プロローグ
そこは、薄暗く空気が冷たい。壁は無機質な石で囲われていて窓の様に光を届けてくれる機構もない。
金属で作られた入り口の扉は、無骨でまさにここは【牢獄】に相応しい部屋だ。
部屋全体が【反省しろ】と命令形で告げてくる様なそんな場所。
「おい…」
1人の女性が、冷たく冷えた地面に座ったまま、そして壁に背をもたれかけたまま、行儀の悪い姿勢で入り口に向かって呼びかけた。
「おい!聞こえているんだろ?おい!」
一般人の何倍も語気は強く、固い雰囲気ももっていた。
この人物こそ、皇帝謁見の場にて、大暴れをしたプルシャ族第二皇女ペテル・キュグニー・プルシャだ。
この世界は、ここ中央区によって統治されている。プルシャ族とは、【始まりの種族】としてその中央区のトップに位置する皇族だ。世界の起源的な存在とも言われている。
「なんですか?」
金属でできた無骨な扉の向こう側にいた看守がペテルの言葉に応えた。やはり、少し突き放す様な雰囲気がある。が、次に返ってきたペテルの発言は酷いものだった。
「命が欲しいなら早く逃げだほうがいいぞ?これは、私の優しさで教えてやっている」
優しさと高圧的部分と、物騒な内容のごちゃ混ぜな情報だ。
一瞬複雑な表情をした看守だが、中々の速度で立て直し、ペテルに切り返した。
「私からも、ペテル様にお伝えします」
自分が予想していなかったまさかの返答に、ペテルの勢いはほんの少し和らいでいた。
「あなたが、、謁見の場で大暴れしたその罪は…」
「おお。クソ野郎どもは、どんな勘定で罪を計算したんだ?」
ペテルは、謁見の場で皇帝だけではなく、皇族全体に対して無礼を働いたのだ。そしてその罪は…
「死罪」
2人の間の空気は、この部屋に相応しい冷めた空気になった。ペテルの目は俯き、流石の宣告を受け止めるには覚悟が足りていなかった様だ。
そんなペテルから目線を外し、看守は続けた。
「ではなくて、区外追放。半永久的に中央区の立ち入りは禁止となりました」
なぜ、彼はブラックジョークを挟んだのか。その度胸が見事ではあるが謎である。
ペテルは、ジョークに対してか、はたまた渡された裁きに対してなのかわからないが、目を丸く、込み上げる笑いを堪えていた。
「はははは!バカなのか?大バカなのか?私が謁見の場で暴れ怒鳴り散らした内容を理解してないのか?アホなのか!」
側から見たらこの物言いをしているペテルの方がバカでしかないが、彼女はいたって真面目で、その言葉にはしっかりとした苛立ちが混ざっていた。
「私に言われましても……」
看守は、その予期せぬペテルの態度と反応に戸惑いまくり、先程ブラックジョークを飛ばした人物とは別人並みの動揺を見せていた。多分こっちが本性なのだろう。
「それと…こちらを預かっております。」
「伝言箱?だれから?」
「皇帝からです。」
ペテルは先ほどと打って変わって真面目な目つきで、その伝言箱を受け取った。
伝言箱とは手のひらサイズの宝箱にも似た形状で、その口を開け吹き込んだ言葉を記憶する事ができる装置。動力源が尽きない限り、自分の声を一生届けることも可能で、中央区の中では【手紙】の様な形で使われていた。
ペテルに渡された皇帝からの伝言箱
ここから彼女は【金稼ぎのダビー】と名乗ることとなる。
日本初。12話で完結する超ロングラン作品。
完全オリジナル2.5次元アクションファンタジー舞台
【金稼ぎのペテル】
舞台作品から小説は逆輸入中。
本編は現在YouTubeで放送中。
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