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九話・彼/彼女の手紙(上)

 デスクチェアに腰掛け、タコヤキを膝に抱きながら、手にした一通の封筒をもてあそぶ。

 吉村くんは、さっき真由に体当たりされて派手にアスファルトを転がり、肘やら腕やらを子供のように怪我してしまった。我に返った真由はてんやわんやで、もはやその場では収拾がつかなかった。とりあえずあたしらは吉村くんの部屋に入ることにした。

 部屋は、あたしが数週間ちょっと目を離した隙に半ゴミ屋敷となっていた。あくまで半だ。どうにか文化的に生活していける範疇である。

 そんな雑然極まりない部屋から救急箱を見つけだすと、真由は押し倒すように吉村くんをソファに座らせ、応急処置を開始した。「大丈夫、大丈夫だから。もう乱暴しないでくれ」という彼の悲痛な叫びは耳に入らないようだった。

 応急処置が終わると、真由にチェリオのアイスを食べさせて落ち着かせた。それでやっと吉村くんは一息つき、真由の隣に深く腰を沈めたのだった。

「まったく……」

 あたしは封筒のふちをなぞりながら、騒ぎが落ち着いたことを横目に確認する。疲れた顔の吉村くんと涙目でアイスを食べる真由のツーショットは、なかなか味があって妙だった。

「お似合いじゃん。付き合えば?」

「誰と誰が?」

 冗談の通じない空気だった。チェアを回転させ、封筒をちらつかせる。

「で、これが岡本さんの手紙ってことで間違いない?」

「そうだね。猫と一緒に渡してきた。僕はまだ読んでいないけれど、多分岡本さんが書いたもので間違いない」

「猫じゃなくて、タコヤキだよ」真由が口をとんがらせる。「タコヤキ、おいで」

 タコヤキはあたしの膝から飛び降り、のっそりとした動きで真由の膝に上っていく。甘やかされた猫なのだろう、よくよく見ると、なるほど体型もたこ焼きだ。

 封筒には宛名すら書いていない。口を開けてみると、中には便せんが十枚ほど。普通だったら、すぐ読むという気になれない文量だったが、状況が違う。

「どうやら、便せんだけじゃないみたいだよ」

 それについてはあたしも、今しがた手のひらに感じたばかりだった。硬質な手触りと重みが封筒に内在している。便せんを取り出してデスクに置き、中身をひっくり返してみる。そこから滑り落ちたものが、あたしの手のひらに落ちた。

 二対のペンダントだった。高額そうには見えないが、ペアペンダントらしく小洒落た長方形のデザインだ。見覚えがないわけがない。

「咲子さん、それなあに?」

 真由の疑問には答えず、あたしは吉村くんへと視線を送った。吉村くんは肩をすくめた。

「僕には何のことだかさっぱり」

 そうだろうな、と思う。今回は吉村くんでさえ仲間はずれだし。

 吉村くんが事務的に、「いま読んじゃいなよ」という仕草をして、真由に向き直った。

「さて。咲子さん、今は一人になりたいみたいだから、終わるまで僕らはゲームでもしてようか。別の部屋で」

「えー、やだあ。吉村くんはヘンタイだって咲子さん言ってたもん。こわぁい」真由はもう通常運転だ。

 まあまあ、と吉村くんは言って、二人と一匹は隣の和室へと下がっていった。あたしはチェアを元の位置まで回転させ、デスク上にペンダントを並べて置き、ポケットからいちごみるく飴を出した。

 飴を舐めながら、便せんを手に取った。


 ◆


『日野さん、吉村くんへ。

 突然のお手紙をお許しください。

 親でも親戚でも友人でもなく、まず第一に君たち二人へ手紙を宛てようと思ったのは、君たちの奥深い魅力につよく動かされたからでした。

 一見して、君たちは意趣返しや磁力のSN極のように対立しあうように見えるが、底の深いところ、芯の部分だけは面白いように惹かれあっているように見えました。人と人の間においてこの芯というのが曲者で、時として血の繋がりや恋人同士、友人関係といった表面的な繋がりでさえ易々と超越してしまう、一種のシンパサイザー的存在を生み出してしまうことがあります。

