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核心

「え、転院……」

「看護師の話では、柳沢という患者は生年月日も不明、住所も不明ということになっていたようです。転院のとき帝都病院の救急車が使われたようです。その線から探れませんか?」

「心当たりはありませんが、なんとかしてみましょう」

 高木から電話があったとき、肇は自分の執務室にいた。高木からの電話を切った後、肇は帝都病院の酒田に電話をかけた。

「もしもし、内科の酒田先生はいらっしゃいますか?」

「はい、酒田です」

 酒田はすぐに捕まった。

「御手洗肇です。先生におりいってお願いがありまして……」

「御手洗さんですか……なんでしょうお願いとは?」

「帝都病院の附属施設なんですが……」

「付属施設……そう言えば昨日訪問されたようですね。その施設がどうかしましたか?」

 肇が昨日付属施設を訪問したことを酒田がなぜ知っているのか気になったが、かまわず聞いた。

「兄の吟にそっくりな患者さんがいらしたんですが、それが昨日突然転院されたようなんです」

「転院ですか……」

 口ぶりからは酒田は何も知らないようだった。

「転院のとき帝都病院の救急車が使われたようです。その行き先が知りたいのです」

「少し時間をいただけますか? 救急科の知り合いに頼んでみます」

「わかりました。お待ちしています」

 酒田は約束どおり調べてくれ、十分もかからないうちに電話があった。行き先を教えてもらってから肇は高木に連絡した。

「行き先がわかりました。やはり御殿場の研究所の中にある生命ラボのようです」

「生命ラボ……やはりあそこがカギのようですね。どうしますか? 乗り込みますか? 事故があったのが昨年の九月。いまが五月だから八か月ぶりになりますね」

 肇は逡巡した。

「いや、今はやめておきましょう。兄に似たあの人を療養施設でもない生命ラボに転院させてどうするつもりかわかりませんが、命に危険はないでしょう」

「では私は、告発メールを送ってきた山形という研究員に会ってみます。御手洗さんの事故があって、接触するのを控えていたんですが、これだけ材料がそろえばいいでしょう」

 肇も了解した。なにか事件の核心に迫っている感触があった。


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