第十幕:探偵は危険の中
やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。
なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。
第九幕では、蜘蛛のビクターから酒と詩の贈り物をされた。
僕には、詩を。その詩が何かーー謎だった。
かつて、彼とは詩を見せ合った仲だ。
だが、これは何を意味するのかーー正直ーー分からなかった。
つまり挑戦だと思った。
さっさとケリをつけるつもりはない。
ワトソンが蜘蛛の家に泊まった時の話を再び頭の中で思い返した。
三階に誰か酒飲みがいる。
あの蜘蛛の仲間の一人かもしれない。
あの人喰い人種の男?
わからないーーわからない事が多すぎた。
ここは、グレグソン警部補が用意してくれたベーカー街の建物の中だ。
三階に僕たちの居住区があって、居間にいた。暖炉には火をつけてない。
ワトソンは居間にある二つあるソファに腰かけて、酒を味見してた。
彼は僕を呼んだ。
「ホームズ。考えすぎも体に毒だよ。
今は、ーーそうだ。ボクの酒を分けて飲もう。いい考えって、そういう時に浮かぶんだ。」
言いたい事があったが、僕は彼と向かい合うようにして座った。
「こうやって一本の酒を飲むと、前に死にかけた時のこと、思い出さないか?」とワトソンは微笑んだ。
彼が言っているのは、ハンウェル精神病院での、あの痛ましい事件の事を言ってた。
元船乗りの看護師が命を狙われていると相談してきた。
結局、彼は同僚のトリックにより焼き殺された。
火は、あの病院を丸ごと焼いたかもしれなかったんだ。
僕らは病室に閉じ込められたまま、誰にも助けてもらえなかった。
その時、二人で一本の酒を飲み交わした。
あの時ーーそうだーー、
ーーあの時と同じだ。
僕らは、火の中にいるんだ。
今更、怯えてどうなる!
僕は、シャーロキアンのホームズ。
シャーロック・ホームズだ。
「ありがとう、ワトソン。
吹っ切れたよ。もう大丈夫だ。」と僕はソファから立ち上がった。
「ハンウェル精神病院で、あのトリックを使った男を見つけよう。
僕らの手で。どんなに時間がかかろうとも、ヤツを見つけ出してーー蜘蛛の糸の証拠を掴む。」
ワトソンは酒瓶を掲げると、そのまま飲んだ。
「それでこそ、ホームズだ!
ボクらは外に飛び出そう!
ベーカー街は、ボクらの庭さ!」
ワトソンは気分が良くなったのか、バンザイまでしてた。
調子のいい男だ。
見てろ、蜘蛛ーービクターよ!
僕はホームズとなって君を追いつめる。
このロンドンで君が企む計画を、
ことごとく引き裂いてやる!
何せ、僕はシャーロキアンのホームズ。シャーロック・ホームズなのだから!
(こうして、物語は一旦幕を閉じる。)




