表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/37

旧友

 父正憲と話し合ったあと、肇は自分の執務室であらかじめ帝都銀行から運び入れていたノートPCをセットし、メールの送受信ボタンをクリックした。一通のメールが届いていた。綿貫栄一郎からだった。「メールを添付しておきます」というタイトルのメールを開き、添付されていたメールのアイコンを開く。「生命ラボのクローン研究について」というタイトルのメールが表示された。「メールヘッダーを表示する」というメニューをクリックすると、メールヘッダーが表示され、そのメールがさまざまなメールサーバーを経由していることが記録されていた。ヘッダーの一番最後に「lifelab15(192.168.43.118)」とあった。肇は電話を取って栄一郎に電話をかけた。

「もしもし、綿貫専務ですか? 御手洗肇です。先ほどはありがとうございました。メールいただきました。ヘッダーを見てみたところlifelab15とありました。これがメールを送信したコンピュータの名前でしょう。名前からすると生命ラボで使われているPCのようです。このPCを普段使っている人間がわかれば、その人間が送信したと思われます。いずれにしろこのメールは本物の告発メールのようですね。生命ラボはやはり調べる価値ありです」

「どうする? 乗り込むか?」

 栄一郎はいつも飾り気がない。

「乗り込むというより偵察でしょうか……コンピュータネットワークの調査というような名目で……」

「IT系となると帝都セキュリティの管轄だな……帝都グループ傘下の企業の保安と情報システムは帝都セキュリティがやっているはず。だれか信頼できる人間がいればいいんだが……」

 肇は帝都セキュリティと聞いて叔父の憲次の顔を思い浮かべた。

「帝都セキュリティの社長は叔父の御手洗憲次ですが、私は苦手で……」

「はは、いいのかいそんなこと言って」

 肇はもう一人思い出した。

「心当たりがないわけでもありません。兄の葬儀のとき、一人大泣きしていた方がいて……たしか帝都セキュリティの幹部だったはずです」

「ああ覚えている。たしか、長野といったはずだ。帝都セキュリティの技術部長だったか……吟くんと小学校から大学までいっしょだったとか……」

「長野技術部長……そうでした。その方にお願いしてみます。では、また連絡します」

 肇は栄一郎との電話を切り、続いて帝都セキュリティの長野に宛てて電話をかけた。帝都セキュリティで技術部長を務めている長野とはすぐに連絡が取れた。兄の吟とは幼馴染で、大学まで同じだったと言う栄一郎の話は本当だった。働き始めてからもたまに会っていたと聞いて肇は意外に思った。また一つ兄の知らない顔を見た気がした。

 肇は事情を説明し、長野はこれが取締役会で承認された調査だと聞いてこころよく協力してくれた。当初長野はすぐにわかるだろうと言っていたが、連絡があったのは四日後だった。電話を受けたとき肇は私用があって自宅にいた。

「そうですか、lifelab15というPCを使っている人間が分かりましたか?」

「ええ、山形聡という研究員です。主任研究員ですね。そのメールは無料のメールアドレスから送信されていますが、その時刻に外部のメールサーバーに接続があったことも確認できていますし、その直後に、社内のメールサーバーから山形さん宛のメールを受信していることから、そのPCをそのとき操作していたのが山形さんなのは間違いないでしょう」

「ありがとうございます。助かりました」

「とんでもない。すぐにわかるかと思ったんですが、意外にてこずって四日もかかってしまいました。帝都製薬のシステムも帝都セキュリティが担当しているんですが、生命ラボは帝都製薬の中でも位置づけが特殊のようで、ログが簡単に入手できなかったんです」

「そうだったんですね。いろいろありがとうございました」

「そんな……吟常務は子供のときからの友人です。私は親友だったと思っています。幼い頃には病気を患っていて大変な思いをしていたはずです。ちょうど弟さん、肇さんがお生まれになった頃から具合が良くなっていったと思います。その頃、吟くんはアメリカに行っていたので詳しくは知らないんですが……」

 肇は兄が病気で苦しんでいたこともアメリカに行っていたことも知らなかった。

「そうですか……兄がアメリカに……」

「そんな吟くんの弟さんの頼みとあれば、いや失礼しました、帝都の取締役でしたね。肇さんの依頼でしたらできることはなんでもやらせていただきます」

「本当にありがとうございます。きっとまたなにか頼むことがあるかと思います。では」

 肇は電話を切り、すぐに高木に電話をかけた。

「もしもし、高木さんですか? 御手洗肇です。生命ラボからの告発メールの件ですが、わかりました。山形聡さんという方で、主任研究員のようです」

「山形聡……三年前に田所所長が国立再生医療研究所から引き抜いた研究者ですね。ネットで調べただけですが、再生医療研究所ではクローン技術について研究していたようです。もちろん当時は羊や猿などで実験していたようですが」

「クローン……メールの内容とも一致しますね」

「私の方からもお伝えしたいことがあります」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