営業時間外ですが
「ひえっ」思わず悲鳴がもれる。
「11時半までに、とお伝えしてあって、まだおいでにならなかったものですから」
「すみません、すぐ伺います」
あわてて電話を切る。が、ふと気づく驚愕の事実。
この二人の小僧をどうすればいい?
幼稚園までは歩いて15分程度。だらだらと坂を下っていって、商店街を通り抜け、少し路地に入って大きな公園を通り抜けてその先。
口で言うのは簡単だが、まさか二人の赤子だけを置いて行くわけにはなるまい。
車で行くしかなさそうだ。二人がキゲンよく遊んでいるのをいいことに、そっと外に出て車庫まで。
このところ、ほとんど使っていないステップワゴン。エンジンは一発でかかった。
後ろの席を確認。チャイルドシートもよし。あわてて家に戻り、二人を抱き抱えるようにまた車まで。
チャイルドシートに座らせてベルトで固定すると、二人はどこかに出かけるというのが分かったらしく、大はしゃぎ。手足をばたつかせて笑っている。
車で5分も走ると、幼稚園がみえた。前の駐車場はガラ空き。そうだろう、もう営業時間は終わっている。彼はできるだけ園舎に近い場所に車を停めると、エンジンはかけたままで車から降り、走って建物へと向かった。
まどかは、担任のミカ先生と折り紙をしている最中だった。
「すみません」彼がおそるおそる顔をのぞかせると、ぱっとこちらをふり向いて、あっ、パパだと大きな声で叫んだ。
「今ね、ミカ先生にツルの折り方ならってたんだ」
遅かったね、とも言われずに済んでほっとした。
先生も「よかったね、パパ来てくれて」とニコニコしている。そこに電話をくれたらしい主任がのぞいた。「椎名さんですか」商売柄穏やかな表情だが、目が笑っていない。
彼は言い訳がましいかと思ったが
「すみません……カミサンに急用ができて」
ペコペコと頭を下げる。冷や汗が出てきた。
まだ何か言い足そうと思ったが、急に車に残してきた双子のことを思い出し
「すみません、小僧が車に乗ってるので」ペコペコしながらもまどかの手をひいて、主任と 担任が見守る中、逃げるように足早に車に戻って行った。




