34作目 友であるために
"沈黙"、弾丸を発生させそれを意のままに操る異能。沈黙の王と呼ばれる骸骨が元の持ち主で、俺は今貸し出されようやく本当の力を使えるようになった。
「なにそれ!すごいすごい!」
無邪気に訓練場で飛び跳ね、俺の能力を見て彼は喜んでいた。アラクネは俺がようやく錠前を開けたことを確認し、鼻息を鳴らした。
「解錠が出来たからまずは何ができるか教えてみなさい」
「基本は弾丸を発射する異能だ、速度威力サイズはある程度調節出来る。1度に発射できる回数は12発、クールタイムもない」
左手を振り、俺の前に12発の弾丸を召喚する。
「基本は直進、操作によりある程度指向性を持たせることも可能だが全部動かすことはまだ難しい。それに速度威力サイズは上限がある」
一部を大きなサイズに変更する、最大値まで弄ると樹木くらいの大きさになる。また、それら全てを一様に発射するとマトを破壊するしたり、到達までにタイムラグがあったりとマチマチだ。
「便利ね、面倒だったバカでかい音もなくなってるみたいだし」
「速度も上がってる…?」
「だな、課題点である音の大きさと火力不足はこれで解消されたように見える」
しかしこの力を持ってしてもなお、勇者は確実に殺せないらしい。エースに聞いたところ「運が良かったらアザくらいつけれるんじゃない?」とのことだった。
「でも勇者にはバリアがあるから正直微妙なところね」
「聖女の祝福…でしょ?」
「ほんとやってられないわ」
聖女の祝福とは、ミストレア神聖国に定期的に現れる聖女という規格外の存在が施した結界のようなものだ。飛び道具はもちろん、近接攻撃でもほとんど弾ける。これが中々曲者で、属性を用いる基本魔法とはかけ離れた完全に別の存在であり、魔法とは違い魔力供給もほとんどいらずオートで入力され続けるものらしい。
「なら聖女を殺せばいいんじゃないか?」
「それができたらもうやってるわよ」
「聖女って特別なんだってさ」
「勇者と遜色ない化け物ね、不幸中の幸いなのが勇者と違い少しはマトモなことね」
「少し…?」
「タガが外れてるのよ、頭のね」
戦闘力で見ても勇者とほぼ遜色なく、ミストレア教徒が教えに反することをしたら十字架で撲殺するらしい。ただ異教の差別はしなく、それ以外で目立った悪行もなく、その高すぎる戦闘力故に誰も咎めることが出来ないらしい。反面、魔物討伐に精を出し、村の復興や炊き出しなども行っているらしい。
「仲間にできたら強力だけど、中々ね…話が逸れたわね、とりあえずバルバトスはひたすら異能を体に染み込ませなさい。操作できる弾丸の数を増やすことを当面の目標にするわ」
「分かった」
「アストラは、明日から異能の訓練はなしでいいわ」
「え??なんでなんで???」
「剣術訓練に時間を割くことにしたの、ラーマからの進言よ」
「…分かった」
目付きが少し鋭くなり、集中した顔つきに一気に変わった。
「同じようにバルバトスも剣術の訓練はなしにするわ、長所を伸ばしていくわよ」
「分かった」
そこから俺たちはほぼ雑談を交わさず、ただひたすらに訓練に没頭した。
"沈黙"は恐ろしい程に身体に馴染んだ、まるで呼吸をするように自然と能力を行使できた。ただ使うだけなら簡単だが、使いこなすにはそれなりに時間がかかるだろう。走ることは誰にだって出来るが、長時間走り続けたり速度を上げたりするのには鍛錬が必要なのと同じように。
秋は恵みの季節だ、作物が実り、気温は落ち着き動物も穏やかだ。訓練には集中でき、雑音は一切耳に入らなかった。弾丸を発生させ、マトを狙い、放つ。
ルーティン化させればいざというときでも滑らかに異能を発動させれる。ただ決して惰性的になってはならない、ひとつひとつ集中して狙いを定めマトを射る。
同じような動きであれば3つほど自由に動かせることが分かったがこれでは意味が無い、12個の弾丸全てを自由に動かせることにより初めてそれは武器になる。
集中すればするほど、時間は圧縮され、気づけば夜になっていた。いつも通り俺とアストラで獣道を歩いて館に向かった。
最初は沈黙が流れていた、けれど奇しくも同じタイミングで俺とアストラは同じことを口にした。
「「この訓練が終わったら」」
「…すまん」
「こっちこそ、それで?なんて言おうとしたの?」
「俺と本気で戦ってくれないか?」
「奇遇だね、バル。オレも同じこと思ってたよ」
彼はクスクスと喉を鳴らして笑い、俺も少し笑った。
俺と彼は友達だ、俺は少なからずそう思ってるしこの先何があっても変わらないだろう。
だからこそ俺はアストラと戦いたい、戦わなければならない。情けないところばかりを見せ、なまじ八つ当たりのようなこともした。その度に彼は俺に歩み寄り、共に同じ道を歩んだ。同じ訓練をして、同じ師を持った。対等でありたい、俺がアストラの友達であるために。




