第六話
今回は短いです。
「ようやく来たか。遅かったな」
武器屋に入るとそんな言葉が投げかけられてきた。
相変わらず俺の方を見向きもせずに鉄の塊を打ち続けている。
「食料の買出しとか色々やってたんだよ」
コイツの名前はハンク。
いつも人を見透かしたような口調で謎の多い人でもある。
「今回は何の用だ?大方旅にでも出るから武器を用意してくれってか。そうだな、ナイフ数本に剣を一本といったところか」
「そうだよ、今すぐに用意できるか?明日には出発するんだ」
「『明日には出発する』か、そんなことはとっくの昔に知っていたが、今すぐに用意できるものといっても私の剣はどれもこれもが同じようなものだからね。君も知っているだろう?私がどのようにして剣を作っているのか」
ああ、知っている。
彼女は精霊の声を聞きながら剣を作っているのだ。
物としてではなく、生物として剣を作る。
鍛冶師にとってこれ以上とない才能であるだろう。
しかし、そこにも欠点というものがある。
精霊というのは基本的に世界のバランスを保とうとしている。
精霊の力を借りるためには何かを代償にしなければならない。
そのため彼女の作る剣はとてつもなく普通なのだ。
強すぎず弱すぎず、絶妙なバランスを保っている剣しか作り出すことしかできないのだ。
「それで構わない。金はここに置いておくぞ」
俺はナイフ数本と一本の剣を貰い金をカウンターに置いておく。
そのまま店を出ようとするとハンクに声をかけられる。
「最近精霊の数が減っている気がする。もしかしたら何かが起こっているのかもしれん。気をつけろよ」
俺はその言葉を聞いて店を出た。
あいつの言うことは冗談半分にして聞いておいたほうがいい。
今まで数え切れないほど思わせぶりな言葉をかけられてきたからな。
鍛冶師としての腕は悪くないんだから、あの性格と口調さえなんとかすればもっと儲かることは間違いないだろう。
そんなことを思いながら俺は帰路についた。
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翌日、ヘントリアに行くためにギルドまで行くとそこには馬車が置いてあった。
「来たか」
ギルドマスターに声をかけられる。
「この馬車なら3日もあればヘントリアにつくことができるだろう」
「いいのか?こんなもん用意してもらって」
「少しでも早く着いたほうがいいだろうと思ってな。ああそうだ小僧、これをやる」
婆さんからなにかを渡された。
見るとそれは三日月の形をあしらったペンダントだ。
「常に身につけておけ。困ったことがあれば助けになるはずだ」
「ありがとよ。それじゃ出発するぜ」
俺は馬車に乗り込みヘントリアへの道を進んで行った。
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