第14章:風と火の舞踏
顔を上げると、カリシアの目と合った。彼女は中庭の中央で、こちらをじっと見つめていた。その表情は、血の気が引くほど冷たいものだった。
まさか、本当に心が読めるんじゃ…?
ああ、ダメだ!やばいぞ!
姉さん、違うんだ、誤解だ、許してくれ…!
——「何ジロジロ見てんだよ、バーカ」
彼女はそう言って、片方の眉をひそめた。
はぁ…びっくりした。一瞬、本当に心を読まれたかと思った。怖かった、本当に。
すぐに言い訳を考えた。
——「それは…」
ごくりと唾を飲み込む。
——「今日の姉さん、すごく綺麗だなって思って」
信じてくれるといいけど。でも、考えてみれば嘘じゃない。彼女は綺麗だ、昔からずっと。
その言葉の効果はすぐに現れた。彼女の頬が、炭のように真っ赤に染まった。
——「な、なにバカなこと言ってんだよ!」どもりながら、明らかに慌てた様子で——「わ、私はずっと綺麗だったし!」
——「うん、知ってるよ」
僕は微笑んだ。
——「でも、今日は特に」
——「だからって…」
彼女はうつむき、服の端をいじりながら——「あ、ありがと…」
思わず声が出た。透き通った笑い声が、銀の鈴を鳴らすように唇からこぼれ落ちた。それは伝染する笑い声で、僕の頬を熱くし、目をいたずらっぽく輝かせた。
隣では、リリアが手で口を覆って必死に笑いをこらえていたが、震える肩がそれを物語っていた。
——「な、なに笑ってんだ、リリア!」
姉さんのその憤慨した口調がおかしくて、僕はもっと大笑いした。
——「おい、アイト」
カリシアが僕に向き直る。
——「お前も笑ってるだろ!」
——「許してよ、姉さん」
僕は笑いながらどうにか言った。
——「でも、姉さんがそんな風に可愛いからさ」
——「そ、そんなこと言うな、アイト!」
彼女は叫んだが、その声には怒気がこもっていなかった。むしろ…わからない。恥ずかしそう?嬉しそう?両方?
こうして、笑いと幸せの涙の中で、僕たちはゼキン老師を待っていた。太陽はすでに中庭全体を照らし、近くの庭の花々は香りを漂わせ、僕は人生で最も大切な二人(家族以外で)に囲まれて、この世でこれ以上ない場所にいるように感じた。
いや、そうでもないか。きっと世界中にたくさんの知りたい場所がある。でもこの瞬間、まさに今、ここが最高の場所だった。
——「何をそんなに笑っとるんじゃ」
ゼキンの低い声が中庭に響き、三人の頭が同時に向いた。
老師は入り口からこちらを見ていた。手には訓練用の剣を持ち、厳しい表情を作ろうとしているが、わずかに浮かんだ笑みは完全には隠せていなかった。
——「なんでもないです、おじいちゃん」
まだ笑いで目を輝かせているリリアが言った。
——「子供たちのことです」
ゼキンは鼻を鳴らしたが、それ以上何も言わなかった。彼は中庭の中央に向かい、そこではカリシアがすでにストレッチを再開しており、セッションの準備を始めた。
——「今日は」
彼は宣言した。
——「連携を鍛える。アイトとカリシア、お前たち二人で俺を相手にしろ。リリアは見学したいなら、そこで見ていろ」
リリアはうなずき、自分の石に座って観戦の準備を整えた。
僕は立ち上がり、装備を置いている中庭の端に向かった。慣れた動きで、ほとんど機械的に防具を身につけ始めた。長年の練習の賜物だ。
黒い長袖の薄手のTシャツを着ている。快適で柔軟性があり、自由に動ける。その上に、腹部までの胴体だけを守る軽量の銀の防具。腕も肩も覆わない。この防具をTシャツに例えるなら、半袖にも満たない、袖なしのベストのようなものだ。
前腕には、同じく軽量の銀のプロテクターをつけている。騎士が使うものはもっと重いのかもしれないが、これはまるで第二の皮膚のようだ。戦闘中にずれないようにしっかりと調整する。
ズボンはTシャツと同じく黒くてタイトなもので、左脚の太ももには小さなポーチが付いたハーネスがついている。老師は道具などを入れるためのものだと言っていたが、まだ何にも使っていない。でも、念のためつけている。