 もしかしたら君たちにとっては不本意なことかもしれないけれど、僕は二人の間にそういう共鳴を感じたし、また、僕や静香にも通じるものがあるのだろうと確信したのです。

 ですので、君たち二人のためだけに、僕はこの手紙を綴ろうと思います。

 なお、この手紙がどうか君たち以外の人間の手に渡らぬよう、勝手と非常識を承知の上で嘆願させていただきます。


 そうは言っても僕は普段、大学の講義でノートを取る以外まともに文章を書く習慣がないので、僕の置かれた現状、それに付随する経緯や心情について、その全てをうまく伝えるためにはいささか筆力が追いつかないかもしれない。しかし、できる限りの努力はしたいと思う。そのため、ここから先は僕なりにやや砕けた文体で綴らせていただきたい。その点はどうかご了承を。

 丘本静香の死と僕の素性については、テレビや新聞を通じて君たちも既知のことかと思う。たしかに僕は静香を殺したし、そして僕はこれまで男性を装ってきた。報道されている内容もおおよそ事実だ。彼らがあれこれと並べ立てる解釈の数々にいちいち訂正を入れるつもりもない。また、そうした主張をする権利が僕にないことも充分わかっている。

 それより大事なことを伝えておきたい。というか、君たちに一番知ってほしいのは、僕と静香がこういう結末を選ぶに至った、そのプロセスだと思うから。



 まず僕個人の話になるが、いや、思い出すのも楽じゃない。思えば色々あったけれど、最も古い記憶を探ると、僕は初恋の時点からずれていた。

 小学校三年生の頃。相手は、集団登下校で一番前を歩くお姉さんだった。僕がこれまで好きになった相手というのは、そのほとんどが年上だった。それも同性の。

 とはいえ、その六年生のお姉さんへの恋心もひどく曖昧なもので、好きになること自体がなんだかマズい気がして、なんとなくその気持ちは隠しておくことにした。

 当時の僕は、クラスで『女子』にカテゴライズされることを不思議に思っていた。髪を短くしていたし、小学生時代を通してスカートを履いた経験は、多分ない。遊び相手はいつも男の子で、川魚を釣ったり野球をしたりなどしていた。女子のグループに混ざって遊んだという経験は全くなかった。男女混同の遊び、たとえば陣取りゲームでは、男子が攻め、女子が守りの位置に立つのが不文律だったが、僕はその流れで自然に――実際は『女子』でありながら――攻めの方を任された。

 その頃から僕は、緩やかな混乱の中にいた。小学生は性差に左右されないことが多いのに、あるとき、思い出したように性別の区分けを押しつけられる。「そうか、僕は女だったのか」という、実感のない現実を飲み込まされる。運動会のフォークダンス、水泳の着替え、そして、保健体育の授業。

 その保健の授業で生理について知らされたときは衝撃だった。さらに衝撃だったのは、実際に初潮が訪れたときだった。小学校卒業目前のときだったかな。数年後に地球が滅亡しますと言われて、本当に滅んでしまうような心境だ。

 母は勝ち誇ったような顔で、僕の頭を撫でた。

「これからはもっと、女の子らしくしなきゃね」

 四月から中学校に通えば、もちろんそこで制服のスカートを着ることになる。それに合わせて心の方も女の子らしくならなければいけない、母はそう言った。

 まるで現実味がなかった。なにかの冗談としか思えない。君たちも想像してほしい。例えば、「これからはもっと日本人らしく、毎日着物を着て生活しなさい」と言われたらどうする? まるで現実的ではない、それはなんの冗談だ、となるよね。人格を偽り、誰かに媚びを売って生きていけと言うようなものだ。たしかに僕は日本人かもしれないが、それ以前に僕は僕だ、と思うだろう。大げさかもしれないけれど、僕にとってはそういうものだった。

