泣けてきた
「サンちゃん?」聞きなれた声がのんびりと響く。
「ハルさん?」泣けてきた。オレまで泣いたら親子四人泣きだ。
「何してんだよ、休みなのに」少し言葉を切って
「ずいぶんとにぎやかだねえ」呑気なことを言ってる。
「今度は、何やらかしちゃったワケ?」
「弁当買ってたらさ……またゆっくり話す」
「オクサンは? いないの?」イヤな所を直球で聞いてくる。
「ちょっとね……まあそれも休み明けにゆっくり」
「ははぁん?」こういう所は妙に察しのいいオッサン、怪しげな相槌をうった。
警官が差し出す手に電話を返す。シノザキ巡査はハルさんと何ごとか話をしていたが、ようやく「はい、はい了解しました」と電話を切って、改めてこちらに向き直った。
「すみません……アオキさん、ということで」もう一人の方をみて
「身元は保証されたから、帰っていただいて大丈夫」そう言ってくれた。
「路上駐車は、やめてくださいね」もう一人は、警察らしくそう彼に告げる。
「それと、お子さんだけ車に残して離れないように」
「はあ、すみません」一応謝った。しかし、コイツら三人、どうやって一緒に外に出せばいいのだ?
ようやく家に帰ることができた。
カーポートに車を収め、後ろを振り返ると、二人とも泣き疲れて眠っていた。
まどかは指をしゃぶったまま、じっと前を見つめている。
「着いたよ」声をかけたが、何の返事もない。
「まどか」何度か呼んだら、ようやく涙目のままこちらを見た。
「ママに、あいたくなっちゃった」
「オレもだよ」大きくため息をついて、車から降りた。