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第一話 俺、異世界に転生する。――(たぶん)
今日の東京は、最高気温40.1度の予想だった。
夏休みの補習を終えて、駅まで歩くだけで、俺はもう干物寸前。
頭がぼんやりして、汗で世界がにじむ中、
横断歩道を渡ろうとした、その時だった。
──クラクション。
「え?」
反射的に顔を向ける。
熱にやられた思考が、まるで間に合わなかった。
ドンッという衝撃。
身体が、空に浮いた。
高く、高く。
落ちていく途中で見た空は、
どこまでも青く、入道雲がぐらぐらと煮えていた。
「……ああ、夏だな」
最後に浮かんだ、それだけだった。
雨宮 陽 高校二年生。コンピューター同好会所属。
夏休み中にぼーっと赤信号を渡っていて、トラックにはねられ死亡しました。