 それでも我慢するしかない。義務教育を前にして、僕の矮小な反発が通るとは到底思えない。反発できるほどの思考力も語彙もないのだから。耐えるしかなかった。

 小学生までの僕は、知識としては理解しつつも、いつか自分にもペニスが生えてくるものだと暗示的に思い込んでいた。今はお腹の中に引っ込んでいるだけなのだと。

 それまで僕は地区の少年剣道部に所属し、竹刀を振りながら、やり過ぎだというくらいに声を出して喉をがらがらにしていた。いかに男の子っぽい声を出せるか、躍起になっていたんだ。子供なりにトレーニングをして体を鍛え、雑誌に掲載される上半身裸の男性モデルのような体型を目指した。あるときは立ち小便の練習をしたり(汚い話で申し訳ない)、鏡の前でジャッキー・チェンのまねごとをしたりなどして、一人悦に浸っていた。

 客観的に、いや誰がどう見ても、僕はそんな痛々しい女子小学生だった。

 中学校へは、行ったり行かなかったりだった。いじめられ出したのと、一層強まる「女の子らしさ」の強要に、息が詰まったからだった。

 中学生にもなると、僕ほどじゃなかったにしろ、みんな性について敏感になっていく。そんな中、僕ひとりが異性の振りをすると当然顰蹙を買うだろう。気味悪がられるし、前述どおり、軽いいじめも受けた。女の子全員から無視されたり、僕のことを面白がる男子から体を触られたり。それなりに酷いものだったけど、より辛かったのはいじめそのもじゃなく、環境がもたらす「性別の区分け」に他ならなかった。



 ある種の転機が訪れたのは高校一年の終わり頃。そのころになると僕はすっかり擬態に慣れていた。僕の人生において、髪がもっとも長い時期だった。

 積極的に女の子の友達を作り、ファッション雑誌を読みあさり、化粧を少々嗜む程度のことはした。こう書くとごくごく一般的な女子高校生のように思えるが、僕にとっては吐き気すらこみ上げてくる行為だった。

 以前、大学の飲み会の余興で無理矢理女装を強要された可哀想な一年生がいたが、僕は不快感しか覚えなかった。しかも彼とは違い、当時の僕は年中無休、いっときも休まず女を演じ続けたわけだから、学生でありながらまるで肉体労働でもしているような気分だった。

 「心の性」と「体の性」の区別すら出来ないまま、あるいは根幹にある小学生の頃の憧れを引きずったまま、それこそ全身スーツでも身にまとうみたいに、女の子を着て生活する。僕は正常じゃなかった。無理を押して継続した結果、少しずつ、歯止めが利かなくなっていった。

 中学校三年生のときに付き合いはじめたボーイフレンドを片手に持て余しにながら、また下品な話になるけれど、その間、何人もの男性と寝た。同級生、後輩、年上の高校生や、ときに教師をひっかけたり。

 好きという感情もなく、彼らに異性としての愛情や欲情を抱くわけでもなく。ただ、脳の表面だけで本能的に彼らの肉体を求めた。二、三度痴漢に合ったこともあったけど、おかしな話、ちょっと嬉しくもあった。僕は女になれたんだってね。

 歯止めが利かないというのはこういうことで、僕は「女らしさ」を求めるあまり半ばやけになって、下衆な俗物になり果てた。

 そして高校一年の終わり、付き合っていたボーイフレンドから別れを告げられた。どうして振られてしまったのか、今でもよく分からない。浮気がばれた風でもなかったし、僕はそれまでずっと、必死に「女の子」を演じ続け、実際モテてさえいたわけだから。だけど唐突、別れを宣告された。

