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シャーロキアンのホームズⅣ〜虚構探偵ホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


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3/10

第三幕:脱出のキス

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第二幕では、僕の二年間の行動は全て脱出をするための下準備だと話した。


そしてーーここで僕は......、

ーーそう死の床にあった......。

「ドクター・ハントリー......」と僕は惨めに声を出した。

自分の病室で、寝台に仰向けになっていた。ワトソンに見守られながら。彼の手を握った。

「ボクは、ドクターだけどハントリーじゃない......」彼は顔を歪めた。

「ああ、ホームズ!君はバカだ!」

あの宣言から三日経ってた。

僕の身体は衰弱させ、衰えた。

顔は青白く、口から泡を吹き出してみた。

「ドクター・ハントリーはまだかーー僕らの神はいずこへ?」と僕は呟く。

「おい、ホームズーーそんな風にいうなよーー情けなくなってくる。ボクは泣きたいよ」

やがて、足音が複数近づいてきた。

いつも通り、ドクター・ハントリーは三人でくる。二人の邪魔な強面の看護師だ。どこで見つけてくるのか。

まあいいさ、彼は泣きそうなワトソンと、僕をみて叫んだ。

「なんなんだ!管理はしてたはず!

こんな、容態が悪くなるなんて、ありえないーー」と彼は不機嫌そうに、僕に怒鳴った。

「ドクター・ハントリー。君は神だった。神をバカにしたものの末路とは、こんなもんだ。思えば、僕は患者としてわきまえてなかった......」

それから、唾液を垂らしてみせた。

目をぐるんぐるんと回してみせた。

ブルブルと痙攣させた。

「君と出会ってから、君を挑発してきた。君が一番狂っててマヌケだとーー」

ドクターは、頬をピクッとひきつらせた。

「ホームズ。君はここに私がきたのは、治療するためだと? もちろんだ。最後の治療になるかもしれない。

ワトソンとお前たちは、席を外せ。ワトソンを連れ出せ!」と彼は指示をした。

ワトソンが部屋から連れ出されていった。それをドクターは見届けた後、ニヤニヤしだした。

「さあて、ホームズ。君はカトリックではないだろう。しかし、神自らお前の今までやってきた事への謝罪を聞こうーーふふふ......」


しばらく彼は僕を見つめていた。

か細い声で言葉を繰り返した。

彼には聞こえない。

彼は枕元に近づいた。


「最初に会った時のことーーを覚えているーードクター。あんたのーー私生活がぶっ壊れてて、結婚についてーー

触れた事。

外に居場所がないこと。

ここに住んでいること。

あと、頭が悪いことを指摘したーー」

彼の笑顔が急に凍りつく。

「なに?」

「そして、僕に睡眠薬の贈り物をしたこと。ーー今ここでお返ししよう」

僕は彼の頬を両手で挟むと深くキスをした。これは、誰にもみせられない。

とんでもなく熱烈なキスさ。

口の中に仕込んでいたワタを、思いっきり押しつぶした。

それを彼の口の中に流し込んだ。

この程度のテクニック、僕は過去の女たちと楽しんできたんだ。

楽勝ってもんだ。自慢できることじゃないけど。


ーー彼の身体は痙攣した。

もう勝負はついた。彼の顔から僕は素早く顔を離すと、そのまま枕に押し付けた。

「むぐぅあ、ホームズ、貴様!!」

彼は、なんとか叫び声をあげようともがく。僕は衰弱していた。体力に限界があった。

彼は予想外の抵抗をしてきた。

睡眠薬の濃度は、高いーーと思う。

「だ、誰かーーう、うらぎり、犯罪だ、だれか!」とドクターが叫んだ。


その時、部屋の扉がゆっくりと開いた。

ーーワトソンが不安げに顔を覗かせた。

「ホームズ。妖精たちは、看護師たちを足止めしたよ。悪夢だった。

彼ら、オシッコとかかけたんだ。ーー聞きたい?」

僕の勝利だーードクター・ハントリーは、孤立した。しばらくの間だとしても。

ドクター・ハントリーは事態を察したのか、それとも薬が効いてきたのか、動きを緩慢にさせて、眠った。


素早く彼の白衣を脱がせた。

それと現金を探したが、

彼は外の世界の通貨を持ち合わせていない。

完全にーーここは彼の城だった。

「ワトソン。白衣だ。これを着るんだ」

彼には詳しい計画は話していない。

僕は妖精たちに、詩で指示をした。

強面がウスノロを連れて現れた時、彼らをからかえとね。妖精なりのやり方で、惑わせと。

ナポレオンも、天使も悪魔も、神さえも同じことをしたんだろう。

ワトソンの顔を見て、僕は察した。

僕だって、酷い目にあったんだ。

相棒は苦しみを分け合って当然だ。


院長室にいき、カルテなどをあさり、

僕に関するものを徹底的に引き裂いた。ワトソンは、自分で探させた。

彼の本名を知るのが怖かったからだ。

僕らは互いに虚構の名で、充分だった。


「ホームズ。ボクたち、お酒を探すべきだ。」とワトソンが言い出さなきゃ、もっとスマートにできたかもしれない。

彼は部屋の中に、その宝の匂いを嗅ぎとったのさ。でも、グズグズしていられない。僕は彼に黙っている事があるからだ。

「ワトソン。外の世界では、きっと好きな種類のものが飲めるぜ。毎日、味の替え放題だ。自由ってそんなもんだろ?」と言い聞かせた。

彼は名残惜しそうに、院長室へ出た。


それから、僕らは監視なしで庭園に出た。

医者と患者として。


黒い鉄の門。そこを守る門番をワトソンが言いくるめた。

「ボクらは外に出る必要がある。

この患者を治安判事の前で見せねばならない」とね。


外の世界には、ワトソンがガマンするだけの理由があった。

僕にもあった。ここでの経験は、きっと僕の過去の宿敵の蜘蛛を追いつめられる力をつけてくれた。


門の外には、グレグソン警部補が待っていた。

彼は帰ろうとしていた。

間一髪だった。

「グレグソン!僕だ、ホームズだ!」

彼を必死になって止めた。

ワトソンは驚いたようだった。

「ホームズ、彼は味方なのか?」と不安そうだった。

グレグソン警部補は僕に気づくと、馬車からゆっくりと出てきた。

「ホームズ。お前が失敗したと思った。殺しはしてないな?」とグレグソン。

「してない。信じろ。

ここで話すのは、それだけだ。

馬車に乗せてくれ。」と僕は言った。焦ってたからだ。

ワトソンも乗り込んだ。

「まるで、本当のグレグソン警部だ。きっと、彼もそうする」とワトソンは余計なことを言った。

「ーー吾輩と本のヤツを比べるな。叩き出すぞ」と唸るようにして彼は言った。

「ひとまず、ベーカー街にお前たちの巣を用意した。役に立たないと吾輩に思われん方がいい。

ホームズ。ーー約束は果たせよ。」

僕は彼の肩を叩いた。

「おめでとう、グレグソン警部。

君は、賢さを証明した。僕の知性を使いたまえ!君の現実、そして僕らの虚構が絡み合うんだーー」


馬車はロンドンのベーカー街に向かう。

さらば、僕らの古き世界。

こんにちは、新しい世界ーーベーカー街よ!


(こうして、第三幕はベーカー街で幕を閉じる。)

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