小さな小屋にて
こちらも警告は念のため。
なんのために生きているのか、に答えなんて出せないんだ。
死んでるように生きている……
もう、飽きたな。疲れたな。
ナイフを持った少女は、小さな小屋を見つけて微笑んだ。
そっとそれに近づく。
暫く使われていない小屋らしく埃っぽい。
まぁでも、いいかな。
埃なんか気にせず椅子に腰掛けた。
意外とまだ使える。
「これで終わりってのも呆気ないけどまぁ仕方ないか」
誰もいない小さな小屋で。
少女はナイフを自ら胸に──……
「ちょっと待てっっ」
すぐそこから声が聞こえた。
動作が止まる。
「……君……なんでこんなところ……で……」
男の人だった。誰もいないと思っていたのに。
男の人は少女に近づき少女の手からナイフを取った。
「ちょ……」
「死のうとしたのか?そんなのだめだ。俺が許さない」
取り返そうと手を伸ばす。振り払われた。
「はぁ?意味わかんな……」
ナイフを後方に投げ、男性は少女の両手を握る。
「生きろ。生きなきゃだめだ。何があろうと誰であろうと俺の前では人は死なせはしない」
真剣な目で言う。
「俺がお前を生かす。死のうとするな」
「なんでそんな必死なわけ……?他人でしょう……?」
「理由なんて、ないさ」
少女の手を離しナイフを拾いに行きながら言う。
「まだまだ若い命だからな。死なせるのは勿体ない……あとこれは私的なものだが」
ポケットから紙を取り出し男性は少女に見せた。
少女にそっくりな顔がそこにはあった。
長い黒髪。目や眉毛、鼻の形など……ヘアバンドまでもが同じものなのは偶然だろう。黒と白のストライプでリボンがついてる。
「似てるだろ?だから見捨てられなくて」
「どうしてここに……?」
「俺の小屋だからな。暫く出てきてなかったんだが、珍しくなんか作りたくなって来てみたわけだ。今日来てよかったよ」
「私にとっては最悪よ」
「とにかく、俺はお前を生かす。寿命で死ぬまでな。ついてこいよ」
男性が手を差し出す。
彼女はそれを取らない。
暫し間が空いて男性は彼女の手を引っ張った。
「お前、名は?」
「……。」
「俺は……そうだな、アランテとでも呼んでくれ」
「……じゃあリリア」
「リリアなりょーかい」
勿論2人とも偽名だ。
アランテはリリアの手を引っ張り
「行くぞ」
と小屋を出た。
リリアは抗う間もなく引っ張られていく。
小屋を出てすぐ、小道が見つかった。
草で隠れていてよく見えなかった……この小屋にはくるんじゃなかったと今更ながら後悔する。
前にいる男……アランテはとにかく強い力でリリアを引っ張っていく。
雨が、降ってきた。
「雨か……リリア、走るぞ。ここは危な……」
アランテの声が途中で止まる。
「な……っ」
上から岩や土が落ちてきた。
「くっそっ」
アランテがリリアの体を思いっきり押した。
「ったく、お前は生きろよ」
降ってきた岩にアランテは潰された。
「は……?」
岩の下から赤黒い液体が流れている……
「アランテ?」
返事はない、当然だ。
というか……こんなすぐに土砂崩れが起きるか……?
なんでこんなに大きな岩が……?
そっと岩に近づいた。
なにか落ちてる。
拾ってみるとナイフだった。
「……。」
ナイフを拾い少女は
自分の首に刃を押し当て力を入れた。