第三話
復活しました。
受付のカウンターに依頼書を持っていき、パーソナルカードを受付嬢に渡す。
受付嬢は俺のパーソナルカードを確認した後、思いもしなかった言葉を発した。
「スレイ・アークハルト様でございますね。ギルドマスターによる特別依頼が発注されていますので、そちらの依頼はお受けになることができません」
なんだと、前に話をしたときは無理にランクの昇格試験はしないと約束したはずなのに。
それにあの人の依頼はたいてい面倒なものばかりだ。それも、Cランク相当の実力が必要な依頼ばかりで疲れるんだよ。
ギルドマスターには申し訳ないが、ここは適当な理由をつけて断っておこう。
「申し訳ないが、今日は午後から用事があるんだ。依頼はまた今度にしてくれってギルドマスターに伝えといてくれ」
俺はそう言って自分のパーソナルカードだけ回収して、受付のそばを離れようとした。
しかし、そう簡単にはいかなかった。
急に自分の足が動かなくなったのだ。
俺は上体を後ろに反らし受付嬢を睨みつけた。
「いったい何をした」
「足止めの魔法をかけさせていただきました。ギルドマスターにはいかなる理由があろうとも必ず連れて来いと言われましたから」
くっ…、俺に拒否権なんかないってことか。
あの野郎、最初っから俺に依頼を受けさせようとしていたってことか、気に食わねえ。
そんなことを考えていると、急激な睡魔が襲ってきた。
どうやら受付嬢が睡眠魔法をかけたようだ。
やばい…、このままじゃ………。
俺は自分の体が倒れたということすら認識しないままに意識を失った。
「………か?」
「……さ……いる…け…」
「分……ている、………」
後ろから何やら話し声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
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睡眠魔法
人や動物を強制的に眠らせる魔法だと思われがちだが、実は違う。
強烈な睡魔を対象とした者に与える魔法である。
そのため、疲れている人にかければ直ぐに眠るし、まったく眠気のない人間にかけてもあくびをする程度に留まるなど、対象者の状態によっても左右される。
つまり、戦闘中にこの魔法をかけても全く効果はないため、この魔法を有効的に使うことができるのは、医者くらいである。
魔力がそこそこあれば誰にでも使えるが、実用性がないためこの魔法の存在を知らない者も多くいる。
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「ようやく起きたか、このガキが」
目覚めた瞬間に暴言を吐かれた。
理不尽だ。
「勝手に眠らせといて何言ってんだよ。とうとうボケたか、婆さん?」
俺の目の前にいるこの女性は、ミラド・レギール。
ここのギルドのギルドマスターである。
かつては凄腕の冒険者だったようで、聞くところによると、SSランクまで後一歩のところだったとか、片手で悪魔を倒しただとか、絶世の美女だったとか、様々な噂が聞こえてくる。
最後の噂は嘘臭いが、老齢になった現在でも、並の冒険者程度なら悠々と相手にできるのだから、相当な強者であったのであろうことは間違いが無いだろう。
「相変わらずの減らず口だな。まあよい、そこに座れ」
俺は言われた通りにイスに座る。
今更逃げようなんて思いもしないし、今逃げたって追い掛け回されるのが目に見えてるからな。
「それで、今回はどんな依頼なんだ?俺に頼むってことは並の冒険者じゃこなせないような依頼なんだろ?」
「いや。実はな、今回貴様をここに呼んだのは依頼を受けてもらうためではないのだ」
珍しい。今までは有無を言わさずに依頼を受けさせられてきたのに。
しかし、俺は婆さんの次の言葉に驚愕することになる。
「スレイ、貴様にはこの国の首都、ヘントリアに行ってもらう」
なんか凄い微妙な話になっちゃったかも。
感想、指摘待ってます。