腰まで届く黒い髪は、ゴムで高い位置で一つにまとめた。ポニーテール、あるいは尾を持つどんな動物の尾のようにも見え、歩くたびに揺れる。
木刀を手に取る。重さは慣れ親しんだものだ。手に持ち、バランスを感じ、その手触りを確かめる。数え切れないほどの時間をこの剣と共に過ごし、今では自分の一部となっている。
中庭の中央へ向かう。そこにはカリシアがすでに待っていた。彼女の防具は僕と似ているが、縁に赤みがかった色合いがあり、まるで炎そのものが口づけしたかのようだ。彼女の髪もまとめられ、決意に満ちた顔立ちを際立たせている。
——「準備はいい?」
彼女は獰猛な笑みを浮かべて尋ねた。
——「いつでも」
僕も笑みを返した。
ゼキンは向こう側から僕たちを見ていた。相変わらず堂々として、いつものように。木刀を肩に乗せ、その目には期待の光が宿っていた。
——「始め」
そして、世界が動き出した。
---
カリシアが先に飛び出した。
彼女の剣は瞬時に炎を纏い、炎はまるで生きているかのように強化された木材の周りで踊った。彼女は驚異的な速さで移動し、足は地面をかすめるだけで、熱と光の軌跡を残した。
彼女は老師の前に到達し、大きく弧を描いて剣を振るった。ゼキンは防いだが、カリシアはすでに回転し、軌道を変えて別の角度から再び攻撃する。
カキン、カキン、カキン、カキン
打撃は次々と続き、心拍のように速い。老師はそれぞれの攻撃をミリ単位の正確さで防ぐが、カリシアは止まらない。何度も何度も、彼女の炎の剣は隙間、開口部、ゼキンの防御の弱点を探す。
それは空中に描かれた振り付けだった。狂気の、危険で、美しい舞踏。炎は螺旋と円を描き、ゆっくりと消えていく赤い軌跡を残す。
だが、僕は見ているだけではいられない。僕の番だ。
僕は動いた。
風が僕を包み、前へと押し出す。僕の属性だけが与えうる速度で。左側面に回り込み、カリシアが右から攻撃するちょうどその瞬間、老師の死角を狙った。
風を帯びた僕の剣は、流れるような弧を描いて動く。
ゼキンはありえないほどの周辺視野で、一つの動きでカリシアの攻撃をそらし、別の動きで僕の攻撃を防いだ。
バキッ!
衝撃が腕に響く。今回は今までの対戦よりもずっと強い力で老師が打ち込んできた。ずっと強く。振動は全身の筋肉、骨、繊維の隅々まで駆け巡った。
しかし、剣は放さなかった。
この二年間で腕は強くなった。痛みに慣れた手は、鋼の決意で柄を握りしめた。
——「よし!」
叫んだ。痛みからではない。興奮からだ。純粋で、絶対的な興奮から。
そして、打ち合いが始まった。
カキン、カキン、カキン、カキン、カキン
打撃、防御、反撃、回避。衝撃のたびに腕は震えたが、僕は笑っていた。なぜなら、僕たちは踊っていたからだ。三人で。一つの動きが言葉であり、一つの打撃が文であり、一つの防御が応答である、致命的な舞踏を。
ゼキンが斬りかかろうとしているのがわかった。彼の目に、剣の動きに見えた。ギリギリで後退し、何百回も練習した動きで、手をついて後方に宙返りした。ついさっきまで僕の頭があった場所を、空気が切る音がした。
しゃがんだ状態で着地し、息を切らしながらカリシアを見た。
彼女も僕を見た。
言葉は必要なかった。必要ない。何年も共に訓練し、数え切れないほどの時間を練習と戦いに費やしてきた後、僕たちは視線だけで意思疎通ができるほどよく知り合っていた。
同時にうなずいた。
そして飛び出した。
——「うおおおおっ!」
二人の声が一つになり、一つの戦いの咆哮となった。
【 降り注ぐ旋風 】
風を纏った剣が、僕が跳躍する間に回転を始め、激しく空気を切り裂く渦を周囲に作り出す。
【 地獄の一撃 】
カリシアの剣は、周囲の空気が熱で歪むほど激しい炎を帯びる。彼女が何ヶ月も秘密裏に磨き上げてきた、最強の技だ。
(地獄の一撃?マジか、姉さん…)落ちながら考える。(まあいいか、お前の技だし…俺も巻き込むなよ?)
