妻の疑惑
光明グループの件が片付いた、クリスマスの時のこと。
昨年12月25日の朝遅く、由利香が目覚めると彼は家に帰っていた。
シャワーの音がする。帰ってたんだ、よかった。
しかし風呂場で彼が着替えているところをふと目にとめ、由利香はぞっとした。
脇や背中にひどいあざができている。一体何があったの?
一日休んで、翌26日にはまた出勤。彼が行ってしまってから、迷ったものの会社の総務に電話したのだと言う。
いったい、うちの夫にどんな仕事をやらせているのですか? そう文句を言ってやろうと思っていた。また、ケガをして帰ってきたんですが。夜九時までには帰るから、と言っていたのに、実際帰ったのはもう翌朝だったみたいだし。
総務のカスガという人が電話に出て、
「すみません、今から会議なので、お急ぎでなければ後ほどかけ直します」
と固い口調で早口に答え、こちらが何も聞かないうちに電話を切ってしまった。
「すごく、感じ悪かったのよ」
椎名さんはつい笑ってしまう。春日のあわてぶりが目に浮かぶようだった。
昼過ぎ、由利香のもとに電話がかかってきた。ちょうど双子にごはんを食べさせている最中。
スプーンを取り上げ、代わりに二人に両手付きマグカップをもたせて電話に出る。
外からの電話、しかも、向こうは支部長だと名乗った。
「ご主人のことで、お電話いただいたそうで……遅くなって申し訳ありません」
タイヘン、おおごとになっちゃった。最初はかなり動揺したものの、後ろの双子が騒ぎ出したのに勇気づけられ、ついに言ってやった。残業や休日出勤が多すぎること、よくケガをすること、長い出張中、何も連絡がとれないこと……
支部長と名乗った人は、うんうんと親身に話を聞いてくれた。
「とにかく……会社に文句の言える筋合いではないのかも知れませんが、ワタシ何だか不安になってしまって」
「今からお宅に伺ってよろしいですか」
支部長の突然の言葉に、由利香は固まった。




