閑話・死神の日常
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死神の日常は穏やかな日々と言えるだろう。
仕事の日には仕事をして休みの日には好きな事をする。
死神は死者の審判所でスカウトされて承諾するとなれる。
ゲームを元にした世界に行く記憶持ちとある意味似ていて生前の知識は覚えていても記憶はない。
食事も睡眠もとる必要はないから仕事の日は24時間フル稼働だ。
休みも24時間フルで遊べる。
といっても娯楽は少ないのが難点だろう。
本を読むかゲームを元にした世界に送った死者たちの様子を見るかたまにスポーツをする者もいるが、スポーツをする人間は少数だ。
後は審判所の裏手に自由に使えるハンモックがあってそこで寝るのも密かに人気だ。
寝る必要はなくても睡眠を満喫する者は結構いる。
死神の主な仕事は死者の死後の世界を案内する事の他に彷徨っている死者を審判所に連れてくる仕事もあるが、これは誰もがなれるわけではない。
地上に降りるには色々制約がある為、死神の中でも資格を得た者しかいけない。
そしてどういう訳か地上に降りる資格を持つ者は少数のアウトドア派な人が多い。
ついでにいうと死神の中にも生前の記憶をもっているものもいる。
ただし、生前の記憶も持っているものは死者と遭遇する仕事はせずに審判所の奥で書類整理などを主にしている。
そして俺が死神になってから記憶している限りここは何の変化もない日々が問題なく過ぎていた。
だが、あれはどれくらい前だろうか。
死神になると日にちの感覚がないので数日前なのか数年前なのかあやふやだが、突然事件が起きた。
事件と言うべき程ではないのかもしれないが、死神が1人行方不明になったのだ。
地上に降りるには入り口は1つしかなく、そこから地上に降りた形跡はなかった。
それなのに審判所をくまなくさがしてもみつからなかった。
行方不明になった奴は生前の記憶を持っている奴で主に死者達が行く世界の設定を担当していた。
分かりやすく言うならばプログラマーと言ったところだろうか。
俺は行方不明になった奴と会えば話をするくらいの仲ではあった。
これは死神になる条件なのかしらんが、死神達はコミュニケーションをあまりとらない。
中には話好きもいるが大半が休みの日は1人でいる者が多い。
そんな中で俺とあいつは図書館でよく遭遇し、読む本の傾向が近いことからよく話すようになった。
といっても本の話しかしてないのでお互いの事はあまり知らなかったりする。
だからいなくなったと聞いてもそうなのかくらいにしか思わなかった。
死神は任命期間がある。
それが過ぎれば新たな命として生まれ変わることができるからそれと同じようなものだと俺は思っていたのだ。
だが、あいつの事もあまり気にしなくなって俺が時の街行きに指名した死者達の世界が動き出した頃頃に思わぬ事態が発生した。
その日の俺は休みの日で時の街の様子を見ていた。
ゲームの開始時期ではないので詳しい情報はまだ見れないが、記憶持ちがどのキャラなのかくらいはわかるようになっている。
といっても該当者たちはまだ記憶を思い出せる年齢には達していないからまだ何もわからない状態ではある。
今回はギャルゲームと乙女ゲームの世界を併せた世界の2回目だ。
前回は乙女ゲームの攻略対象者のみが記憶持ちだったが、彼らはギャルゲームの記憶を主としていたから自分の知っている展開と違う行動に困惑している様子とか思わぬ事態に発展してて中々面白かった。
今回は適度に混ぜ合わせているようだ。
そういえば行方不明になったあいつは悪役があってこその物語なのに最近は悪役に記憶持ちが多いから悪役が悪役として機能しなくてつまらないと文句を言っていた。
自分が悪役だと言う未来を知って悪役をしようとする者は少ないだろう。
ましてやその未来の道がひどいものだと知ってしまったら避けるように行動するはずだ。
俺はそう考えているんだが、あいつは納得しないようにいつも文句を言っていた。
そんなことを時の街を見ながら思い出していたら突然、腕輪が光り上司からの呼び出しを受けた。
この腕輪は死神になるとつけられて役目が終わるまでは外すことは出来ない。
それにこの腕輪には探知機もついているのでどこにいるのかもわかってしまうのだ。
だからこそあいつが行方不明になるのはおかしいのだが、未だにみつからない。
腕輪を調べても全く反応ないのだ。
生前も腕のいいプログラマーだったらしいのでもしかしたらその辺はこっそり改造しているのかもしれないなと俺が考えながら上司のいる部屋の扉をノックする。
中からの返事を受けて入ると同僚が一人立っていた。
そいつも俺が知っている奴で行方不明になった奴と3人でよく話したものだ。
こいつは女なのに俺達と本の好みが似ていたのだ。
残念ながらよくある三角関係とかには発展はしていない。
何しろこいつは姿に反して男勝りなのだ。
性別間違えてないかと言えばよく言われると笑顔で答えるなど男前な女だ。
それにしてもなんで俺達が呼ばれたのだろうと思っていると上司がとんでもないことを言いだした。
「君達に来てもらったのは行方不明の彼の消息が分かったからなんだ。
彼は時の街に行っている」
時の街って今、ゲーム展開になる様に動き出したばかりの世界だ。
だが、あいつがいなくなったのは大分前だ。
それに該当者以外の死者は受け付けないようにしているから侵入もできないと聞いていたんだが・・・。
まさかあいつは改造してしまったとでもいうのだろうか。
「君達が考えている通りだよ。
彼は我々もあの世界が稼働するまで気づかない位綺麗に紛れていた。
そして1度稼働してしまった世界を止めることは出来ない。
我々が介入するのも難しいのだが・・・。
彼は何故か君たち2人ならアクセスできるように設定しているんだ。
しかもゲームには関係ないキャラをゲーム内で関係するキャラにご丁寧に変えてある」
「「は?」」
上司の言葉に俺達は同時に首を傾げる。
ようはあいつはゲームの世界をいじって俺達が来るように仕向けたってことか?
「あの、すみません。いくら彼でもそんな事可能なんですか?」
彼女の言う事は最もだと思う。
プログラマーだからってハッカーとかなんでもできるわけじゃない。
”プログラマーってだけで機械に強いと勘違いされてよくわからない質問されて困る”とあいつは言っていた。
「普通ならできないはずなのに何故か彼はやってのけた。
その理由も今は調査中だから詳しい事は言えない。
それで君達を呼んだ理由は敢えて彼の行動に乗って君達には中に入ってほしい。
彼が変えた設定の中には記憶持ちの中に影響が出る可能性がある。
正直彼が何をしたいのかわからないが彼を止めて欲しい」
上司の言う通り、何故俺達中にアクセスできるようにしてこんなことをしたのかわからない。
だけど不謹慎かもしれないが楽しそうだと思ってしまった。
同じ日々とは異なる世界に行くことを俺は了承した。
彼女も最初は渋っていたが行くことを決めたようだ。
それにしてもなぜあいつはこんなことをしでかしたのだろうか。
死神達にあえて名前を付けていないのでわかりにくかったら申し訳ありません。




