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シャーロキアンのホームズⅣ〜虚構探偵ホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


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第七幕:ワトソンの冒険

ねえ、君。君はホームズだ。そして、ボクはルームメイトのワトソン。

なぜかって?

君がホームズと名乗るからさ。

“彼”のとなりには、ワトソンがいる。

それが、ボクなんだ。


第六幕では、ホームズとアダムズ夫人との因縁をボクは見た。

言っとくけど、君の悪癖を、ボクは見逃さない。君の破滅はボクの破滅でもあるのだから。


さてーーボクは君からーーこのロンドンのベーカー街にいる君の大切な人たちの様子を見るように頼まれた。

なぜかって?

君がロンドンを歩き回るのが怖いと言ったからさ。

ボクは、ボクにとって魅力的な場所を無視して、彼女たちのところへ向かった。

そこは認めてくれたっていいだろ。

睨むなよ。

たしかに、ですぎたマネをしたと思ってる。だけど、ボクは無事だ。

君にとっては宿敵の蜘蛛と、ボクが話をした。それがーーそんなにマズイんだろうか?


前に君が話してくれたこと、ボクは覚えている。

それは、こうだった。


「かつて友と呼んだ男の顔、

灰色髪を肩まで伸ばし、

だけど前髪が少し後退していた。

額が人より広く見えた。

その厳格な黒い瞳であたりを見回す。気品ある顔立ちだ。

唇に浮かぶのは少しの微笑み。

痩せて背が高い男だった。」


その通りさ。彼は変わってない。


君が蜘蛛と呼ぶビクター・フォン・アラクタムーー言語学者のビクター教授は、この姿のままだ。


だが、ボクの想像とは違った。

彼は立派な英国紳士だ。

多少の身体の障害は見てとれた。

脊髄の異常が彼の高潔な魂を苦しめていたんだ。

それでも、杖を使わないと言ってーーああ、ごめん、最初から話すよ。

なぜ彼が、ボクに気付いたかというと、ボクの身体から酒が足りなくなったから。はっきり言えば、禁断症状がでた。急にだ。ボクはーー止められなかった。手足の震えが止まらなくて、立ってられなかった。しゃがみ込むしかできなかった。

そしたら彼が近づいてきたんだ。

ボクは焦ったーーなにせ、本当に蜘蛛が二足歩行してたんだ。

汗が止まらなかった。怖かったよ。


「君、話せるか? ああ、これはひどいーー真っ青だ。」と言って彼は微笑んだ。

「少し、ほんの少し、酒をーー!」とボクは彼のズボンの裾を掴んだ。

彼は、よろめいてた。わざとじゃない。紳士らしからぬ事をした。

彼はボクを連れて、近くの酒場へと連れて行った。

なんというか、彼の指、ボクの腰を撫でてきて気持ち悪かった。


酒場の中は薄暗く、油の匂いが鼻を突いた。

ランプの明かりに照らされた彼の横顔は、ボクを本当に心配していた。


店の奥の席に座らされた。

彼は店主に手短に注文した。


「この方に、適量の酒を。

胃が驚かないように、弱いものからだ。」


そう言った彼の声は驚くほど優しかった。ボクはあんなに優しくされたのは、初めてだ。いや!戦争から戻ってこられてからだーー。初めてだった。


酒が来ると、ボクは一気に飲み干した。

身体が温まってくるのが分かった。

震えも止まった。

ボクは涙を流して彼に礼を言ったよ。

でも、君の敵だと思い出した。

モリアーティ教授との関係だよ。

だから、ボクはーーすばやく二杯目も頼んだ。

これは君の分のつもりだった。

彼の財布に、ボクはパンチを食らわせた。


うん。美味しかったさ。

彼はボクを微笑ましく見てたんだ。

卓上にあの長い腕をおいて、人差し指でコツーーコツーーと音を鳴らしてた。とても長い指だ。

コツーーコツーーと気持ちの良い音に聞こえた。

彼はボクが話すのを待っていたーー。

「あの、助かりましたーーあなたは、命の恩人ですーーほんとーー」とボクは言った。本気で思った。

彼は、ピタッと指を止めた。

「ーー良かった。気にしなくていい。

ーー人として当然のことさ。

それよりも、なぜーー君は私の家の前で倒れていた? 用件があったのかね?」

そう、ボクは彼の家の前で倒れてた。まずいと分かっている。

だって、君が、その、監視方法とか、そういうの教えなかったから。

ボクのせいじゃない。


「ある人から頼まれて、その、ーーあなたのーーご家族の安否確認に来たんです。

彼からは、そう頼まれてーー悪気はないです。そう、誤解があった。そうですよね? その、誤解って悲劇にしちゃうもんです。」

「ーーなるほどね。君は、その”彼”に頼まれただけ。ふふふ、お人よしだ。

利用されてしまうよ。気をつけなさい。彼にも、そして、私に対してもーーふふふーー自己紹介はいらんかもしれん。私はビクター。

ビクター・フォン・アラクタムだ。

この近くの大学で言語学者をやらせてもらっている。世間では大したことない男だ。

だがね、ーーこの魂はプロイセンの貴族としての誇りを持つ。誰にさげずまれようともーー」

その時の彼の笑顔は不気味だったよ。

背筋がゾッとした。でも、それが、彼のちょっとした欠陥かもしれない。

これは、ボクの意見だ。他の人が見たら、もっと違うかもしれないーー。

「ボクはーー」

あ、ホームズ、ごめん。

ボク、彼に本名を言っちゃった。

君、聞く? そう、じゃ、だまっておくーー


(こうして、第七幕はウスノロにより幕を閉じる。)

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