思った自分が情けなかった。

アメリアは単に俺と仲良くしたいがために我儘をして気を引こうとしていたらしい。

気付いてしまえば子供らしい行動ではある。

だからそれからは俺は妹とよく会話するようになり、仲良くなっていった。

もともと俺に構って欲しくて我儘をしていたので、俺がかまうようになればアメリアの我儘は減っていった。


妹が10歳になったある日、珍しく必死に勉強をしているので様子を見ていると隣国の言葉や歴史を覚えていた。

どうもこの前に行った王家のお茶会で第2王子が”婚約者は隣国の言葉を話せる人がいい”と言うのを聞いたらしく覚えることにしたらしい。

アメリアは王子達の婚約者候補の1人と言う訳で、他の婚約者候補は第1王子にアピールしてる中、アメリアは第2王子と仲良くなっていった。

俺も王子達とは何度か会ったが、はっきり言うと第2王子の性格はゲームと全く違う。

あれは記憶持ちだと思うが、あえて聞くことはしなかった。


第2王子とアメリアの婚約が正式に決まり、王子が我が家にも来るようになったある日。

俺は突然あることを思い出したのだ。

確かゲームの回想シーンでアメリアは12歳の時、街に出掛けて誘拐されそうになり、逃げ回ってる時に主人公に助けてもらうのだ。

実は以前に会ってたんですよって言うイベント。

そしてアメリアは今日街に出掛けている。

嫌な予感がして急いで街に向かうと誘拐されそうなアメリアを第2王子が助けているところだった。

だが、王子は無謀にも単身で街に来たようだ。

俺は共に来た護衛と共に2人を助ける為に動いた。

それなのに我が妹は今自分が誘拐されそうになったという事を理解してなかった。

というか気付いてなかった。

単に道を聞かれただけと妹はおもっているのだ。

あのゲームではアメリアは誘拐や誘拐未遂が多かった記憶がある。

これは危険だと俺と第2王子はお互いの情報を交換し、妹を守ることにしたのだ。


そして先日のドーラの事件。

あれは予想外の事件で、ドーラの言っている事は意味不明だったが、記憶持ちであることは間違いなかった。

ただ、”私はフランク様のヒロインなのに”と言っている意味が分からなかった。

ドーラは確かにサブヒロインではあるが、フランクは名前しかでてこないキャラでドーラとの接点は全くない。

フランクはもう一人のサブヒロインのメイドのエレンが仕えているお嬢様の婚約者候補として名前がでるだけなのだ。

なのに何故、フランクのヒロインなのか俺達にはわからなかった。

そしてドーラの修道院行きが決まった日、ドーラは忽然と消えたのだ。

もともとドーラの背後には誰かいる気配があったが、これで確実になった。

そしてその背後はこのゲームで真の悪役といっていい組織の可能性が高かった。


俺とアルがアメリアを着飾ってた昨日。

あの日はマーケットにいったアメリアと主人公が話をしていると組織の連中に難癖をつけられるイベントが発生するのだ。

俺は別にアメリアが主人公と会うのは気にはしない。

だが、あの組織にだけは関わらせたくない。

その為に俺とアルはお互いの記憶を照らし合わせて対策を練っている。

ゲームの終盤で起きる共通イベントはゲームで見てる分には”最悪”で済むが、あれが現実で起こるとなるととてもじゃないが恐ろしいとしか言えない。



「なぁ。リアは記憶持ちだと思うか?」


「突然なんだ?」


「いや、ちょっと気になったことがあって」


アルは言葉を濁しながら視線を彷徨わせた。


「アメリアが記憶持ちだろうと今は俺の妹だ。

 それに変わりはない。

 記憶持ちだろうがなかろうが俺には関係ないな」


そういうとアルに”単純で羨ましい”と言われてしまった。


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