スポットライト
ゆらゆらと四角い水槽の中で泳ぐクラゲに、何故だか涙が出てしまう。憐れんだわけじゃない。自分と重ねたわけでもない。ただ何となく、ふいに紫色のライトが当てられた小さな水槽を見て泣く。
それはここがあいつと初めて来た場所だからかもしれないし、初めて喧嘩して、仲直りした場所だからなのかもしれない。散々友達に愚痴って、財布の中の金がなくなるまで食べて飲んで、その分以上に体重が増えて、好きな人ができて、ダイエットして、振られた今でもこの水槽の前で泣くのは、きっと心が傷んでいるから。傷んでいるからこんな痛いことをクラゲを見ながら考えるし、頭の中にあいつが浮かぶんだ。
好きとか嫌いとか、会いたいとか辛いとか、嬉しいとかキモいとか、結局の所どうでもいいんだ。
私の痛さを、私の身勝手な不幸を愛してくれさえしてくれたらそれでいい。私が好きかどうかなんてどうでもいい。愛してくれるのならそばにいるから。こんな身勝手な奴振られて当然なんて、私は諦められない。無性に愛してほしい。安心がほしい。どうしようもなく、依存でも束縛でも何をしてもいいから愛してほしい。
鼻を啜る音が聞こえる。私の声だ。頬が熱い。手がそっと握られて、視界が暗くなる。この行為もきっと明日には終わっている。そう思わないとやりきれない。
「行こっか」
ほら、今泣いてたの無視したでしょ。
「うん」
俯いて舌を出す。
こんな私は愛されない。
ゆらゆら