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会議

 帝都病院で出会った看護師が肇宛てに電話をくれたとき、肇は帝都銀行の自分の執務室で私物を整理している途中だった。近いうちに取締役会が開かれ、一時取締役に就任することになり、帝都銀行から持株会社帝都HDのビルに移ることになるだろう、そう父の正憲は言っていた。肇のスマホが鳴り、見慣れない番号だったが出た。

「はい。御手洗です」

「あの〜、帝都病院で看護師をしているものです。先日御手洗さんとお会いした……」

 肇はカフェで話を聞いた塚田看護師の顔を思い出した。

「ああ、先日はありがとうございました」

「あの〜、あのあとわかったことがあるので、お伝えしたほうがいいかと思って、電話しました」

「わかったこと? なんでしょう?」

「あのとき帝都製薬の研究所からのヘリの患者を受け入れた看護師に話を聞くことができて……あのときやはりその患者さんは御手洗吟常務にそっくりだったようです。その患者は、手術室二号室に入れて、そのあと顔を包帯で巻くように言われて巻いたそうなんです。そしたらそのあと手術室を出るように言われて、出てしばらくして手術室に戻ったら、包帯のない患者さんがいて、今度はその患者を運んできたヘリに積んで、ヘリはまた飛んでいったようなんです」

 肇は想像もつかない話の展開についてゆくことができなかった。

「ヘリに積んだ……」

「うわさでは研究所に戻ったとか……」

「御殿場に……」

「全部たしかとは言えないかもしれませんが、参考になりますか?」

「ありがとうございます。参考になるかと言われれば、かえって混乱しているというのが本当のところですが……」

 肇はうろたえた様子を隠すこともできずに答えた。


※    ※    ※


 持株会社帝都HDの取締役会は、本社ビルの最上階にある広い会議室で開かれるのが常だった。会議室には楕円形の大きなテーブルがあり、最近では出席者一人一人にディスプレイが用意されていることも多い。

 その日もテーブルに向かって二十人ほどの役員が座っていた。出席していたのは、綿貫耕一郎会長をはじめ、御手洗正憲代表取締役社長、御手洗憲次副社長、綿貫栄一郎専務取締役、顧問田中洋子ほか、創業した綿貫家と御手洗家の一族を中心にした役員たちだ。そのほか二人の社外取締役が出席していた。一人は弁護士、もう一人は中央省庁の事務次官経験者だ。

「それでは時間になりましたので、帝都HDの取締役会を始めたいと思います。社長、お願いします」

 御手洗正憲の秘書を務める鈴木が開会を宣言した。それを受けて正憲が立ち上がった。

「本日はご多用中のところ取締役会にご出席いただきありがとうございます。当社定款の定めにより私が本取締役会の議長を務めさせていただきます。それではこれより取締役会を開会いたします。まずは本取締役会の出席者数などについて事務局より報告させます」

 このときの取締役会は、事前の根回しが良かったせいか、議事が滞りなく進んでいった。そしてもうまもなく終了かと思ったとき、正憲が突如提案をした。


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