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右手に強欲を、左手に憤怒を。-異世界で全てを奪われた俺が全てを奪い返すまで-  作者: イカネコ
魔法学園編

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45作目 ミストレアまでの旅路

「アストラのあの新技、あれ結局どういう原理なんだ?」

「"轟雷帝・竜獄(フォルバラク・ゼクス)"のこと?結構簡単だよ」


木陰の岩場に腰を下ろし、サンドイッチを口いっぱいに頬張りながらアストラは身振り手振りを加えて説明を始める。


「オレの能力って指向性を持たせるのが結構むずくてさ、例えばこんな風に纏うだけならいつでも簡単に出来るんだよ」


電気がぱちぱち弾ける右手を前に出しながらアストラは説明を続ける。


「でもここからあの木まで電撃を飛ばすことは出来ないの、それこそ避雷針的なのがあれば話は別なんだけど」

「ならあの踏み込みは単純に纏うだけか?でもそれならいつもやっているよな」

「そう、だからこの剣を避雷針にして引っ張られるようにしたんだよね」


そういう時アストラは軽く剣を振るい、自身と剣の間に雷が走るのを見せてくれる。指向性を持たせるのは厳しいから、点を用意して線で繋げたっていうことか。


「にしてもよく雷に耐えられるね、特に深刻な後遺症が残ってる訳でもないのが不思議だ」


煙草を咥えて、少しアストラから離れながらカトレアが会話に参加する。


「限界超えて雷を出したらめっちゃ痛いけどね、火傷も何個か残ってるし」

「あれだけ雷を纏っても損傷がないってのは医者として気になるけど、なにか特別なことでもしてたの?」

「うーん、昔っから訓練とかしてたけど特にこれといって不思議なことは…あ、そういえば故郷の儀式で何回か雷に触れたことはあるかな」


雷に触れる、想像するだけで身の毛がよだつ。アストラが纏っている膨大な量の電気を手合わせで食らったことがあるがとにかく熱くて全身が細かく震えるような痛みが走った。

カトレアも俺の治療で痛みを味わっていたからかかなり心配した顔になっていた。


「それ、大丈夫なの?」

「それがさ、儀式の時浴びたのは痛くなかったんだよ。"雷帝(バラク)"を使えるようになった時に初めて雷は痛いって知ったくらいなんだから」

「属性以外の魔法…魔物特有の魔法かな…?」

「分かんない、昔のことだしあんまりそこら辺覚えてないんだよね」


なんとなく隠しているんだろうと察しが着いた。アストラは勉強は得意ではないが大切なことはきっちり覚えて忘れないタイプだ。些細なことまで事細かに覚えている、前に早朝ねずみが館に出たときカクエンが半狂乱になりながら全員叩き起して回ったときの台詞を一言一句違わず復唱したことがあった。

あんなナリでねずみが大の苦手なカクエンが作った昼食のサンドイッチを食べ終えて俺たちはミストレア魔法学園都市を目指して歩いた。かなり離れていて予定では1ヶ月ほどかかる算段だ。

途中に出る魔物は俺とアストラで対処し、倒した数が少ない方が1時間カトレアをおんぶするなどの罰ゲームを設けながら楽しく歩いた。野宿のときに俺たちは示し合わせてカトレアを起こさないで見張りの番をしたり2時間ごとに交代して、バレずに朝まで過ごせたが目覚めたカトレアは少し怒っていた。


「なんで起こしてくれなかったのさ、あたしも見張りは手伝うよ。2人だけじゃ大変だろう」

「えぇ?駄目だよ、カトレアにそんなことさせられない」

「カトレアを守るのが俺の任務だ、ゆっくり休んでくれ」

「そう言われて引き下がるほどあたしは大人じゃないよ」


と引き下がらなかったカトレアだが俺たちは意見を全て突っぱね続け、カトレアが寝ようとしなくなり俺たちも寝ずに付き合った。3日ほど全員が寝ない期間があり、疲労に当てられてカトレアが地面に倒れてもなお俺たちが意見を変えなかったことでとうとう折れた。


「分かった、あたしは見張りをせずに寝るから2人ともちゃんと寝てくれ」

「…やっと折れたぁ〜」

「本当に頑固だな、カトレアは」

「2人に言われたくない、そろそろ街に着くはずだから宿でも借りよう」

「ベッドで寝れる〜!」


程なくして夕日が落ちかけていたころ、レント北部都市ほどではないが立派な城壁が見えてきた。雪が溶けきってるとは言え、まだまだ夜は冷えた。入口の門には長蛇の列が並んでいた。行商人らしき影も何個か見当たることからかなりの時間待たされることが予想された。俺やアストラはまだしも、カトレアの疲労は限界に近かった。元々あまり運動しないことに加え、長時間歩き続けることによる肉体と精神の疲労は計り知れないだろう。

おまけに寝てなかったことにより目の下のクマがいつもより酷かった、いつもより若干髪がボサボサで顔色も悪くて幽霊みたいに見えた。


「カトレア、少し座って休んだ方がいい」

「なんならおんぶするから寝てなよ、順番が来たら起こすからさ」

「馬鹿言わない、子供ふたりが休んでないのに休むなんて有り得ないしおんぶなんてもっと有り得ない」


そう言ってカトレアなりに踏ん張っていた。彼女なりに思うところがあって意地を張っているのだろう。その様子を見兼ねたアストラが俺に耳打ちをした。中々ユニークで、アストラらしい面白いアイデアだった。俺が頷いて返事をすると、アストラはニヤッと笑ってその場に座り込む。俺もそれを見てその場に腰を下ろした。


「お義母さーん、疲れたよ〜」

「俺も疲れた、歩きっぱなしで足が痛い」


と言うとカトレアは困ったように笑ったあとその場にぺたりと座り込んだ。白衣が土につかぬように上を脱いで抱えながら煙を吐き出した。


「あたしの負けだ、意地張って悪かったよ」

「いえい、作戦勝ち」


俺と軽くハイタッチをしたあとカトレアにピースサインをして大きく笑った。


「師範に言われてるからね、戦いでは頭を使えって」

「俺もこれで予測が立てられる、覚悟しろカトレア。俺たちはあの手この手で楽しく休ませる、搦手は師匠の専売特許だ」

「全くあの2人は最高な弟子を持ったね」


吐き出した紫煙が夕日に吸い込まれた。

長蛇の列や長い待ち時間の間、俺たちはひたすらたわいもない話をし続けた。

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