支部長のとんでもない提案
仕事は一生懸命に取り組んでいることが判った。無理強いされているわけでもなさそうだ。それは普段の顔つきをみてもわかる。
悔しいが、今度の仕事はすごく、彼に合っているのだ。
それでも、よくよく考えてみるとケガもそうなのだが、家庭に帰ると何もしてくれないのが実は一番不満だった由利香。そんなところもお見通しだったのか、支部長が優しく続ける。
「現場で作業する彼のような役職の人は、実は独身者が多くて彼のように家庭持ちは珍しいんです。しかも主任ともなると」
「現場以外の仕事もあるんですよね、もちろん。総務とか。他の部署なら家庭のある方も多いのでは?」
「そうですね」
「このままでは、どうにかなってしまいそうで……」由利香、泣きそうになった。
「心配で心配で……それに、あの人がどういうつもりなのか、」
支部長が急に顔を上げた。
「ご家庭で、ゆっくり話し合う機会が必要ですね、ご主人と」
「はあ?」どういうことなのだろう。
「ちょうど仕事に空きができそうな時期があります。研修に行ってもらうつもりでしたが、それよりも優先すべきことがありそうなので」
そこで、二月末に三日間の連休、土日も確実に仕事が入らないという保証で、計五日の休みが提案されたのだと。
「無理だと思います」由利香は悲観的だった。
「休みが続いただけだと、タカさん……夫は何もしてくれないわ。ずっと寝てると思う」
そこまで言うか、しかしそれは事実だな、椎名さんもしぶしぶ納得。
「それでね、『では家出してみたら? アナタが』って、支部長が」
「何ですと?」椎名さん、今さら飛びあがる。




