昼食会議
「平民街で襲われた!?」
今はあの事件の翌日の昼休み。
私はカローラを人気のないところに連れ出して昨日の話をしている。
「イベントで言うならばヒロインと王子ルートのイベントに似ていたわ。
でもはっきり言うけどはしゃぎすぎて迷子になったわけではなくてよ」
ふふん。と笑いながら言う私にカローラは冷たい視線をよこす。
ゲーム内ではヒロインははしゃぎすぎて迷子になるのだ。
「今の私は平民街ではしゃいで迷子に何てなりません。
それよりもまさかご自分でごろつきをやとっての自演ですの?」
今度はカローラがふふん。と笑いながらやり返してくる。
「そんなことしなくてもアルとの仲は良好ですわ。・・・イマハ」
最後は小声で呟きます。
できればこのまま良好な関係が続いてほしい・・・。
「それで王子様も同時に襲われたのね?
王子様が今日いらしてないのはそれが原因?」
カローラの言葉に私は頷く。
昨日襲われた時、私は直ぐ近くに護衛がいるのを感じたので敢えて挑発して情報を引き出そうとしたのだ。
結果は”本物のエヴェルス公爵令嬢からの指示だ”でした・・・。
うん?私って偽物扱いなんですか?
考えているうちにエヴェルス家の優秀な護衛達が男を捕えてくれました。
今頃は尋問をうけてるはずです。
あの後、直ぐ王子と合流すれば王子にも襲撃があって尋問してるところでした。
こちらも黒幕については同じことを言っていましたね。
そんなわけでデートはその場で終了。
私は家に帰され、送ってくれた王子からは何故か冷気が漂ってました。
「必ず黒幕を探して見せますからミリーはしばらくおとなしくしていてくださいね」
と笑顔で言われましたが、とても怖かったです。
私が屋敷に戻ると代わりに兄を連れて王子は城へと戻っていきました。
その後の調査状況については私には何もきていません。
兄も夜には帰宅しましたが、何も教えてはくれませんでした。
それにしても偽物発言は以前にもされましたよね。
初対面に偽物扱いされるのは単なる偶然なんでしょうか。
今日カローラをお昼に人気のないところに誘ったのは情報を得る為。
何しろしばらくは学校終わったらすぐ帰るように言われてしまい、当分はエリークとパスカルの所に行けなくなってしまった。
だからこそ現時点で記憶持ちのカローラの話を聞きたかった。
今回の件にドーラが絡んでいるのか、もしそうなら何故なのか。
だから私はカローラに話てドーラの事について聞いた。
「ドーラってゲームに出てきたかしら?」
「アメリア様はエーリク様ルートのゲームはやってないのよね?
なら知らないかぁ。ドーラは初回限定盤の付録につてくるドラマCDにでてくるよ」
「ドラマCD?どんな内容なの?」
生前の私は初回限定盤とかあまりこだわってなかったから、付録でドラマCDがあるとか知らなかったよ。
ということは私が買った方のゲームにも付属品でついてたのかしら。
「それがね・・・。
IF編って話でフランク様とドーラが結ばれる話なんだよ。
ちなみにもう1つのゲーム機のドラマCDはエレンの日常らしいよ。
だから例の事件でドーラの言ってる内容を人伝に聞いた時にすぐわかった。
ドーラはあのドラマCDの内容を現実だと思ってるって」
そこでカローラは言葉を切り、お昼のサンドイッチを口に入れる。
それにしてもそんなドラマCDがあったとは・・・。
そしてエレンの日常?そういえばティナのメイドもエレンって名前だった気がする。
ただの偶然?
「でもどうしておまけなのにドーラとエレンって子がでてくるのかしら?」
「ん?あれ?もしかして忘れてた?
時の街ってもともとギャルゲーで出てその後乙女ゲーになったじゃない。
私はギャルゲーはやってないけど色々話題に上がってたよ。
ドーラとエレンは乙女ゲーム本編には全く出てこない変わりにCDになったんだよ」
!!!!
何か忘れてると思ってたけど、そうだよ。
このゲームはもともとPCでのギャルゲーが元だったんだ。
エーリクとたまに会話が合わないなって思ってたのはこれが理由かぁ。
確かギャルゲーから10年経って乙女ゲーになったって話題になってた。
うん、何で私忘れてたんだろう。
男性の記憶持ちも多いなとは思ってたけどこれが原因か。
でも、10年経ってから販売されたからもしかして乙女ゲーの存在を知らない可能性もある?
この世界はゲームの世界を元にしていてゲーム補正はないからイベントが強制的に動くことはないはず。
なのに今回はデートイベントに似た事が起きた。
でもこれはもしかしてギャルゲーのイベントでは存在するイベントとか?
片方の知識だけだと判断材料は厳しいわ。
カローラも同じことを思っていたようでこちらを見つめる目が厳しい。
「ねぇ。アメリア様。私から1つ忠告。
実際に事件が起こったという事は今後も起こる可能性は高いと思う。
アメリア様が殿下達に記憶持ちであることを言いたくない気持ちはわかるけど。
彼らは私からみても記憶持ちで間違いないと思うよ。
さらに事が大きくなる前に話したほうがいいと思うわ。
お互い隠し事しながらだとこの先危険な気がするもの」
カローラの言葉は正論です。
お互い持ってる情報を出し合うのが今後の対策には一番だとわかっています。
それでも・・・。
「言えないなら私が言おうか?」
カローラの言葉に私は慌てて首を横に振ります。
自分の言葉で伝えたい。
なのに言うのが怖い・・・。
「カローラ。余計なお節介はしない方がいいよ」
突然割って入った声に振り向けば、カローラの兄のセシルが立っていました。




