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テイシュ言い訳三昧

「えっ」貴重な冬休み五日間が始まったばかり。

「こないだの、まどかの誕生日のコト……」わっ、と冷や汗が背中を伝った。

 やっぱり根にもってる……ケーキを頼まれたのに、買って帰れなかった件。

 しかも元々は非番だったのに、急に呼びだされて仕事をムチャ振りされたのだ。

 おかげでかなり、心身ともに酷い目に遭ってしまった。

 帰ってこられただけでも神に感謝すべきなのに。

 まあ、その辺のくわしい事情は妻には伝えていない。

 とにかく、シゴトのことはあまり話したくなかった。


 今までも「どんな仕事なの?」と聞かれるたびに「あんなんやこんなん」とかテキトーに答えていたのだ。とにかく心配をかけたくなかった。

「だからあの時はシゴトで……」

 まさかあのシゴトで香港の悪党たちに捕まって殺されそうになったとは口が裂けても言えない。

「背中に口紅つけてさ」

 そんなこともあった。事務所に着いてからシャワーを借りてよく洗ったつもりだったのに、途中で助けてもらったミーナというSMクラブの女王様に、傷を装って描いてもらった線が一部消えのこっていたのだ。

「だからあれもシゴトで」

「面白いお仕事よねえ、ワタシもやりたいくらいだわ」

 由利香の声は地を這うように低い。やばいくらいの怒りモードに突入している。


 本当は、口紅が原因ではない、ケーキのことですらない(ケーキはすでにあきらめていたらしい)。

 わき腹の打撲傷がおもったより派手だったのが、一番の原因だった。

「骨が折れてなかったのがキセキだって、言われたでしょ?」

「蹴った方が上手だったんだ」つい、口を滑らせる。

「え? 梯子から落ちたんじゃあないの?」しまった、と思った時には由利香は固まっていた。

「蹴られたの?」

「いや、もののはずみで」

「はずみで何回も?」

「いや……だから違うって」何が違う。はよ言い訳するんだオレ。

「牧場で……牛の群れの中に落ちたんだよ、梯子乗ってて」

……ベリー苦し過ぎる言い逃れだ。

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