だが、彼女を信頼している。彼女も僕を信頼している。
二人の攻撃は、完璧に同期して、反対の角度から老師に収束する。相容れないはずの火と風が、致命的な振り付けで共に踊る。
ゼキンは迫る二人を見た。
そして、彼の剣が自身の魔力を纏った。
かつて見たことのない輝きだった。今まで知っているものとは全く違う。より濃密で、より深く、より…古い。
彼はわずかに膝を曲げ、かつて見せたことのない構えをとった。
そして、防ぐ代わりに…
攻撃した。
ドォーン!
激突の衝撃はあまりに凄まじく、足元の地面がひび割れた。破片が四方八方に飛び散り、小さな石と埃が立ち上り、三人を包む雲となった。
一瞬、すべてが静寂に包まれた。
そして、埃が晴れ始めた。
三人ともそこに立っていた。動かずに。僕の腕は疲労で震えていたが、剣は無事だった。カリシアの剣も。どちらも折れていなかった。
成果だ。小さな、しかし大きな成果だ。
ゼキンはゆっくりと体を起こし、笑みを浮かべた。本物の、心からの笑みが彼の顔に浮かんだ。
——「よくやった、二人とも」
彼は言った。彼の声は、いつもの厳しい口調ではなく、初めて温かかった。誇らしげだった。
——「本当によくやった。誇りに思う」
胸が熱くなるのを感じた。戦いとは違う温かさが僕を包んだ。
(老師…そんなこと言わないでくださいよ)
馬鹿な笑みを浮かべながら思う。
(そんなこと言われたら、もっと好きになっちゃうじゃないですか)
隣のカリシアも微笑んでいた。どんな炎よりも彼女の顔を輝かせる、大きくて心からの笑顔で。
——「本当ですか、老師?」
彼女は感動で震える声で尋ねた。
——「本当だ」
ゼキンは答えた。
——「お前たちの連携は飛躍的に向上した。技はより確実になった。そして最も重要なのは…」
彼は二人を見た。
——「最も重要なのは、お互いを信頼していることだ。それは教えられるものではない。勝ち取るものだ」
リリアは自分の石から、熱心に拍手を送った。
——「ブラボー、アイト!ブラボー、カリシア!」
彼女は叫び、席から飛び降りた。
——「すごかったよ!」
カリシアは彼女に向き直り、一瞬、その表情は…奇妙だった。どう感じればいいのか、よくわからないような。
——「ありがとう、リリア」
彼女は丁寧だが、距離を置いた口調で言った。
リリアは何かに気づいたとしても、それを表に出さなかった。彼女は笑い続け、いつも全てを明るく見せてしまうその笑顔で。
——「休んだほうがいい」
ゼキンが言った。
——「全力を出し切った。水を飲んで、ストレッチして、その後はもう上がっていい。また明日な」
うなずき、中庭の端へ向かう。そこには冷たい水の入った水差しが待っていた。カリシアは石の上に座り、僕も別の石に、遠くない場所に座った。
リリアが近づいてきて、隣に座った。肩が触れ合いそうなほど近くに。
——「はい」
彼女はきれいな布を差し出した。
——「汗を拭いて」
——「ありがとう」
受け取って答えた。
カリシアは自分の石から僕たちを見ていた。その表情は読めなかった。
——「ねえ、アイト」
リリアが小さな声で言った。
——「本当に世界中を旅したいの?」
うなずいた。
——「うん。何よりも」
——「怖くないの?」
——「もちろん怖いよ」
僕は答えた。
——「でも、怖くて止まってられない。怖さに支配されてたら、何もできないから」
リリアはゆっくりとうなずき、僕の言葉を噛みしめていた。
——「私…」
彼女は言いかけて、止まった。
——「何?」
彼女は首を振った。
——「ううん。大したことじゃない」
問いただそうとしたその時、カリシアが石から立ち上がり、こちらに近づいてきた。
——「アイト」
彼女が言った。
——「母さんがあなたに会いたがってる。話したいことがあるんだって」
すぐに立ち上がった。
——「何か悪いこと?」
——「わからない。ただ、あなたを探してきてって」
リリアを見ると、彼女は微笑んでうなずいた。
——「行って」
彼女は言った。
——「私はもう少しおじいちゃんと一緒にいるから」
うなずき、中庭を走り去った。黒いポニーテールを背中で揺らしながら、二人の少女を後にして。彼女たちが、互いを見つめるだけで無言の会話を始めているとも知らずに。




