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シャーロキアンのホームズⅣ〜虚構探偵ホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


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2/10

第二幕:脱出計画

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第一幕では、ハンウェル精神病院に約二年間もいた僕らの様子を見た。


この間、君は僕が何もしてないと思ってるようだがーーかなりやっている。


ワトソンから、かつて言われたハンウェルでの患者や看護師問わないコンサルタントを進めた。

僕が話を聞き、知性を使って問題解決する。楽な作業だ。

ナポレオンには、次の軍をどこで立ち上げるべきかと、オムツの着用を指摘した。

妖精には歌を教えたし、作詞もした。

天使と悪魔には、もとは同じ翼が生えているのだから、神に内緒で協定を結んでもバレないと説き伏せた。

神が厄介だった。

まだ全知全能をもっていると思ってたから、人間の脳細胞の限界を伝えて納得してもらった。彼らからワトソンはお酒を集めて、この二年間を過ごした。

でも飲む酒の量は増える。

アル中の治療は進まない。

まあ、僕のせいなんだろうな。


でも患者たちのもつ酒も、限られている。僕らは得るものを得たら、次は看護師へとターゲットを移した。

看護師たちの一人一人の行動を分析し、彼らが気にしている事を突いた。

「どうすればいい?」と聞かれたら、当たり前の事を大げさに言って、賢く見せた。

それだけで、信頼された。

頭が飾りでなければ、当たり前な事しか言ってないと分かるのにーー。

たいていのヤツは折角の頭を乗せているだけだった。

彼らも、酒を僕らに与えてくれたが、やはり限界があった。

僕らを引き取ってくれるかもと、頼りにしていたグレグソン警部補も、二年間かけて成果なしだ。

ドクター・ハントリーへの嫌がらせを患者たちと一緒にやったらバレて、僕らの立場がさらに悪くなった。

クスリすら、定期的にもらえない。

こうやって、僕らはやがて何も得られなくなるんだ。そろそろ限界だった。

自力での脱出を考えなければならない。ーーでも、どうやって?


ケムリのように外にでる。

簡単な言葉の中に、恐ろしい響きを感じた。

もっと、やるべき方法があるはずだった。

僕とワトソンは身寄りはない。

僕の両親は神さまのもとへ行って戻らない。かつての友だちも、僕を恥ずべき強姦をした男と見ているだろう。

ホームズの仮面を外しても、この状況は変わらない。

いや、よりいっそう悪くなる。

負け犬として、ドクターの前で跪くことになるんだ。

「ホームズ。君、隠し持ってないよな。ボク、あんまり呑んだ気がしないんだーー」と彼は不満そうに見てきた。

看護師たちの信頼を得た僕らは、彼らの前で酒を飲んでも見逃してもらえた。

ドクター・ハントリーさえ誤魔化せば、

ここは住み心地はいい。

君もここに来たら、慣れるべきだ。

まあいいさ、真っ当な患者なら充分だ。

ーーでも、僕らは違う。外に出なきゃいけない。


僕はワトソンの方に顔を向けた。

「僕が君の酒を横取りしてるだって?

おい、君の相棒を信じろよ、ワトソン」

「ーーだって、君は毎日酒瓶に何か詰めている。酒以外何をつめてるんだい?」

「ははは、見られていたか。いいかーーこれだよ。」

そう言いながら、僕はベッドの下から酒瓶を取り出した。

瓶の中には、ワタがたくさん押し込んでいる。

「そ、それ、少しだけ飲みたいーー」

「いいのかい、君の嫌いなクスリだよ?」

「ーーなんだって?」

「ここには、僕の飲むはずだった眠り薬がしみこんである。コイツを搾り出せば、ふふふ、ちょっとしたものができるぜ。」

「いったい、どうやって?」

僕はワトソン大先生の使用している枕を指さした。

「枕の中のワタだ。君のね。

これをちょっとしたコツで口に含んでクスリをーーあんまり飲まないようにできる。」ワタは水を吸い込むからさ。

「でも、バレるのでは?」

「毎回、患者の口の中を探らない。

だって面倒だろ。彼らが、そこまでやる義理はないさ。それにこれは院内の僕らの愛すべき依頼人たちも使ってるんだ。彼らをバカにするだけはもったいない。」

「ーー取り扱いには気をつけて。

それを君が楽しむと思うと

ーーいい気はしない。」

「おい、ワトソン。コイツを使うのは、僕じゃない。ドクターに飲ませるんだ。彼からの贈り物を、しっかりとお返しする。君は知らんが、ヤツとの因縁はーー出会った時から始まってた。ボクシングだよ。まだ続いている......」

「最終的には、酒が飲めるの?」

「もちろん」僕は酒瓶をベッドの下に戻した。

「脱出計画は、思いつきじゃない。

すでに始まっていたんだ。」


(こうして、第二幕は脱出計画で幕を閉じる。)

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