ママはおとまりなの
ダブルバギーを片隅に停めて、まどかに二人のお守りを頼んだ。さすがに慣れているまどか、双子の鼻をかわるがわるつまんだり、両手でチョウチョを作って飛ばせてみたり、飽きさせることがない。
そのうちに、彼も不燃物回収に集中。この近辺はマナーが徹底しているらしく、極端におきて破りの人間は現れず、それなりに順調に回収作業が進んでいった。
ふと見ると、先ほど彼をきつい目で見たオバサンが、まどかに話しかけていた。子どもは好きらしい。まどかもすっかり打ち解けた調子で答えている。
「うん、ママ、きのうおでかけしちゃったの。おとまりなの」
「あらまあ~」彼の方をちらっと見ている。
「タイヘンねえ、おねえちゃん、ちゃんと弟のめんどうみて偉いわねえ」
何かと想像をたくましくしているのだろう。ちょうど作業もひと段落ついて、いい時間になったので
「まどか、お待たせ」
声をかけると、オバサンはじゅうぶんに同情的な笑みを浮かべながら、
「ご苦労さまでした」と頭を下げ、子どもたちに手を振りながら角を曲がって行った。
はあ、とりあえず謎の一つは解決した。足取り軽く、バギーを押しながら幼稚園へと向かう。
園に着くと、ママ連が一斉にこちらをみた。
「まどかちゃん、おはよう」知らない人たちから、次から次へと声をかけられる。
「おはようございます」「今日は、パパなのね」「おはよう、ママはどうしたの?」視線が集まるのが、非常に心地よくない。
「ママ、おでかけしちゃったの、おとまりなの」まどかがあどけない口調でそう答えるのが、とても気になるらしく、質問は止まることがない。
「えっ、どこに?」「いつまで?」こんなことなら、説明のいっさいを紙に書いて貼っておけばよかった。
椎名家のダンナがこうして現れるのがよくよく珍しいらしく、ママ連の品定め的な視線が痛いほどだった。
「イモジャーのオヤジ」と思ってるんだろうな。いいんだよ別に。こないだのパーティー用スーツ姿を見せてやりたかったよ、キミらに。借り物だったけど。




