ジャンクフード
とある金曜の夜だった。
僕は仕事が終わりそのまま彼女のアパートへ来た。
いつぶりだろうか、ここに来るのは。
ピンポーン、ガチャ
「あら、久しぶり、、ね。」
「久しぶり。」
「急に呼び出してごめんね。」
「大丈夫、ちょうど君が元気かな?って気になってたところだし。」
「そ、そうなんだ。。。」
「うん。。。そ、それじゃあ行こうか?」
「そうね、行きましょう。」
僕は彼女を車に乗せ、そのまま高速道路を飛ばした。
車の中ではお互いなんの会話もなかった。
車の中には沈黙だけが流れる。
久しぶりにみた彼女の瞳は、どこか寂しそうだった。
しばらく走って、サービスエリアに着いた。
そのサービスエリアの中にあるハンバーガー屋は
僕たちがまだ仲良かった頃、大好きだったお店だった。
「てりやきバーガー1つに、サラダバーガー1つ、それとポテトを2つと、コーラを2つください。」
注文を終え、席に着いたが彼女はまだ黙ったままだった。
「お待たせしました!」
「ありがとうございます。」
「さあ、食べようよ。」
「そうね。」
彼女はようやく口を開いた。
「あなたは何をやっていたの?半年くらい会ってなかったけど。」
「特に変わってないよ、ただ普通に仕事に明け暮れる毎日だよ。」
「そう。」
「そういう君は何してたの?」
「君って呼ばないで。」
「え?」
「名前があるんだから、名前で呼んで。」
「す、すまない、それでケイコは何してたの?」
「私も変わらないわよ、ただ仕事して、休日は映画見たりしてるだけよ。」
「そうか、お互い変わらないんだな。」
「変わらないって?」
「僕は少なからず、寂しかったよ。ケイコを失って、今まであった温もりがなくなったし、ケイコがいない部屋はとても寂しかったよ。」
「そうなの、、まぁ、私もあなたがいないと寂しかったわよ。」
「でもその寂しさは、たいしたことないんだって僕は思ったよ。」
「たいしたことない、?なんでそう思うの?」
「だって、もし仮に僕たちの愛が、本物の愛だとしたら、僕たちは離れた瞬間、居ても立っても居られない気持ちになっていたと思うよ。」
「そう、、ね?」
「離れて、ただ少し寂しかっただけじゃ、僕たちの愛はあまり意味がないものなのかもしれないね。」
「そうね、、私もこのまま連絡も取らずに、この関係を終わらせようとしたかったわよ。」
「でも、なぜまた僕を呼び出したの?」
「それは、、あなたに会いたかったからよ。」
「なるほど、つまり君はもういらなかった僕を求めたってわけだね?」
「そういうことよ」
「もし愛が消えるなら、お互いを求めようなんて思わないはずなんだ。そりゃそうさ、愛が消えるんだもの。お互いが求め合ったら、愛は消えるどころか、また増えちゃうだろ?」
「深いわね、そうね、いらなかったはずだもんね。」
「でも嬉しいよ。」
「え?」
「僕をこうやって求めてくれて嬉しいよ。僕は、いや、人間ってのはな、誰かに必要とされているとき、すごく生きてて楽しいって思えるんだから。」
「そうなの、、そういうあなたは私のこと、いらなかったの?」
「いや、必要だよ。」
「じゃあ、なんで半年も連絡しなかったの?」
「この愛が偽物の愛かどうか、確かめていたんだ。もし半年後、ケイコから連絡がなかったら、この愛は消えた、偽物だ、そこまでだったんだ。だけどケイコは半年経つ少し前に連絡してくれた。僕をまた必要としてくれていた、この愛は本物かもしれないと思った。」
「なんで、そんな本物だってわかるのよ?」
「だって、既に消えた愛なんて、もう誰も必要としないだろう?人々はみな「今」愛を求めて生きているんだから。」
「あんたってほんと、深いわね。でも間違っていないかもね。」
「僕は愛は永遠に続くと思ってる。もし5年間付き合って振られたら、それはそこまでの愛ってことさ。もし本物の愛なら、お互いが80代になっても、死んでも愛は続くさ。きっと。」
「つまり何がいいたいのよ?」
「僕はこの愛は永遠だと思っているよ。ケイコと出会ったときから、ずっと。」
「そ、そんなのわからないじゃない。」
「わからないよ。愛が永遠だとわからないからこそ、恋愛は楽しいんじゃないか」
「そうなの?」
「そうさ、愛が必ず続くものなら、人々は逆に恋愛はしないさ、終わりがあるかもしれないからこそ、恋愛は楽しいんだよ。」
「そうね、、。」
「うん、、、。ポテト冷めちゃうよ。食べよう。」
「あら、話に夢中になっていたわ。」
こうして久しぶりに僕たちは話した。
「さぁ、久しぶりに行くかい?」
「うん、行きましょ。」
また俺は高速を飛ばした。
彼女は話し疲れたのか眠ってしまった。
車内には彼女の寝息だけが響いた。
車を走らせて1時間くらいが経ち、着いた。
「着いたよ、ケイコ」
「綺麗ねぇ、夜の海も。」
僕たちは、半年ぶりに海を見に行った。
都会のビルの灯りが水面に反射している。
波の音は優しく時に流される。
「ねぇ、あなた」
「どした?」
「私、また、あなたとやり直したい。」
「いいよ、でもあなたじゃないだろ?そろそろ僕のことも名前で呼んでくれよ。」
「わかったわよ、ケンジ」
その海は僕が人生で見た海の中で1番美しかった。
日記はここで終わっている。
僕たちの愛は永遠だった。
先日、妻が88で亡くなった。
だけど若かった僕はちゃんと妻にあの時言っている。
「愛は死んだ後も永遠に続く」ってね。
誰かひとりを死ぬほど愛してみるのも、人生にとって、いいかもしれません。
-END-




