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不条理な少女と不真面目な死神と

作者: GARU



――まぁ昔から霊感は強い方だとは思ってたけどさ―











「ねぇ三丁目の田中さん、そろそろ成仏したいってさ」


「ん~三丁目って?」


「ホラあそこ……おっきい本屋の裏手にある」


「あぁあそこの…たしか近々結婚するとか言ってたっけ」


「ソレ何時の話よ。結婚はもうしてるってば。先週。花嫁姿見てもう満足したからってさ」


「……ふ~ん…どうせなら初孫ぐらい見てからでも良いんじゃない?どうせ何時でも成仏なんて出来るんだしさ」


「とか言って、単にサボりたいだけなんじゃない?」


「いやいやいや、んなコト無いって」


「田中さん、あんまり欲出してちゃ何時までたっても残って居ちゃいそうだからってね…ってちょっと聞いてる?」


「聞いてる聞いてる、だけどちょっと…今ちょっとキビシイトコだから」


「もぅまったくそんなんだから私に負けたりとかするのよ」


「いやいやいや、ありゃお前の方がが滅茶苦茶なだ…けっあーーーーっ死んだーもう折角イイトコだったのにー」


「はいはいゲームオーバー。一区切り着いたんならさっさと行って田中さんのコト送ってやりなさい」


「いやいやココはもう一度、今の感覚を覚えてるうちに」


「コーラっ全く、前もそんな感じで先延ばしにした挙げ句新しい未練作られて成仏させられなかったんでしょ」


「いやでもさー」


「でももなにもなーいっ!!さっさと行ってきなさーいっ!。でなきゃソレそのままうっぱらって来るよ」


「まっ待てそんな無体な、ココまで頑張って育てたんだぞ」


「ならさっさと行ってくるっ!田中さんをあんまり待たせないのっ」


「ちっクソ分かった分かった行ってくるよ。ったく人の気も知らねーで」


「なに?」


「何でもねー、んじゃ行ってくるから」


「………ったくもー世話のかかる」


窓から飛び出していったその背中に溜息一つ。


やりかけのままのゲーム機はそのままにおやつでも用意しといてやろうかと台所に向かう。


どうせ帰って来次第また噛り付くに決まってるから片付けるだけ無駄だと思うし。


「ホントなんでこんな事になってるのかなー」


自分を取り巻く環境に今更ながらちょっと溜息。


世間一般から見てあまりに非常識。


元々自分の世界観が変わってる事ぐらい当の昔から知ってはいた事ではあったけど…


それでもココまで酷くは無かったはずだ。


ただ単に霊感が少し強いだけの…


単に友人知り合いに生きてる人間より死んでる幽霊の方が数が多いぐらいなだけの…


本当にただそれだけな女子高生だったはずだったんだけどさ。


それなのに…


「はぁ~あの時の自分を本気で恨めしく思うわ。マジで」


結果、今という名の非常識が出来てしまった訳で。


いやまっ私だって死んでもいいなんて思ってないから「素直に死んどけ」なんて言う気も無ければする気も無い。


抵抗だって…まぁアレはほとんど無意識の内の条件反射みたいなものだったわけだし。


正確な所はよく覚えていないが、アレはアレでしょうがない不可抗力ってヤツだと…ん?ちょっと違うかな。


まぁ最も本当に、そんなIFなんてあったものなら。


二度と近付けない…と言うより近づきたくないと思えるぐらいに滅茶苦茶のギタギタにしてやっても良いとは思う。


と言うかやりたいそうしたい、ホント本気で。


「まっIFなんていくら考えても詮無い事なんだけどねー」


そういくらどれだけの可能性を、都合の良い理想を思い浮かべても結局の所現実が変わる事なんて無いんだから。


「だからってさぁ私ってば何で…と言うか、よりにもよって餅で喉を詰まらせるなんてギャグにすらなりそうもない程しょうもない理由で死に掛けちゃったかなー」


思い返して、即座に記憶から抹消したくなるほど間抜けなソレ。


まぁそれはそれで死にそうな程本気で苦しくて。


と言うか死んじゃったんだけどね~結局ソレで。


まっ何とか直後にすぐ戻ってこれたけど。


切っ掛けはそんな一つ。


薄れ逝く意識の向こう。


それはまるでまどろみのなかの様で。


ぼんやりとした視界の先に見えた一つの黒い影。


意識はゆっくりとそれでいて離される事無く引き上げられ。


私は彼と出会った。


ゆっくりとした時の流れの中。


苦しさはいつの間にか無くて。


ただまどろむままに。


影に抱き寄せられ。



「―――――――――」


そっと囁かれた言葉。


その内容は聞き取れはしなかった。


けどその声は同年代っぽい感じの男の声で。











私はその影の顔面目掛けて思いっきり拳を捻り込んだ………らしい。








気付いた私は仰向けに倒れてて。


更に言いトコロ起き上がってみたら目の前にはグルグルと目を回したままにぶっ倒れているコスプレ男。


マントと大鎌ってなんかベタ過ぎ。


その上両鼻からは盛大に鼻血。


ホントもう何このコント。


それが先程までの彼との出会い。


目覚めたその後の会話で死神なんて名乗られて呆然。


幽霊はともかく、そんなファンタジー聞いた事もない。


その上なんか無茶苦茶な理由だか屁理屈だか並べ立てて居座ろうとまでする始末。


当然叩き出してやったが相手は鍵も壁も、更には警察、法律だって関係無しな非常識。


意味も理由も無しに入り浸られる日々に、流石の私も10日で折れた。


まぁ悪い事ばかりじゃないのは確かだけどね。


面と向かって言う気はさらさら無いけど。


ただそれ以上に気苦労が増えた気が…


「…まったく、なんだっていうのよアイツは」


溜息一つ。


とにかく何かしらの理由をつけて仕事をサボろうとするアイツの尻を叩くのが最近の日課になりつつある。


「ホント、ワケわかんないんだから」





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