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右手に強欲を、左手に憤怒を。-異世界で全てを奪われた俺が全てを奪い返すまで-  作者: イカネコ
魔法学園編

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59作目 響く咆哮

「お二人には極力"雷帝(バラク)"と"沈黙(サイレンス)"は使わないで魔物を討伐してもらいまス…と!」


森の中を歩きながらジャックは横から飛び出してきたゴブリンに体を回転させながら飛び蹴りを食らわせて更に奥へと歩いていく。なぜ知ってるかとは聞かなかった、エースのことや俺たちの知らないところまで知っている上に協力関係な以上ある程度の情報共有はされているものなのだと察したからだ。

周囲では戦闘の音が鳴り止まず、剣戟や爆発音が絶えず響いていた。時折魔物や人間の断末魔が聞こえるのがかなり気分が悪かった。


「先程渡した仮面、似合ってるスよ」


靴にこびりついたゴブリンの血をハンカチで拭ったあとそれをポケットに仕舞い込んだ。森に入る前にジャックから渡された仮面は特注品らしく、俺のは視界を遮らないために仮面上部がなく、下部にはオーガの口元のように牙が剥き出しになっている黒いもので、アストラの方は顔全体を覆っている白い仮面に黄色い雷のようなマークがあった。

俺たちの仕事はバレずに魔物の数を減らし、冒険者や騎士の仕事量を減らして王国からの派遣が本格的になる前に片をつけることでこの仮面はそれの手助けをしてくれるらしい。

正面から走り込んでくる灰色の狼の直進の攻撃を左手で受け止め、刀を引き抜いて頭に突き刺す。


「アッシュウルフっスね、絶対強者に従う忠犬っス。この先にもっと強いのがいるっス、気を付けてください」

「分かった」


返り血を振り払い、再び鞘に刀を仕舞って正面を見据える。奥から冒険者であろう人物の上半身を貪りながらオーガが現れる。死体の冒険者の顔には苦悶に満ちていて、下衆な笑みを浮かべるオーガは俺の心をイラつかせた。

俺が走るよりも先にアストラが高く飛び上がり、オーガの首元に剣を突き刺して胴体と泣き別れさせる。鮮血の噴水が森の中に弾け飛び、巨大な質量が倒れ込むことにより地響きが少しだけした。


「いやぁお強い、このままワタシの出番がないといいんスけどね」

「次はどうする?」

「冒険者助けたいな、多分オーガ以上の魔物には勝てないよ」

「いや…お二人の本来の任務は潜入、身バレは厳禁ス」


腕を組みながら人差し指をピンと立ててジャックは言う。その後は指示に従いながら向かってくる魔物を倒し、斬り捨てて森の中を走り回った。

森の奥へ進むほど魔物は弱くなっていき、街の近くを囲うように強い魔物がいるのは強烈な違和感を感じさせた。森の入口から中腹に至るまでは回収されなかった死体や欠損の激しい死体が多かった。


「いてぇ…ちくしょう…あァ…」

「助けてくれェ!!誰かァ!!!!」


数が異常に多いゴブリンの群れを斬り進んでいくと洞窟の中に引きずり込まれていく冒険者が見えた。泣きながら悲痛の声で叫びながら緑色の魔物に襲われる様を見た俺とアストラはすぐさま駆け寄り、入口にたむろしていた十数体の魔物を斬った。返り血と汚い断末魔が洞窟に響いたあと冒険者を見ると1人は腹から臓物をぶちまけており、もうひとりは両手足を切断されていた。