 それがきっかけだった。家に帰ったとき、今まで我慢していた吐き気が急にこみ上げてきて、僕はトイレに駆け込んだ。何十分か吐いて、水道水を飲み、また吐いて、その繰り返しで一時間以上。時期じゃないのに、子宮が悲鳴を上げるようにうずいていた。

 夢から現実に引き戻されたようだった。頭の裏側に次々と飛び込んでくる。今まで寝た男たちの顔だ。うずいた子宮は生々しい感覚となって異物の挿入を思い出していた。今まで寝た男たちの、体の一部だった。

 僕はここで、ようやく自分の勘違いに気づいた。自分は女になり、やっと「自分らしさ」を見つけたんだと思っていたが、本当はそうじゃなかったのだ。

 僕は、「自分らしさ」から一番遠いところにいたんだ。

 その日の夜、僕は両親に泣きついた。小学生以来、久しぶりに「男になりたい」と泣いて叫んだ。ちょっと頭がおかしくなっていたみたいで、いつの間にか、ハサミで自分の髪をめちゃくちゃに切り詰めていた。僕がそれに気づいたのは、泣き止んでずいぶん経ってからだったけど。



 一年近く休学し、精神科と自宅を往復する毎日が始まった。僕は一言も口が利けなくなり、いろんな症状に悩ませされた。円形脱毛症や十二指腸潰瘍、蕁麻疹や多汗症などといった、ストレスによる身体症状。

 病院へ行く以外、滅多に外には出ず、部屋に引きこもってばかりだった。僕は、他人の顔、そして視線が恐かった。ボーイフレンドに振られてからというもの、僕はずっと男物の服を着て、髪を短くしていた。小学生のときのように。

 だけど、僕の体はもう女のものだった。声は成熟した女性のそれに近づき、胸は隠しがたいほどに膨らんでしまった。

 病院まで向かう電車内は苦痛でしかなかった。いちおう男物の服を何枚も着重ね、胸を隠し、一見して女には見えないほどの短髪をしている。帽子も毎日被った。顔だってそうだ。僕はもともと男性寄りの顔立ちだったから。

 だが、自分は本当に男に見えているだろうか。男装がばれてはいないか。本当はばれていて、みんな心の中でせせら笑っているんじゃないか。そういう被害妄想が頭から離れない。

 自信や自我というものは完全に折れていた。男物の服は水を吸ったように重く、また、女としてのスパンが長かったためか、自分にはひどく着ぐるみ的に感じられた。他人と目を合わせず、必死に顔を隠すように生きるしかなかった。

 今の自分はどこにいる?

 そんなことばかり考えていた。体はともかく、心の話で。中学から今まで女に成りきり過ぎたために、そのときの僕は、「自分らしさ」をどこにも置くことが出来なかった。

 当時はそれどころじゃなかったけど、今思うと、そのときの親の顔ったらない。僕のせいで父は気を使い、極力顔を伏せ、なるべく僕に関わらないようにしていた(男性へのコンプレックスが最も強い時期だったからだと思う)。一方の母は、今まで自分が「女の子」を押しつけてきたことに自己嫌悪した。

 僕が中々学校に行けないものだから、やがて転校を余儀なくされた。むろん普通の共学校じゃない。私服登校が認められる、隣県の私立高校だ。

 男性の格好が出来ることに開放感があって、少しずつではあるが、精神面も回復してきた。友達は一人も出来なかったし、相変わらず人の顔を見ることすらままならなかったけれど、僕はもう構わなかった。他人の顔など、もう見なければいいのだ。

 高校生活も終わりを迎えると、ある程度落ち着いた僕は、改めて両親と向き合い、真剣に話し合ってみた。「男になりたい」と。今度こそ、まともに順序立てて意志を主張した。

 母は何か憑き物が取れたみたいに、それでも涙をこらえながら、こう言った。

「世間はこういうことに寛容じゃないけど、それでも、絶対後悔しないって言える?」

 父は何も言わず、ずっと顔を伏せていた。僕も同じように顔を伏せ、幾分小さくうなずくと、父もやはり同じようにうつむいたまま、声もなく泣いた。

 ――今こそ僕は、こうしてなんでもないような顔をして生きているけれど、過去をさかのぼってみるとなんとも滑稽で不完全だ。でも、事実がそうなんだよ。情けないけれど、これが僕なんだ。

