閑話・ここはご褒美の世界 ドーラ視点
死後の世界は”時の街”と聞いてわたしは嬉しかった。
あのゲームは商人のシステムは面倒だったけどフランク様は素敵だった。
まさにわたしの理想の人。
特にCDは聞きながら寝て夢で会えないかしらと思ってたくらいだったわ。
そして記憶を思い出した私は自分がドーラだってことに歓喜したの。
しかもゲームが始まる半年前。
訓練所仲間がパン屋に来て、そのパン屋の噂を聞いてフランク様がパン屋に来るのよ。
確かに記憶を思い返しても思い当たる人達がパン屋に来ているわ。
これはCDのような展開が起こるって事に違いない。
神様がくれたご褒美だって思ったわ。
記憶を思い出してから私はメイクも服も気合い入れて店番をしていたの。
この世界の両親からは注意されたけど、知った事ではないわ。
両親と言う設定だけの関係なんだから私には構わないでほしい。
接客はきちんとしているのだし問題ないでしょ。
でも待てども待てどもフランク様はパン屋に来ることはなかった。
CDでは訓練仲間から貰ったパンがおいしくて買いに来るはずなのに・・・。
今日こそ来るかしらと店番をしていれば、来たのは訓練仲間の実だった。
如何してきてくれないのかしらと考えていると彼等の会話が聞こえてきたわ。
「フランク様の婚約者殿は今日も来ていたな」
「可愛いよな、ティナ様。羨ましい」
「今日なんかティナ様お弁当造りに挑戦したとか言って照れながら渡してたぞ」
「貴族なのに手作りとか愛だね!!俺もそんな婚約者欲しい」
「お前には無理だろう」
そんな彼等の会話に私は驚きしかなかった。
ティナは婚約者候補で婚約者ではないのに、彼等は何故勘違いしているのかしら。
確かにネットでもフランク×ティナのカップリングは人気だった。
だけど、ティナがフランクと結ばれるのは私がいる限りないのだから。
おかしいわと思って外を見るとフランク様が立っていた。
やっと来てくれたと思わず笑顔になったけど、フランク様はパンを買った彼等と共に去ってしまったの。
それでもCDの通りに彼はパン屋に来て私を見てくれたもの。
この後もうまく行くわ。
それにもうすぐ学院も始まるし、待っていてくださいね、フランク様。
学院の入学式にわたしはパンを持ってフランク様に会いに行ったの。
フランク様ったら照れてるのかわたしのことを知らないとかって言うのよ。
おまけに側にいた女が”フランク様には婚約者がいる”とか言うのよ。
そんなのティナが譲ってくれるから問題ないことじゃない。
でもフランク様は何も言って下さらない。
そっか、きっとその女に騙されているのね。
わたしが救って見せますから待っていてください。
そう誓ってわたしはその日はその場を立ち去ったの。
どうにかしてフランク様の目を覚まさなければとわたしは学院でのフランク様のスケジュールを確認して会いに行くことにしたわ。
邪魔者のティナの所にも行くのだけど側にいる女が見事に邪魔をしてくれて厄介だわ。
そしてわたしは真実を知ってしまった。
邪魔をする女が悪役令嬢のアメリア・エヴェルスであること。
金髪縦ロールで常に高飛車の女のはずが、金髪ストレートの口うるさい女になっている。
しかも嫌われ者のはずが、嫌われてなんていなかった。
これは彼女が物語の全てを変えた結果なのね。
自分の末路を変えたくてフランク様とティナをくっつけようとしていると言うの!?
わたしの邪魔をするなんて許せないわ。
そもそも私とフランク様の物語に悪役令嬢の出る幕なんてないのになんで邪魔をするのかしら。
わたしが”邪魔をしないで”と言った日から周りの視線がきつくなったわ。
そして学院長からこのままだと退学だとの話がでたのよ。
権力でわたしを追い出そうとするなんて卑怯だわ。
ならその前にフランク様を瘴気に戻さなきゃと歩いてたら紺色のローブの男が現れて気が付いたらわたしは見たことのない屋敷にいたの。
悪役令嬢はここまでしてわたしを追い出したいのかと怒りに燃えたわ。
だってそのローブの男が言うのは”君はこのままだとこの世界から強制退去になる”とか”最初に説明したけどここはゲームの世界であってゲームの世界じゃない”とか”この世界の人間は自分の意思で動いている”とか毎日毎日言ってくるのよ。
これでわたしを洗脳させようとでもいうのかしら。
男に反発するのも面倒になってきて適当に頷いていたら小言が減って来たのよ。
そして男の行動を見てたらたまに破落戸と話しているのを目にしたわ。
きっと悪役令嬢がイベントでつかうやつらよ。
それならばとわたしは悪役令嬢の使いだといって破落戸達に指示を出したわ。
なのに男にばれてしまって王都から離れた場所に連れて行かれてしまった。
破落戸に頼んだ1つは悪役令嬢が支持する事だったのだから問題ないじゃないと思うが、男は怒るばかりだ。
だからわたしは男の言葉に従うフリをして脱出することを考えてたわ。
夏も終わりに近づいた頃、ようやく男から王都に行く許可が下りた。
しかもメイド付きとは男もようやくわたしをみとめてくれたのね。
王都に戻った私はしばらく様子を見た後、ジーナに頼んで悪役令嬢を連れて来てもらう事にしたの。
ゲーム的にはもうすぐで最終イベントが発生する。
それの黒幕として悪役令嬢を仕立てればフランク様が手に入る。
ジーナは悪役令嬢をうまく攫ってきてくれたし、後は実行するだけだわ。
そう、この世界はわたしのご褒美だもの。
フランク様、あと少しで貴方の元に行きますわ。
そう思ってたのに、なのにどうして!?
ジーナは突然わたしを縛った!!
そして気が付いたらあの男が目の前にいた。
「どうしてあんたがここにいるの!!王都にいるはずなのに」
「俺こそ聞きたいな。君はこの世界の事を未だに理解していないのかい?」
「ここはわたしへのご褒美の世界よ!!
なのに何で悪役令嬢の手下なんかにわたしがやられないといけないのよ」
「ご褒美ね・・・。違うって何度の説明したのに理解できなかったのか。
それと俺が悪役令嬢の手下?
彼女は一発で俺が死神だとわかったのに君はそれすらも見抜けなかったのかい?」
「なっ!!死神がここにいるわけないわよ。
死後の世界は死神すらも干渉できないって言ってたもの。
嘘言わないで!!」
「嘘じゃない。現に君の行動を見かねて強制退去の許可がでたよ。
滅多にない事だけど、このまま君をこの世界に置いておくのは危険と判断する」
「何で!!ご褒美の世界のはずでしょ・・・?
フランク様とデートすらしていないと言うのにひどいわ」
わたしの抗議の言葉に男は何も言わずに持っていた紙を翳した。
その紙が光りだして周囲に広がるとわたしの体から力が抜けて行った。
この世界は死後のご褒美だってわたしのための世界だって思ってたのに・・・。
どうして?
「確かに好きなゲームの世界に行けるのはご褒美かもしれない。
でも全て自分の思い通りに行くと思ったのが君の間違いだよ。
例え記憶持ちでなくても心はあるんだ。
ゲームと同じとは限らないと何度も説明したのにね・・・。
何故理解をしてくれなかったんだ」
死神が呟いた言葉をわたしが聞くことは永遠になかった。




