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右手に強欲を、左手に憤怒を。-異世界で全てを奪われた俺が全てを奪い返すまで-  作者: イカネコ
魔法学園編

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46作目 ミストレアまでの旅路②

「次!」


衛兵の怒号が響き、俺たちの番が来た。この季節は夜が来るのが早く、外はあっという間に暗くなっていた。立ち上がって土埃を払い、門の前にいる2人の衛兵の前に行くと軽く持ち物検査が入る。


「カバンの中を見せてくれ、あと武器は一旦預かるが問題ないな?」


槍を持ち、剣を腰にたずさえた2人の衛兵にそう尋ねられ俺たちは抵抗する訳でもなく素直に荷物を手渡す。中に入ってるのは着替えとノートくらいなもので特に怪しいものを持っているわけでもない。俺たちの格好が気になるのか、若い衛兵がちらちらとこちらを見ていた。中年の衛兵が俺たちを城壁の内側に案内し、机と椅子が並べられた小さな部屋に辿り着く。指示に従い、座ると中年の衛兵から質問がいくつも交わされた。

カトレアが代表してひとつずつ丁寧に答える。


「身分証を持っているか?」

「全員分ある、ほら2人とも出しな」


俺とアストラがジャケットの内ポケットから身分証を取り出し、机の上に置く。3人分の身分証をランタンで照らしたり、肌触りを確認したりしたあと俺たちに返して質問を続ける。


「ふむ…確認した、街へ来た目的は?」

「ミストレアへ向かう旅の途中で宿を利用したい」

「3人は家族か?随分いい服を着ているみたいだが、盗みではないな?」

「あたしが2人を孤児院から引き取った、この服はあたしが金を払って買った」

「旅にしては正装すぎるが…」

「魔法学園の受験が控えているから最低限のマナーとしてスーツを買い与えた」

「随分気を使ってるな、まぁ問題ないか」

「なら良かった」

「審査は問題ない、街で犯罪を起こしたら最悪奴隷になることもあるからくれぐれも起こさないように」


声のトーンをかなり落とし、鋭い視線で俺たちを睨む。オーガほどの威圧感も感じないが責任を背負っている強い男の視線だった。


「分かっているよ、もう行ってもいいのかな?」

「問題ない。おい若いの、荷物を返してやってくれ」

「は、はい!」


若い衛兵が手に持っていた剣を俺たちに返そうとした歩き始めた瞬間床に躓いてその場に剣を落としかける。師匠から貰った剣を地面に落として汚すわけに行かず、俺とアストラは落ち切る前に全て回収する。


「す、すいません!」

「気にするな、拾えたから大丈夫だ」

「そうそう、別に汚れもついてないしさ」


慌てて頭を何度も下げる若い衛兵を見て、中年の衛兵が席を立ち上がって頭を叩いて叱責した。げんこつの音と説教の声が響く部屋を俺たちは後にし、街に入る。

レント北部都市に比べれば何倍も小さいが様々な人が入り乱れていた。武器を持った冒険者と呼ばれる人達がテラス席で酒を囲い、道行く人々の中には親子で買い物をしてる人や喧嘩をする人々、ため息をつきながら門に向かう出勤中の衛兵など刺激的に映った。


「ひとまず宿を探そうか」

「うん、そうだね」

「あぁ」


アストラも俺と同じようにこういう場所は慣れていないのか首を振って周囲のものや人に目移りしていた。街をいくらか歩き、なんとなく目に入った黄金の海という名前の宿に決めた。扉を開けて中に入ると一人の男が読み古したであろう本をつまらなそうに見ていた。客が入ったを確認すると気だるそうに接客を始める。


「らっしゃい、何泊の予定だ?部屋はいくつとる?」

「1日、部屋はひとつでいい」

「グレードは?上からABCあるが」

「Aで」

「あいよ、A-2室があんたらの部屋だ。身分証だけ最後に見せてくれ、前払いでひとり銀貨2枚」

「金貨1枚で頼む、お釣りは銀貨のみで」

「まずこれが釣りの銀貨4枚、そしてこれが鍵だ。トラブルを起こしたり煙草で火事になったら罰金が待ってるから気ぃつけろ」


カトレアが慣れた手つきで会計を済ませて鍵を受け取る。一泊するだけで銀貨2枚もかかるとなれば、そこそこいい宿なのだろう。建物や店主に貴族の住む家のような高級感は微塵も感じられなかったが。

階段をのぼり、A-2と書かれたプレートが貼られてある部屋に入ると思っていたより綺麗だった。カトレアがベッドに座ると少しホコりが舞った。


「それじゃああたしは寝る、元気があるならご飯でも食べておいで」


と言って金の入った皮袋を置き、そのままベッドに倒れてすぐに眠りについた。睡眠不足な上に成人したばかりの俺たちふたりとの旅なら精神の疲労はとてつもないものだろう。規則正しい寝息を立ててるカトレアを他所に、もう片方のベッドに荷物を置いてアストラは腕を天井に伸ばして唸り声を上げた。


「んん〜っ、お腹空いてるしオレは食べてから寝るつもりだけどバルも行くでしょ?」

「そうだな、少し腹が減っている」

「さっき美味そうな店見つけたしそこ行こっか」


アストラが皮袋から銀貨を3枚をポケットに入れたあと、俺たちは身軽になって部屋を後にした。

鍵を閉めて店主に預けて宿を出ると肌寒い風が頬を撫でた、こういう感覚になるのは初めてだが館を離れてから時折心が締め付けられるようななんとも言えない寂しさに似た感情が強く主張を始めた。


「こっちこっち、早く行こうぜ」

「すぐに行く」


馬や牛が街路を踏みしめる音や色々な物がぶつかる音が耳を通り抜ける、白い息が煙突みたいに口から出て街灯の明かりにアストラの靡く少し長い金髪が綺麗に反射した。

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