表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/42

霧のミンダナオ島

 由利香も始めは、同じ反応だったという。話し合いを勧めておきながら、家を出ろと?

 しかも子どももすべて置き去りにして。まどかは幼稚園、しかも卒園を控えて大事な時期だし、双子は動き回ってタイヘンな時だし、しかも不燃物当番もあるし。

「ぜったい、無理です。たとえ三日でも」

「そこをあえて、お願いできませんか。その三日を」

 支部長は、かなり食い下がったらしい。

「どんな仕事でも、任されたことは確実にこなす男です。今回も必ずやれるはずだと」

 説得されて、ついに由利香は折れた。

「その時、計画に乗ってくれて……細かく。休みに入ってから、ここだと思ったら、発作的に出て行って構わない、ヒントは置いていかない。

 それと、頼まれた。出先から連絡をとらないように、向こうから連絡が来たら、無視してもらえないか、って。多分連絡は来ないだろうけど……そうも言った。すごいわ、ワタシよりよく解ってる、あの人」

「かもな」

「ずっと半信半疑だったけど……」由利香は、コーヒーもう一杯淹れようか、と立ち上がろうとした。 そこを優しくとどめて、「オレがやるよ」椎名さん、キッチンに立った。

「やっぱり、ワタシ、家出してよかったと思う。支部長さんが言って下さったの、気が済むまでご実家においでください、って。でもやっぱり二泊が限界だった。それでも一人でいろいろ考えられたし」

 キッチンに立つ彼の後ろ姿を、見つめているようだった。

「オレもよかった、」コーヒー豆を挽くのに集中しているフリをして、彼はぶっきらぼうに言う。

「主夫はハードだ。今までのシゴトの中でも極めつけに厳しかった」

「でしょ?」

「アンタはえらい」ようやく、言うことができた。「ほんと、感謝してる」

「タカさんが外で、いっしょうけんめい働いてるからだよ」

「そんで、オレもユリさんが家で任務遂行してるから、やってられるんだな……」

 出来上がったコーヒーを慎重に運んでから、彼は由利香の目をみた。

「これからオレが、あんまり家でダラダラしてたら、発破かけてくれる?」

「もちろん」

 そう威張りつつも、こちらこそお願いします、と由利香も頭を下げ、とびきりの笑顔を返してくれた。


 カップを片付けながら、突然思い出して由利香に聞いてみる。

「カレンダーの『キリミン』、アレ何?」

「あ」由利香も思い出したようだった。「そうだった」急にけわしい顔になる。

「木曜日、ビデオセットしてあったの、録画予約。でもテープ出てたから」

「え?」硬直する。前日まどかにビデオを見せていた。その時、予約が入っていたかどうか、確認してなかった。

そう言われれば、まどかから「……はずしていい?」と聞かれたな、あの時。

あれは「よやくをはずしていい?」の意味だったのか。

「その予約が、キリミン?」切り身ん?

「そ、『霧のミンダナオ島』大好きなのよ、スペシャル版だったし」どんな番組や。

「……すみません」そこからが、ちょっと、もめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