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追憶

 翌日の朝、肇は自宅にある自分の部屋でPCを前にしていた。PCのディスプレイには週刊「スクープ」のWebで公開されている記事が表示されている。肇の手元には高木の名刺があった。その名刺には編集部の電話番号とは別に手書きで携帯の番号が書いてあった。肇のスマホには、高木の名前とその電話番号が登録してあった。その番号を呼び出してみた。

「はい。高木です」

 すぐに高木がでた。

「御手洗です。御手洗肇です」

 高木側も肇のスマホの番号を登録してあったようで、すぐにわかったようだ。

「あ、御手洗さん。お待ちしていました。思い出していただけましたか?」

「だいぶ思い出しました。高木さんにはいろいろ頼みごとをしていたのに申し訳ありませんでした」

「いや、いいんです。けっこうひどい事故だったようですし、ご無事でなによりです」

 肇は要件を切り出した。

「先のメールでは報告書にまとめていただけるとか? これまでの経緯を思い出し整理するためにその報告書に目を通したいのですが、ファイルをメールで送ってもらえますか?」

「わかりました。もうまとめてあるので、これまでやりとりしていたメールアドレス宛てに送ります」

「お願いします」

「いま送信しました」

 高木がそう答えたので、肇がメールソフトの受信ボタンを何回かクリックするがなにも受信しなかった。

「う~ん、届かないですね」

 そういう肇の反応に驚いて高木は

「え、届かない? おかしいですね……」

と言ったが、

「もしかしたら肇さんのメールアドレスが監視されるようになったのかもしれません……」

と意外なことを言い始めた。

「まさか……」

 まさか自分を監視している人間がいるなんて、そう肇は思った。

「直接あった方が良さそうです」

という高木の提案に乗った方が賢明そうだった。

「わかりました。今日会えますか?」

「夕方以降なら」

 夕方は肇にとっても都合が良かった。この日の午後、退院して初めて帝都HDの執務室を訪ねることにしていたからだ。

「では五時に。場所はあなたに任せます」

「わかりました」

 そう高木は言ったが、そのあとで思わぬことを言い出した。

「御手洗さんは、DNA検査と指紋の照合ができるところを知りませんか?」

「DNA検査なら帝都グループの帝都病院に持ち込めばなんとかなると思いますが……」

「帝都グループの帝都病院……そこだと情報が漏れる可能性がありますね。やはりこちらで探します。蓮ちゃんのDNAが取れるものと指紋がとれるものを持ってきていただけますか? 指紋ならノートとか鉛筆とか、DNAなら歯ブラシとか毛髪とか、履いていた靴とか……」

「蓮の……なぜ?」

「電話では詳しく話せませんが、調べてみたいことがあるのです」

「わかりました。では五時に。場所はスマホ宛てにショートメールででも」


※    ※    ※


 高木が連絡してきた待ち合わせ場所は、渋谷の街外れにあった昔風の喫茶店だった。音楽が静かに流れていて、今ならレトロと言われて人気がありそうだが、客はまばらにしかいなかった。肇や高木にとってはかえってその方が良かった。四人席に肇と高木は向かい合って座った。肇は鞄を隣席に置き、高木はショルダーバッグを隣席に置いていた。

「私が初めて御手洗さんとお会いしたのは、帝都グループの御手洗吟常務が転落死した件でお話をおうかがいしようとしたときです。御手洗さんが帝都銀行からお帰りになるときに声をかけました」

 高木が順を追って説明し始めた。

「思い出しました。高木さんは捜査員の方からの極秘情報をつかんでいたんでしたね」

「御手洗さんも帝都病院でのドクターヘリの不思議な往来をつかんでいました。そんな情報交換をしているとき、提案があったのです。御殿場研究所を調べてくれないかという話でした。御殿場研究所は社長の御手洗正憲さん直轄の帝都製薬の研究所です。それを次男のあなたが調べろというので、正直びっくりしました。お兄さんの事故が七月二日のことですから、それから十日後の七月十二日のことです。私はまず御殿場研究所の周辺の情報を集めました。研究所の研究員に関しても調べました。それでわかったのが、あの研究所には生命ラボという別棟の建物があります。生命ラボができたのはおよそ六年前。所長は田所といいます。田所所長は学会では異端とみなされている男です。専門はクローン技術。そして一人の優秀な研究員を四年前の春引き抜いています。名前は山形聡です。国立再生医療研究所でクローン技術を十数年にわたって研究している男です。さらにその二ヶ月後、木下武という研究者を引き抜いています。この田所と山形、そして木下の三人がカギでしょう。帝都製薬の生命ラボは、表向きはiPS細胞など再生医療に関する研究が主となっていますが、それ以外にも興味ある研究をしていることがわかりました」

「クローン技術……」


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