表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャーロキアンのホームズⅣ〜虚構探偵ホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

第八幕:蜘蛛の人柄

ねえ、君。君はホームズだ。そして、ボクはルームメイトのワトソン。

なぜかって?

君がホームズと名乗るからさ。

“彼”のとなりには、ワトソンがいる。

それが、ボクなんだ。


第七幕では、ホームズのいう蜘蛛ーービクター教授に、ボクが助けられたのを君に話した。


ボクの何が不満なのか、君は怒ってるように見える。

大丈夫。大したことない。

ボクの本名なんて、きっと、

なんの影響もない。


ボクは彼が何者かってのを探ってきた。君のためにね。

そこは酒場で、奥の席にビクター教授とボクが座っていた。

ーーボクは三杯目の酒を頼んだ。

そう、景気づけに。

ボクは......それを少しずつ飲みながら、彼に聞いたんだ。

「ボクは、彼からーーあなたの名前しか知らされてない。だから、その、彼もーーあなたの事を知らない。

だから聞きたい。あなたがどんな人なのか。本当の事を。」

「ーー誰も本当の自分は、分からない。

私も......さんざん言葉を探してみたけれど、本当の自分ーーそれは他者から見た”人物評価”にすぎん。ーーわかるかね?」

彼は卓上に長い腕を乗せたまま、人さし指を卓に打ち付けて鳴らし始めた。

ボクらの会話にコツーーコツーーとなり始めた。

「我々は言葉で自己を作るが、その自己は他者の観測によってのみ、生きてくる。つまり他人の目のない言葉は、絵でしかすぎない。

どんな人なのかーーふふふーーどんな人なのかーー、私は君の見た通りの存在だ。」


ボクは、大して気にしなかった。

ーーそうだなと思った。

彼は誤解されやすい。

見る人によっては、きっと彼は悪魔みたいな人なんだろうなって。

「良かった。ボクと彼は誤解してたかもしれない。」

彼は目を細めて、微笑んだ。

それが気持ち悪いんだーー表情の作り方を真似た何かなんだ。

彼は黙ってた。ボクは飲んでた。

ボクのパンチは、彼の財布を確実に打ちのめした。

だってそうだろ?

言語学者といっても、安月給さ。

ボクは高い酒をたのんでた。

ーーでも、彼は笑ってたんだ。


「君と話していると、楽しい。

頭の中が”お花畑”の友人を思い出す。」と彼は言った。

「ボクと彼は、その、似てるんですか?」

「いいや。ーー彼はーー美しかった。」

彼は沈黙した。何か彼の中で動いていた。彼の額から一粒だけ汗が流れたのを見た。

「美しかった? 何か含みがあるように聞こえます。」とボクは聞いた。

なんだか、なにか、聞き逃したかもしれない。だから、彼に聞いた。

「含みーーふふふ、そうかもしれないね。君との話が面白くて、つい。怒らないでくれ。人は人だよ。」


ボクは彼の動揺を見破った。

今こそ、聞くべき時だ。

「あなたは、ご家族を愛してますか?」

ホームズ。ボクは彼に聞いたぞ。

核心ってやつだ。

君が安心できるように。

「愛? 急な質問だな。愛か。人並みには愛してるつもりだ。ふふふ、少し照れるなーー君。酒の席でなければ、答えられない。」

そうだと思う。だけど、彼は一滴も飲まない。飲むのが、まるでボクの仕事みたいなようだ。

「すみませんーーボクは失礼なことーー」と謝った。これで安心したろ?

君の元カノや子どもは安心だ。

何せ、人並みに愛してるんだから。

だから、睨むのはよしてくれ。

せっかく、気持ち良く帰ってきたのに。


「つまり、この、マヌケ、君って、この、なんて言えば、ああ!クソ、この!アホ!ちがう、ウスノローー」


君がボクを罵倒したいのは、わかる。

きっと、何か誤解があるんだ。

彼との誤解もあった。

そして、ボクとも誤解してる。

「続きを聞かせてくれーー。」と君は深くため息をついた。


いいけど、睨むのはやめてくれ。

ボクは、その後は少し酒を呑むのをやめて、彼を眺めたんだ。

「強姦の疑いをかけられた友人を覚えてますか?」と。

彼は、そう、ものすごく微笑んだ。

ちゃんとした笑顔だったよ。

「ああ、君のいう彼はーー」


ねえ、ごめん。ホームズ。

ボクは君の名前も知ったけどーー。

うん。言わないでおくよ。

だって君、まるで、ボクをーーそのひどい顔だよーー?


(こうして、第八幕はデクノボウにより幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