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シャーロキアンのホームズⅣ〜虚構探偵ホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


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5/10

第五幕:吸血鬼

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第四幕では、ベーカー街に僕らの拠点ができた。グレグソン警部補が用意してくれた。


僕は彼をお金持ちだと思ってる。でも、ワトソンは信じてない。それどころか、ドクター・ハントリーが僕らを連れ戻すと考えて怯えていた。

だから僕は、彼に安心するように話をすることにした。

自分にも言い聞かせたかったからだ。


僕らは居間の見晴らしのいい窓の下に並んで腰かけた。

そこがマシだから。

家具は埃だらけで、何もする気が起きない。管理人を待たなきゃならない。

「ドクター・ハントリーは、僕らに手は出さない。もしも彼が僕らの脱出劇に対して訴えてみろ。」と僕はワトソンのウスノロの目を眺めた。

「彼は自分が隠したかったことを世間の前で公表しなきゃならない。

彼のプライベートは破綻し、彼自身も狂ってることを告白しなきゃいけない。わかるかい?」とワトソンに聞いてみた。

「彼は狂っていた......?」

「そうとも、君のアル中なんて。可愛いものさ。ーー僕らの自称もね」と僕。

「約二年間。僕はアイツの権力、自信、存在意義を否定してきた。時に反乱めいた事を起こした。アイツは僕を治療しようとしたさ。

でも、この二年間がーーヤツを叩きのめした。ボクシングだからね。」

「君は......彼を変えたんだーー。”わざ”と。あの部屋で二人っきりにさせるためーー」

「君は医者だし、僕が死にかけていると言えば、彼は信じるしかない。

良かったな。彼は君を信頼してたぜ。

喜んで飛んできたんだ。」


ワトソンは不満そうだった。

「最低だ。紳士として、ありえないーーそんな、君は悪魔だ。ろくでなしだよ。でも、まあ、ボクも同罪だ。」

「思いつめるなよ。さて、アイツは死の床についた僕から、正式な謝罪を求めた。あと、僕に屈辱を味あわせたかったかもしれない。今となっては、わからんさ。彼に聞きに行くかい?」

「まさか!ーー聞けるわけがない。恐ろしいよ。彼も君も狂っている。ーーこういう時の酒がボクには必要だ。

ーーいますぐにね。」とワトソンはノドを撫でてた。

「わかるよ。」と僕は肩をすくめて見せた。

「僕も置いてきた宝物たちが恋しい。

こんな時にこそさ。」と僕は軽口を言った。

ワトソンは答えず、僕を睨みつけた。


僕らはお互いに何をいうか迷っていた。だけど、とうとう僕の方から口を開いた。

「ドクター・ハントリーは、僕らを追わない。手は出せない。彼はお金を一切ーー持ってなかった。これは、彼の世界が、この社会ではなく、あそこを完全なすみかとして選んだ証拠さ。

彼の居場所は、外にはない。」

僕はそういうと、完全に黙った。

「ーーわかった。君の言う通りだと思う。さ、ホームズ。頭を切り替えよう。まずは酒だ。グレグソンさんからもらった金で飲みに行こう。

君が一緒にこないと、ボクは連れ戻されるぞ。」

僕は頭を抱えた。

「ダメだ、ワトソン。ここにいろ。すぐに飲みにいける。だが、今はマズイんだ。」

僕は不安だった。まだ、外に出るのが怖かった。

あの忌まわしい強姦の疑いをかけられた日から、ロンドンを逃げ出して三年後の環境も変わってた。

アレから、もっと変わったに違いない。

もっと時間が欲しかった。

「ホームズ。外に出るのが、怖いのかい?」と彼は言った。

「怖いさ。君には分かるまい。」と僕は情けなくふるまった。

ワトソンは僕を見つめた。

「ロンドンは、ボクにとってまだ形は変わってないと思う。

ホームズが怖いと思うなら、君が見にいきたいトコを教えてくれ。

ボクが君の目になる。」

僕は黙った。彼がこういうだろうと、予想していたからだ。


僕のワトソンならーー。


ーーでも、すごい自己嫌悪だ。


ーー僕は吸血鬼のようだった。

他人の善意を、吸い尽くす悪魔さ。


(こうして、第五幕はホームズの目により幕を閉じる。)

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