 話を戻そう。男になりたいというものの、具体的にどうするのかという問題に突き当たった。やはり僕らだけの力じゃどうにもならないから、必然、医学を頼ることになる。精神科で性同一性障害の診断書を貰い、ホルモン療法を始めた。

 一度目の注射はなんともなかったが、二度目、三度目と続けていくうちに、徐々に変化が見られた。変声期に入り、ホルモン摂取のたびに声が低くなる。胸も小さくなっていく。四、五本目の注射で、生理は途絶えた。それが僕と、「女らしさ」が切り離された瞬間だった。「女性化」という、受け入れ難い過程を一日ずつ巻き戻していくように。出来上がったばかりのセーターを、一糸ずつほどいていくかのように。

 一番実感としてうれしかったのが、口元やあごに生えてくるひげだった。普通の十代後半に比べればとても薄く、一見して生えているかどうかも分からない程度だったけどね。このまま伸ばしっぱなしにしてもいいと思ったが、もうひとつ、僕はひげ剃りにも憧れていた。五日に一度のひげ剃りは、僕の生き甲斐となった。


 

 親元を離れ、上京して大学に入ってからも、月に二度のホルモン療法を続けた。もちろん、高校生まで持っていた数少ない女物の衣服は、一着たりともこちらには持ってこなかった。新しい自分として生きていくためだ。

 上京した理由もそういうことだった。僕が女だと知る人は一人もいない。学籍は女で登録されているが、大学はもっと自由で、匿名性には事欠かなかった。僕が男である限り、うまく擬態し続けられる限り、大抵の人間は僕を男性だと信じて疑わなかった。

 そういえば、近頃ふと気づいたことがある。

 電車に乗っていると、少し心が軽くなっているんだ。

 いつからか、僕は人の顔をよく観察するようになっていた。人から目を逸らし続けた僕にとって、それはとてつもなく大きな変化だった。不思議なのもので、体の変化は直結して心にまで影響していくみたいだ。

 今までのことが嘘みたいに僕は人の顔が好きになり、その精巧さに深い造詣を持つようになった。顔に関した専門書を買い集め、電車に乗っては他人を観察し、あの人はああだ、この人はこうだという具合に、趣味や娯楽として人の顔を楽しむようになった。反動ってやつなのかな、何にしても不思議なことだ。

 ――ねえ、日野さん、吉村くん。ここまで書いてやっと気づいたんだけど、君たちに一つ、謝り忘れたことがあったね。どうやら僕は、君たちを騙していたことになるらしい。僕は直接口にして自分を男だと名乗った覚えはないが、『岡本清』という偽名を使ったことには違いない。これじゃ騙していたのと同じだ。大変遅れてしまったけど、嘘を吐いてごめんなさい。

 こうして謝った上で弁解したいのだけど、僕は決して騙すつもりで性別を偽ったわけじゃない。僕は日常において常に嘘と共存していて、もはやその嘘に慣れてしまっている。嘘を嘘だと思わないし、意識しなければ自分でも気付かない。自分が男だということを疑わない。そんな歪んだ心身状態にあるんだ。

 さっき、高校時代の話で、『全身スーツでも纏うように女の子を着て生活した』と表現したけど、変な話だよね。女の子を着るもなにも、実際僕は女なわけだから。異性を着て生活しているのは、今の僕なんだろう。



 さて、ここまで長くなってしまったけど、重要なのはここからだ。

 第一の転機が初潮で、第二の転機がボーイフレンドに振られたことだとしたら、第三は丘本静香との出会いになるだろう。

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