絶体絶命な親子
彼ら親子の姿をみてぎょっとしたように一瞬立ち止まったが、逆光なので椎名さんには表情が見えない。
しかし、服装をみて気づいた。塗装屋の服装、若い男。
彼は後ろを振り向いてから一歩、椎名さんに近づいた。
ケインだった。目を見開き、何か言いかけた。
後ろから誰かに追われていたらしい、外から足音が聞こえる。
とっさに、椎名さんは後ろの倉庫を指した。間髪いれずケインが中に飛び込む。
座ったところに、同じドアから白っぽい作業服の男が一人飛び込んできた。
ぜいぜいしながら、父と子を見て、それからあたりを見回している。
「なにか?」訊ねながら、心の中でまどかに呼びかける。
頼む、何も言うな。それと、倉庫の方をみるんじゃない。
「今だれか来なかったか?」
作業服の胸には、『青葉区建設業組合』ともっともらしい縫いとりがある。
しかも念には念を入れてか、PET素材のバッヂのようなものを留めていた。
建設業組合マスコット『たてるくん』だと。キャラは、元気のよさそうな顔だった。
しかし、手にしたトランシーバーとその目つきから、服の中身は全然組合と関係がなさそうなきな臭さを漂わせていた。
「いえ? ずっとここでコーヒー飲んでたけど」まどか、黙ってろよ。
まどかはきょとんとしたように、突然現れた男をみつめている。
双子は各自の飲み物に夢中。
「ペンキ屋みたいな、若いヤツだが」
どうする?『シェイク』をかけるか? 相手は今のところ一人、今ならやれる。
と、急にまどかが言った。




