表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/45

第四十三話「|」

『文化祭が終わった週明けの月曜日。

 文芸部の部室で、碧と志保はいつもの席に座っていた。


 ドアが開く。


 碧は反射的に椅子を倒しながら立ち上がり、ドアの方へ向かった。

 そこには、一年生の男女三人が、少し緊張した面持ちで立っていた。


 「……あの、こんにちは!」

 「文化祭の演劇、すごく感動しました!」


 律儀に挨拶をする一年生に、碧はぎこちなく微笑みながら会釈した。

 遅れて志保も隣に並び、「よかったら、部室の中へ」と促す。


 文化祭の演劇を見て脚本に感動し、文芸部に興味を持ったという。

 二人で手を変え品を変え、文芸部の魅力を語る。


 思いのほかあっさりと「入部します!」と即答してくれた。

 最初から小説や物語に興味を持っていたので、

 文化祭は最後の後押しになったのだろう。


 部員は碧、志保、一年生男子一名、一年生女子二名の計五人になった。


 二人と五人。

 たったそれだけの違いなのに、部室の熱気はまるで別物だ。


 話す内容のバリエーションも増え、賑やかになった。

 楽しい雰囲気に部室が包まれるのは、嬉しかった。



 ファミレスでの歓迎会。

 山盛りのポテトを頼んだら、一年生が凄まじい勢いで食べていく。

 碧と志保は顔を見合わせながら苦笑し、結局何度も追加注文する羽目になった。

 実はあの時、二人の予算は大幅にオーバーしていた。

 バイトのシフトを増やすことを余儀なくされたことは、言うまでもない。



 新しい活動。

 WEBでの小説投稿を始めたり、新しい執筆企画を立てた。

 気づけば部活らしい忙しさになっていた。

 正直、もっと小説を読む時間も欲しかったけど、悪くはなかった。



 最後の文化祭。

 今年は、昨年とは打って変わってコメディの脚本を書き、演劇部に渡した。

 結果は、もちろん大反響だった。


 でも、それ以上に嬉しかったのは、

 自分が生み出した物語が目の前で動く感動を、

 後輩たちに味わわせてあげられたことだ。


 忘れられない思い出になっているのなら、こんなに嬉しいことはない。



 今、書いているこの文章。

 これは、後輩たちへのサプライズとして渡す小説だ。

 物語の形式にこだわるつもりはない。

 小説になっていなくてもいいと思っている。

 碧は、文芸部の創設者として、ここに伝統を生み出したかっただけだ。

 この伝統を、本当に伝統にするかどうかは、君たちにかかっている。


 最高の文芸部物語を、ありがとう。|』




『文化祭が終わった週明けの月曜日。

 文芸部の部室で、碧と志保はいつもの席に座っていた。


 ドアが開く。


 碧は反射的に椅子を倒しながら立ち上がり、ドアの方へ向かった。

|』




『文化祭が終わった週明けの月曜日。

 文芸部の部室で、碧と志保はいつもの席に座っていた。


 ドアが開く。


 碧は反射的に椅子を倒しながら立ち上がり、ドアの方へ向かった。


 ——おかえり。|』




『|』




『時が流れ、新しい仲間たちが席を埋めていく。


 碧の席は、二つに増えた。


 志保は、君の名を呼び続けた。

 まるで、その席に君がいたことを、忘れないように。


 君がここにいたら、何を書くのだろう。


 きっと、ろくなことは書かない。

 きっと、締め切りギリギリになって、一言で終わらせる。


 それでも、君に、書いてほしかった。|』




『|』

 



『君に、生きていてほしかった|』




『|』




『君のことが、|』




『|』




『生きろ。|』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