別荘
山形を連れ去った男たちはワンボックスカーに乗って高速道路を走っていた。ワンボックスカーの中には、鈴木秘書と若い二人の男、そして山形が乗っていた。山形は気を失ったままだった。男二人は鈴木の手下と言っていいだろう。その手下の一人は車を運転し、もう一人が山形を支えていた。鈴木が薬瓶から透明な液体を白いハンカチに含ませ、山形研究員の鼻と口にあてた。強烈な刺激に山形が目覚めた。
「だれだ、お前たちは?」
「やだな、山形さん。私ですよ」
「鈴木さんか……なぜこんなことを?」
鈴木が苦笑いを浮かべながら言った。
「なにか、いろいろおしゃべりになっていませんでしたか?」
「おしゃべり……聞いていたのか?」
「やだな、何かわたしたちがいけないことしているみたいじゃありませんか? プロジェクトDのことは内密なはずですよ。違いましたっけ?」
車の窓から外を見渡しながら山形が言った。
「……どこへ向かっている?」
車はちょうど高速道路を出たところだった。
「山の中……山形さんを埋めに……って冗談ですよ」
鈴木の笑えない冗談に山形は腹が立ったが、もしかしたらと思うとなにも言えなかった。
「社長は知っているのか?」
「もちろんです。今向かっているのも正憲社長の別荘です。と言っても知っているものはほとんどいない秘密の別荘ですけど。そうそう木下さんは早々にその別荘に到着しているはずです」
「木下が……行方不明だったはずが、社長の別荘……」
「別荘と言ったって遊ぶ場所じゃない。地下にはラボ並みの装置がある。ラボの方はいろいろバレ始めているので、その別荘の方に引っ越ししているってわけです」
「なぜ私をその別荘に……」
「さっきみたいに、あれこれ嗅ぎ回る人がいる生命ラボじゃあぶないでしょう? 別荘でもう一度研究に専念していただこうという社長の親心じゃありませんか」
車は山道を右左にぬって行くうち、塀に囲われた建物に着いた。男の一人が車を降り、門にあったインターホンのスイッチを押し、しばらくやりとりしていたが、やがて門が開き、車は中に入っていった。そこには広い庭と木造の建物があった。
「そう言っているまに着いた。さあ、降りてください」
四人は車を降りて、建物の玄関へ向かった。玄関は直線を意識させる現代的なデザインだった。なに一つ置物がないことが返ってデザインを際立たせていた。間接照明も多く、落ち着いた雰囲気になっていた。広めの廊下を曲がり、そのまま進むとエレベーターがあった。鈴木が地下に降りるボタンを押すと、すぐに扉が開いた。帝都セキュリティのマークの下のB2と書かれたボタンを押すとボタンの上にあったパネルが薄暗く光った。鈴木が自分の右手の人差し指をパネルに当てると、エレベーターが降り始めた。エレベーターが到着し、ドアが開くと廊下があった。廊下を進み、一つの部屋のドアを開けると眩しいくらい明るい部屋だった。