「すまねぇ…助か…た…」

「悪いが…殺してくれ…自分で片もつけられねぇ…」


俺とアストラが武器を振り下ろしてトドメを刺そうとすると横からジャックが横たわる冒険者2人の首を俺たちより先に跳ね飛ばす。


「そういうのは子供がやるもんじゃねえんス…汚い大人に任せてください」

「気にするな、既に汚れている」

「俺も何人か殺したことあるよ」

「それは悪人だから仕方なくエースさんは許可しているんスよ、掟第四項を忘れないでほしいス」


その瞬間、洞窟の奥で女性の叫び声が聞こえた。ゴブリンはメスのいない種族だ、魔王の屍から生まれるか、他の種族のメスを強奪して繁殖する。ゴブリンはそのせいで最も数が多く、今も加速度的にその数を増やしている。

女の叫び声は、頭に響く。心の付いた消えない傷を深く刺激する。その場にいる誰よりも先に走り出し、薄暗い洞窟の奥を進んだ。道中にいるゴブリンの頭蓋を砕き、喉元を突き刺しながら進むと眼下に広い空間が広がっていた。そこでは20体ほどのゴブリンが3人の女性を囲っており既に2人は生気を失い、死んだ目で天井を見て、最後の一人は壁際に追い詰められていた。

冒険者であろう彼女らの武器はゴブリンが高々と掲げ、衣類は引きちぎられていた。怒りを感じながらも俺は頭の中で予測を組み立てていた。

音もなく飛び降りて、ゴブリンを処理していく。アストラとジャックが俺のところに来る頃には全て殺し終え、怯えきった女性と俺だけが残っていた。襲われていた2人の女性は既に心臓が動いていなく、生き残った女性に手を差し伸べて洞窟から脱出した。


「そろそろ戻りましょう、この人を治療所まで連れて行かなければ」

「バルに行ってもらおうよ、ジャックはオレとまだ続けよう」

「ワタシはそれでも構わないっスけど、バルさんはそれでもいいんスか?」

「この人を預けたあと俺も直ぐに戻る。あとで合流しよう」

「おっけー、後で会おうね」

「あぁ、気をつけろ」


俺は走って森を抜け、街に戻った。返り血に塗れた俺は少しだけ注目されるがやがて街の人々は興味をなくしていく。血まみれの人などもう普通になりつつある、連日連夜街に入ってくるのはボロボロの人だけなのだ。

学園都市でいちばん大きい教会に向かうと中からは苦痛に喘ぐ人の声や回復魔法を唱える人々の声が大きく響いていた。バレないようにより深くフードを被り、ドアを開ける。

中は臨時のベッドが複数設置されており、その上に様々な色の着いた包帯が巻き付けられた怪我人が横たわっていた。シスターらしき服を着ている女性が走り回り、近くにメイがいた。


「そこの人!!怪我人は1人ですか!?」

「あぁ、その通りだ」

「失礼します」


俺が背負っている女性を椅子に座らせ、外傷をチェックし始める。容態を確認したあと緑色の包帯を手首に巻き付けて礼を言って戻っていく。


「どなたか存じませんが感謝します、それでは」


額の汗を拭いながら赤い包帯を巻き付けられた怪我人の元へ向かい、メイは詠唱を開始する。欠損し赤黒い血が溢れる脚部が見る見るうちに止まっていき、冒険者から苦悶の表情が消えていく。

教会を出ると目の前に大きな荷物を持った仮面をつけた赤い髪の人物が立っていた、仮面のせいかよく注視しなければなぜかカトレアと断定できなかった。


「お疲れ様、バル」

「カトレアか…どうして教会に?」

「言わなくても分かるだろ、ここがあたしの戦場だ」


ボロボロの白衣のポケットに手を突っ込みながらカトレアは教会の扉を開けて中に入っていく。仮面のせいで表情は分からなかったがきっと使命感に駆られているはずだ。

騒がしい教会を後にして俺は走って街を出た、大きな城壁を出ると森には真っ黒な煙が立ち上っていた。遠くからでも聞こえる爆発音と怪物の叫び声が響いた。

俺はその声を聞いた途端本能で理解する、身体中が拒絶するような圧倒的な怪物の叫び声は魔物の王であり、暴力の権化が怒り狂ったものなのだと。

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