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シャーロキアンのホームズⅣ〜虚構探偵ホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


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9/10

第九幕:蜘蛛からの挑戦

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第八幕では、自分がどれほどマヌケなヤツを頼ったのかを正確に理解した。


まるで僕が引いたカードをマヌケがぶつかってきて、ばらまかれた気分だ。

「ワトソン。君は僕にどうしてほしい?」と聞いた。先を聞くのが怖かったからだ。どこまで話したと直接聞くのさえ、怖かった。

僕がシャーロック・ホームズだと、蜘蛛ーー彼は気付いているのかーーああ、このまま窓から飛び降りて、馬車に轢かれたい。


僕はベーカー街にある新しい拠点から見える街の景色を見た。

太陽は高く、マヌケは佇む。

遠くでは馬車の音。

行き交う足音。

歴史あるブロックの建物よ。

ああ、石の愛よ。

積み立てたものは、愛か憎か。

応えるものはなし。

自由を得たはずだった。

全てが悪い方に見えた。

「彼は、僕をいつでも始末できるんだろうな」と呟くしかできなかった。

「ボクは、悪くないーー」とデクノボウは呟いてた。

「ああ、悪いのは君の頭の中だ。お花畑が何もかも狂わせる。ねえ、君。そして、どうなった? 酒場で置いてかれたか? この用無しめ、とか。」

「まさか!ボクは彼の家に招かれた。」

僕は意識が遠のきそうだった。

まだ彼は搾り取るつもりか!


ーーいいだろう。


ーー最後まで聴いてやる。


このマヌケをーーここから投げ飛ばす前に。


「ボクはビクター卿から、彼の家に招かれた。

まるで、貴族のようにね。

でも家は質素だ。三階建てのフラットみたいだ。部屋は全部、彼のものだ。

だけど家族二人で住むには広すぎる。

彼は奥さんと暮らしていた。二階の部屋で。三階には行かなかった。だけど、人の気配がした気がした。

ボクは鼻がきく。三階には酒を飲んだ奴がいる。しかも大量にね。」

「二人で住んでるだと?彼女の子はどうした? いや、まて、まってくれ。彼女と子どもの名前はいうなーー」

「え、なぜだい?」

「僕は、彼女の名前を思い出したら、耐えられない。子どもの名前も知りたくはない。」

「ーーわかった。彼女の子はドイツにいる。十歳ぐらいだ。留学のために親戚に預けられた。」

「なぜ?」

「そこは聞いてない。」

「なぜ、子どもだけで、ドイツにやった? ロンドンでヤツは何かをやるつもりーーだ。犯罪美術館だーー」と僕は呟いた。

「ホームズ。続けていいかな?」とデクノボウがいった。

「わかった。ーー続けてくれ。それでーーどうなった? 彼女は何か君に?」

「何も。とてもキレイな人だけど、ボクには合わないな。彼女、頭の良し悪しで人を見てる気がするーー」


「そんな事はない!」と僕は声を荒げた。

無意識の奥へと追いやった彼女が、形となっていく。なんとか気を逸らさないとーー。

「それで?」

「彼女はボクに会釈すると、部屋に引っ込んだ。ボクは子供部屋で寝た。

たぶん、頭のいい子だ。

本棚には医学から錬金術の本まであったよ。オタクかもね。」

ボクは、あの天使を思い出した。

つい、思い出した。


彼女は金髪の髪なのに、

あの子の髪は黒かった。大きな水色の瞳をして、顔がふっくらしていたよ。

まるで小さな天使の微笑みだ。


僕はしゃがみ込んだ。耐えきれない。

「ーーホームズ!?」とワトソンは驚いた声をあげた。

「ボクは、またーー君の気に入らないこと、言ったのかい?」

「いいやーーそんな事ないーーこれは、僕の個人的な問題なんだ。

続けてくれ。

そして、ーー何があった?」

「それだけ。彼はボクに酒瓶と詩を贈ってくれた。詩は君のさ。

ーーだけど、酒瓶は、その、彼はボクにくれたんだ。君じゃない。

君のじゃないーー」

そういうとアル中は顔を真っ青にした。自分が喋りすぎたと、気付いたんだ。


「僕に詩だと? 蜘蛛のヤツ、何を考えているーー代わりに読んでくれ。」と僕はなるべく冷たく言った。


ーー彼は、こう読んだ。


バッカスの息子よ

散らせ花びらを

それは赤い定めの証

愛する君よ、君なのだ

ここは花畑

赤い絨毯が広がるまえに

飛び立て

始まりはここだ

バッカスの息子よ

酒を隠せ

それは誘う狂気の先

ただ生きよ

だが逃げ場はない

世界は花畑

逃げ場はない

二人で語り合った過去

思い出に逃げる蜘蛛

涙は言葉


僕は背筋が凍る気がした。

これは破滅を歌っている気がした。

世界に逃げ場はない?

ヤツはーー何を伝えたかったのだろう。だけどーー僕の知性は黙ったままだ。


蜘蛛はーー何かを企んでいる。


ヤツは僕に挑戦させたがっているんだ。


でも、ーー何を?


こうして、第九幕は謎の詩で幕を閉じる。

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